173話 間話 前哨戦
ミュウニー side
情報の確度は戦争において、作戦決定や判断基準となる。間違った情報は間違った作戦と判断となり、敗北する。
情報収集、それは戦争の基本であり、シバル王国側の戦力は念の為に全力投入されている。
密偵と斥候は全員駆り出されているのだ。
「はぁ、ここまで神託で鳥は人族が嫌われると、忍び込むのも一苦労でしたよ」
深夜の活動にミュウニーちゃんは愚痴りつつも、連絡担当の仲間に情報を渡す。もちろん何通か別々のに出すことで、1通だけでも届くことや、すり替えなどに対策している。
「それでも、食料調達規模と出兵命令の指示情報を手に入れるとは鈍ってはいないようだな」
「当たり前です。死にたくはありません」
「そうか、では武運祈る」
「ええ、貴方も生きて帰りなさいよ」
音もなく去っていく運搬役を確認し、ミュウニーちゃんも闇に紛れる。
「さて、最低限の仕事はこなしましたが、どうしたものですかね。帰還しても怒られないとは思いますが、もう少し手柄が欲しいところですか。ウレナイ商会の時期会長候補ですし、やりますか」
教団や、徴兵の進みなどまだまだ集めるべき情報はある。
そして追加情報として、主力の冒険者の参加率は非常に高く、光陣営も兵を集めて大軍が結成されていること、そして義勇兵と農兵もかなり集められて、総力戦かと思う事態に進行している事を報告した。
残り帰還するだけのハズが世の中上手くいかないものだ。
現状は鳥人族は昼間の活動はシバル王国外では難しいために夜間移動も含めてに行っている。特に密偵は闇に紛れて行動するしかない。
隠密に成功していながら、ミュウニーちゃんは見つかりにくいはずの深夜に罠にかけられてしまう。
「密偵の中でも私は出世候補、絶対に情報は喋りませんし、簡単に負けませんよ」
姿は見えないが半分は脅しであり、気がついているとの警告だ。残り半分は自身への鼓舞だったりする。
「それが嘘でも本当でもよい。神託によりシバル王国とバンパ王国、ダンジョンは滅びなければならない。お前も運が無かったと諦めて自害を進める」
ミュウニーちゃんは15人以上の敵の密偵に囲まれていた。絶望的な戦力差だろう。正面からこの数の差で勝てるなら密偵よりも騎士をやっているのだから、どちらも飛び抜けたステータスはない。
それはミュウニーちゃん自身に切り抜ける実力が無いことを意味する。
「予想はしてましたが、情報が漏れましたか」
「敬虔な信者が、お主達の動きを教えてくれたぞ」
要するに裏切り者がいたと言っている。拷問の結果漏れた可能性もあるがこういうのは精神攻撃な意味合いもあるのだろう効かない、というかこのくらい後やり取りの精神攻撃が効くならここまで出世は出来ないのよ。
「そうですか、私はそこまで敬虔な信者ではないので、死ぬまで戦いましょう」
会話はここまでと打ち切り、短剣を構える。会話しても有用な情報を抜けないし、敵が増えても困るのはこちらだし、夜闇に紛れて逃げたいのも私なのだから、付き合う意味がないですよ。
「そうか、せめても最後くらいは楽に死なせてやろうと思ったのだがな。あっさり死ねると思うなよ」
言ってることは悪役だなと思いつつも目の前に迫る3本の短剣に対応する。同時に斬りつけ、離脱すると、後方から間髪入れずに斬りかかる。
後方の密偵はモーションが死角になり、受けにくい。口とは別に練度は高い。これは死んでしまいますね。
「どうした?反撃しなければな死ぬぞ?口だけか?」
煽って焦らせてミスを誘ってますね。15人で連携しても小娘一人の瞬殺に失敗だから、少し口撃くらいは返しますか。
「そちらこそ、下手くそな連携ですよ?才能が足りてないのでは?」
圧倒的なステータス差は連携など無意味にしてしまうのがこの世の常、見た目と強さが比例しないことなどよくありますからね。
「なに、簡単に死なせないように加減しているにすぎんよ。余裕なら勝つなり逃げるなり出来よう?」
流石に一流の裏の人間だけあって、苛立ちもしてくれませんか。
「なるほど、言い訳としては完璧ですね。小娘相手にこの人数で嬲り殺しも上手く出来ないけど強いって自慢しないとですねwww」
「そんな余裕も無くしてくれるさ、もう少し遊びに付き合え」
おっと、力んで大振りな奴がいますね。これはチャンスですよ。煽られたくらいで自分のペースを崩すとは二流ですね。
「ハッ!」
僅かに出来た連携の隙きを見逃さず囲いから抜け出します。先ずは防御一辺倒の最悪な終わりだけは回避出来ました。
「何をしている!!逃がすな!」
進路を塞ぐために斬りかかって来た敵の短剣を受け流し、返す刃で反撃するも掠り傷程度に終わる。それでも足を止めることなく移動する。
「千載一遇のチャンスで逃げ切れんとは、もう次はないぞ」
完全な連携攻撃こそ受けないものの、包囲網からは抜けきれていない。これはまずいですね。包囲を再び完成される前に逃げ切れ無ければ、本当に殺されてしまいます。
「はぁ、私もまだまだですねぇ」
なら今度は油断を誘いましょうか。慢心もまた隙きを作りますからね。
「そうだな、初めて意見があったぞ」
私にチクッと、針を投げて刺したリーダーが下衆い下心丸出しの表情で語る。
「毒ですか、まぁ使いますよね」
これは終わりました道連れ一人くらいはやれますかね?
「すまんな、それは麻痺薬だ。少々精神も壊してしまうが、残りの人生は薬で壊れるまで我々を楽しませたまえ」
「麻薬の類いですか、な、むぐ!?」
口を塞がれて抑え込まれて自害を防がれます。楽しませるとか、女を何だとおもってるのか。初めてはカイ様に捧げたので、良いとしてこれは最悪の事態ですね。自白剤や麻薬でも情報を抜かれないように、対策をしておきましょうか。
はぁ、人生の最後がこんな男達の相手とはついてませんね。
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