162話 間話 恋は濃く告りたいが苛酷な程いい

 ミレーナ side

 

 

「ひゃほー!やっと見つけたぜ!」

 

 スケルトンの魔王、猫獣人の国を圧迫しているスケルトン軍団に突撃して、スケルトンをバラバラに壊しまくること15日、やっとお目当ての魔王を見つける。

 

 移動も考えると、すでに1ヶ月半もかかっている。近くの村とスケルトンの領域を行ったり来たりしながらの15日はマシだった。ココに辿り着くまで盗賊をぶっ殺して遊ぶくらいしか無かった。帰りはまだ盗賊湧いてないだろうし遊べない。


 このスケルトンの魔王で遊び倒すしかないな。

 

「ちょっとは楽しませろよ!キャハハそんなのあたらないよ!キャハハどこ見てんの?」

 

 スケルトンの魔王は体長5メートル人間の骨格ではなく骨の塊で腕は大量、頭蓋骨も4つ、足はたくさん一言で言えば化け物だ。

 

 その魔王が岩を投擲するもミレーナの空間歪曲により90°ターンしてありえない軌道で飛ぶ様にスケルトンの魔王も唖然としたかのように岩を見ている。

 

「こっちから行くよ!スケルトンはバラバラにするまで動くから楽しめるぜ、キャハハハ」

 

 ミレーナがその場でナイフを振ると、4つある頭蓋骨の1つが切り離される。

 

 空間を歪曲させてナイフの刃だけをスケルトン魔王の首に、命中させたのだ。そこからはスケルトンの魔王の絶大な威力の攻撃も当たることはなく、ミレーナによって粉々に刻まれていく。

 

 ナイフは、遥か昔のダンジョン産の名品で国宝をその昔、歪曲魔族が賜った最強クラスの武器だ。

 

 そして魔王を動かなくなるまで解体し、最初に切り落とした頭蓋骨を拾いはたとミレーナ思い至る。これ魔王と普通のスケルトンで何が違うのか分からないと。

 

「やっべぇ、全部骨じゃん」

 

 そこにはバラバラのに刻まれた骨の山、ただの骨が散らばっている。その中から魔石を見つける。魔王の物だけあり巨大だ。

 

「これだ!これでミレーナが倒したと証明させれば完璧だな、キャハハ!テンション上げ上げだぜ」

 

 もちろん魔石は鑑定され、またスケルトンの領域が急速に失われていることからも、魔王討伐は証明された。

 

 そしてミレーナは、ラスヤバダンジョンへと戻ったのだった。

 

「キャハハ!ミレーナは強いぜ」

 

 ゼーストに会うなり第一声がこれである。

 

「ミレーナ姫様の強さは知ってましたが、魔王を単騎で倒すとは驚きました。宿に帰還を伝えれば、約束の品が届くそうです」

 

「キャハハ!早く彼に会いたいぜ!」

 

 宿に報告しても海くんは来ることはなく、2日して料理が宿に届く。それをミュウニーちゃんはミレーナに渡したのだった。

 

「ミレーナ様にお届け物です。ご確認下さい」

 

 白い紙箱に入っており、中身は分からない。

 

「おぉー、これは期待できるな。全部ミレーナのだからなキャハハ」

 

 紙箱を開けると、いろいろなショートケーキがびっしり入っている。

 

「すっげ〜!!一つ食べてみるぜ」

 

「あの男驚きですね。これ程のお菓子を作れるは、王宮料理人でも少ないのではないですかな」

 

「うん?あれ?なんかくらくらするぞ!これが恋の味か?きゅーう・・・・・・・・・・・・・・・・」シーーーン

 

「ミレーナ姫様!?毒か?とにかくメディック!!」

 

 ゼーストは理解出来ないが怪しい毒を疑う。

 

「毒ではありません。食べても問題はないのですが彼の料理は味だけが独特なので驚いたのかと、おまけで皆様の分にはもありますよ」

 

 ミュウニーちゃんがテキパキと説明してバスケット籠に山盛りの焼き菓子を持ってきて手渡す。

 

 そこにゼーストに呼ばれて来ていた、回復要員のメディックくんが説明に納得して、美味しそうな見た目に手に取り、一口食べる。

 

「モグ!?かっ、ふぐっるわぁ!!ま、不味いすぎる!甘く食感も完璧なのになぜだ!?とにかく水、水、水〜!」

 

「どうぞ、お冷です」

 

 ロスタイムなくミュウニーちゃんは水の入ったコップを差し出す。

 

 水を含み更に顔色が悪くなるメディックくん。

 

「水で口の中に不味さが、不味さが・・・広がっただと!?」

 

「口を付けたら食べきってくださいね。それ凄まじく貴重品ですよ」

 

 言い終わる前にミュウニーちゃんは電光石火の早業で残りの食べかけ焼き菓子をメディックくんの口へ送り込む。

 

「!?!?£∆‰ゝ々仝</*$#ヾ」

 

 声にならない何かを訴えるメディックくん。

 

「水いります?」

 

 コップを受け取り固まるメディックくん。どうやら胃に流し込むか、口に不味さを広げる水を入れるかで迷ったらしい。

 

 そして口の中の不味い焼き菓子に耐えかねて、水を一気飲みし焼き菓子を胃に流し込む。

 

「ゼーストよ、毒ではない。だが、これは冒涜的な危険な味だ。胃に入れれば問題はないだろう。きゅーう」

 

「メディックーーーー!お前の尊い犠牲は忘れないからな」

 

「死ぬほど不味いですが死にはしないはずです。ですが貴重なのも事実です」

 

 ミュウニーちゃんついに不味いと認める。

 

「なので食べきるまで、この村では歪曲魔族の方々に食事は提供されませんよ」

 

 それは死の宣告かもしれない。

 

「なんか、地獄をツアーした気がするぜ、キャハハハ!なぁそれも彼の手料理か?」

 

「そうですよ」

 

「マジ!それもミレーナのな!はむ、うっ、不味いな、キャハハハ!これは魔王をぶっ殺すより刺激的だぞ!!彼は最高だな!!もう一つっと!あっ、きゅーう」

 

 チーン

 

「・・・ミレーナ姫様はドMでしたか。しかしこれは限度を超越してますな。作るやつも、出すやつも、食べるやつも、頭おかしいでしょう?」

 

「私を変人扱いなのは心外です」

 

 ミュウニーちゃんは変人な自覚はないらしい。

 

「これを貴重と言える貴方はおかしい。それは間違いない」

 

「そうですか。まぁ有象無象の評価に興味ありませんからかまいませんよ」

 

 この後、ミレーナは気絶しながら、込められてない愛を噛み締めて食べきったのだった。

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