022話 間話 金的よりも不味いのは・・・

 ヴィシリア side

 

 ワシはカイという奴にボコボコ・・・正確にはボコられたというか、金的を何発もくらいダウンしたのじゃ。

 

 全力の殺し合いである戦いなのじゃから、卑怯とは言わんが同じ男として、慈悲の無さに戦慄じゃよ。もう少しで不能になるところじゃったぞ。

 

 気がつくと奴らは打ち上げられた荷物を調べて、座礁した船から遺体を探してわざわざ墓まで作っておった。

 

 長年のパーティーメンバーは全滅しておったが、二人のおかげで全員の遺体が見つかり手厚く葬ることが出来たのじゃ。冒険者でワシらは長く生きてきたのじゃが、歳には勝てんことじゃし、引退も考えておったのじゃが冒険者稼業は辞められんかったのじゃ。

 

 冒険者として仕事中に死ねた仲間は幸せだったのじゃ。魔物に殺されれば放置か食われるのじゃから墓に入れるだけで贅沢なのじゃ。

 

 カイ達は地名も知らない、神も知らないとなるとはぐれじゃろう。だいたいは神を知らなければ弱い魔物に狙われるだけであっさり殺されて生き残れないはずなのじゃ。

 

 しかし、ワシが気にすることではないのじゃ。これ以上に気にするとカイに殺されそうなのじゃしな。

 

 カイの実力は本物じゃ、魔術士じゃがワシは、ドワーフ。近接ステータスも低くはないのじゃ。それで勝負にならんとなると最低でも冒険者ならAランク相当の実力じゃろう。

 

 ワシらパーティーは船の護衛としてシバル王国の王都ローフに向かっておったのじゃ。王都ならユウキちゃん達への礼の品々も手に入るじゃろうが航路など気にしておらんかったのじゃ。当然積荷の中身も当然知らんのじゃ。

 

 乗って居れば着くのじゃし、滅多に現れない魔物が、偶々運悪く現れたら撃退するだけのお仕事じゃしな。パーティーメンバーの全員が航路に興味など無かったのじゃ。

 

 海沿いには港があるから海沿いを歩けばよいのじゃが反対方向に歩くと着かぬし魔物も街道から外れれば多いのじゃ。ここが島なら一生たどり着かないという可能性もあるのじゃ。その時はぐるっと周るだけじゃがな。

 

 しかし崖の上の森にエルフ達がおると教えてもらい、確認に行きヴィーザ大森林と教えて貰い王都ローフが思ったよりは近いことも知ったのじゃ。

 

 それで王都の冒険者ギルドに新しいダンジョンを報告すれば一攫千金の情報なのだからと伝えたのじゃ。

 

 ユウキちゃんは、そのお金でお礼出きるね♪ときたのじゃ。搾り取る気満々すぎるじゃろ。

 

 そんなことを言いながら保存食を準備してくれたのじゃ。一晩泊まったのじゃが、その時はワシが料理したのじゃ。

 

 そして今は保存食を受け取った事への後悔しか無いのじゃ。

 

 キラーフィッシュの保存食でキラーフィッシュは脂がのって美味しく、どこにでもいる魚じゃ。そのせいである程度の大きさがある水辺は危険なのじゃがな。

 

 それが何故か恐ろしく死ぬほど不味い、いやそれ以上で死ねるほどマズイ。正に凶器じゃ。あそこまで不味くするのは美味しくするより難しいと思うのじゃ。

 

 はぐれだと料理も出来ないのじゃろうが本当に苦痛じゃ。採取しようにもワシは戦闘担当じゃたし、このあたりの毒か食べれるかは見分けれないのじゃ。魔物を狩るにも装備も仲間もないし遭難で消耗した体力も考えると、危険すぎるのじゃ。

 

 じゃがワシは遂にやりきって、ローフの冒険者ギルドに最低限清潔にして並んでおるのじゃ。不味い保存食ともおさらばじゃ。

 

 ダンジョンの情報を売れば大金が手に入り、帰りは旨い物を食べながら礼の品を運べばユウキちゃんのクエスト達成じゃよ。

 

 冒険者ギルドの受付嬢は、王都だけあって若い美人が三人ほどいる。シバル王国は鳥人族の国なので受付嬢は鳥の翼が背中にあるのじゃ。

 

 ようやく行列が捌けてワシの番になるのじゃ。

 

「新しいダンジョンを発見したのじゃ」

 

 Bランクの冒険者カードを見せて身分証明も同時に行うのじゃ。

 

「入り口しか確認しておらんが、歩いて10日程でヴィーザ大森林の海側じゃ」

 

「なるほど、エルフの領域のヴィーザ大森林の中ですか?」

 

「崖の下じゃった、ヴィーザ大森林が崖の上じゃったがそばじゃった」

 

「なら間違いなくシバル王国内、鳥人族の領域内ですね。地図を作っていただけますか?」

 

「地図を作るから書くものを頼むのじゃ」

 

 受け取った羽根ペンで羊皮紙に地図を書いて、受付嬢に渡のじゃ。

 

「ありがとうございます。何かダンジョンを証明する物はありますか?」

 

「ダンジョン産の装備品じゃ」

 

 冒険者ギルドにダンジョンの情報を売ると言ったらユウキちゃんが持たせてくれたネックレスじゃ。認定されなければ売って金にしてよいと言われたのじゃ。実力を考えるにカイの奴が奥から取ってきたのじゃろう。

 

「鑑定しますのでお待ち下さい」

 

 受付嬢が鑑定のために裏に持って行くと暫くして戻って来たのじゃ。

 

「アイテムは新品でした。付与の付き方からダンジョン産と予想します。他のダンジョンは管理されておりますので、新たなダンジョンと認定しました。こちらが情報料になります」

 

 使えるか滅ぼすべきかわからないのだから飛び抜けて高くはないが、高額な金額として銀貨50枚を受け取ったじゃ。

 

「ありがたく受け取ったのじゃ」

 

 Bランクそれも長年ともなれば信用があるのじゃ。冒険者は貴族や大商人の子弟で後取りでない者が多いのじゃから、特に高ランクとなれば長年冒険者ギルドに、貢献しておるのじゃから最低限の証拠で良いのじゃ。

 

 冒険者ギルドを出て、先ずは調理器具とユウキちゃんにかわいい洋服を買い歩き、カイにも服を買う。

 

 高いが砂糖を使ったクッキーを買うと運ぶために荷車そして、寝袋や最低限の防具を買い宿を取ったのじゃ。

 

 宿の飯は普通じゃたっが道中の飯マズじゃったから感動して、おかわりと酒をついつい頼んでしまったのじゃ。

 

 そして眠り、宿を出るために精算したのじゃ。

 

 荷車に荷物をまとめてユウキちゃんの元へ移動中の保存食を買うため残りの金を見ると銅貨196枚・・・呑みすぎたのじゃ。

 

 しかし銀貨50枚が一晩で無くなるとは予想外じゃ。帰りの食料はキラーフィッシュの保存食しかないのじゃ。

 

 つまり・・・不味い食事が後10日確定したのじゃ。

 

「ノォーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 ワシは若い頃からの冒険者しゃの性としての金遣いの荒さと、ドワーフならではの酒好きを初めて後悔したのじゃ。

 

「ノォーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 身だしなみを整える金も最低限の装備を買うないことに気が付き更なる後悔に襲われたのじゃ。

 

「ノォーーーーーーーーーーーーーー!!」

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