021話 相性は大切
目の前で私をめぐって男が争ってる優姫だよ。
チビでテッペンハゲでなにより不潔なヴィシリアが、興味津々で壁に向いていろいろ考えている海くんに奇襲で飛ぶ様に突進する。
本人がBランクと言っていただけあり、目にも止まらない速さで海くんに、ヴィシリアが近づいて殴りかかる。
私が気がついたらヴィシリアの拳が繰り出されていた。海くんは壁を見ていたから反応出来ないタイミングだと思う。
でも海くんはあっさりと半回転で回避して、カウンターの膝蹴りをヴィシリアの腹に打ち込むと見事にみぞおちに命中する。
「手応えがおかしいな?目に見えない鎧がある感じか」
「ステータスの差じゃ、お主の攻撃力ではワシにダメージを与えられんのじゃ」
「さてどうかな?」
海くん楽しそうだなー。海くんの戦闘狂が出てきて狂気の表情だね。本当に海の反射神経とか記憶力とか人間離れしてるしファンタジーなら相当なステータスじゃない?
でもヴィシリア口振りからヴィシリアの方がステータス勝ってるのかな?
「ステータスの差は絶対じゃ!ウィンドプレッシャー」
ヴィシリアが魔法を発動させたみたい。魔法名的に効果は風で行動阻害もしくは押し潰すかな?意思疎通リングだから意味は正確だから合ってるはずだよ。
海くんに風が弱く上から下に向けて吹いてるみたいだけど、影響ないのか普通にナイフで切りかかる。
いつもはエルフから報酬として受け取ったナイフを使うけど、今回使ってるのは最初から海くんが持ってたナイフで切れ味がとても良い、たぶんサバイバルナイフで手入れもしっかりしている。
銃火器は普段は持ってなかったけどナイフは常に装備してたって言ってたよ。
さすがに冒険者というだけあってヴィシリアもナイフを回避する。お爺さんだからか、ドワーフなのに風の魔法使いだからか、海くんよりはキレがなくギリギリだね。
というかドワーフなら、土魔法じゃないの?
海くんが追撃で繰り出した蹴りの爪先が股間にヒットしてヴィシリアが吹き飛んでダンジョンの天井に頭からぶち当たる。
「うが」
ヴィシリアが変な声を出すけど海くんは情け容赦なく落ちて来るヴィシリアに後方回し蹴り、つまりくるっと旋回しての蹴りを叩き込む。しかも踵がみぞおちに直撃して壁にズドン!と叩きつけられる。
戦闘で背中を見せるのは危険だと思うけど天井に激突してるなら反撃何もないよね。海くんが攻撃を受けた姿も、ケガも見たことないから何しても避けると思うけどね。
「グハッこれほどやるとは驚きじゃぞ」
「お爺さんなのに凄い丈夫ね。ステータスも魔法なのかな?海くんの水を操作するのも魔法でしょ?」
私が何気なしに疑問を口にする。
「なるほど、使い方かもしれないのか、水以外は上手く出来ないんだよな」
「魔力は神からの贈り物、信仰が無ければ操れぬし失うのじゃ。ウォーターランス」
何もない所から水が槍になって海くんに飛んでいく。ヴィシリアって魔法使いなのかな?回避もキレがないし、後衛タイプみたいだね。でもさドワーフなら土魔法を使わないとだよ!!
なかなかのスピード感ある水槍だけど海くんは余裕で回避する。
筋力とか反射神経とか鍛えてるにしても海くんの身体能力は100メートルを飛び降りて無傷に出来るくらい異様に高いからファンタジー補正が効いてるチート系と思ってたけど・・・もしかして、ステータスなしの素であの身体能力なのかな?
いやいや人間をどれだけ鍛えても海くんレベルは無理だよ。
もし海くんがステータスなしでこの強さなら地球の軍人さんってファンタジーの世界よりファンタジーしてるのじゃないかな?
「ウォータはぐっが」
ヴィシリアが魔法詠唱してるところを海くんのアッパーカットが顎にヒットして舌を噛んだみたい。
いくらドワーフでも、魔法使いなら接近戦闘って間違いだよ?だって海くんは近接格闘技がメインでたぶん、殺す技だと思う。
急所の金的とか頭とか顎とかさ、もうえげつなく狙うし威力重視の蹴りとか投げ技が多いからね。というか海くんの攻撃って吸い込まれるように急所にしか当たらない気がするよ。
オークとかも基本カウンターで殴り殺すらしいしね。
海くんはアッパーカットから流れるように投げ技に繋げてヴィシリアがヤバイ感じに頭から地面に叩き付けられて、喉を踏みつけて「ぐえっ」と言わせて、さらに蹴り飛ばしてる。
それでもヴィシリアは少しふらつきながらも立ち上がってくる。
「なんじゃ?そんな格闘スキルはなっほぐば」
しゃべってる途中でも海くんの踵落としがヴィシリアのテッペンハゲにきれいに命中する。踵って人の骨でも硬いところらしいよ。それが凄まじい速度で叩き付けられたら死ねるって。
海くんが再びアッパーカットを狙いヴィシリアがガードしようとするのも、フェイントで肩を掴むとぶっ飛ばないように押さえつけて金的蹴りがヴィシリアに命中すると少しヴィシリアが浮き上がる。
あっヴィシリアの手が押さえた股間におまけで膝蹴りが放たれる。手でガードしてるけどまたヴィシリアが浮き上るも海くんが肩を押さえてる。
「ノォーーーーーーーー!!」
吹っ飛ぶことで威力減退が出来るけど、今のは股間の的に海くんの押さえつける力とヴィシリアの体重、蹴りの威力が集中したのだろう。しかも二連続だからダメージが倍増したと思う。
ステータスも完全に貫通したと思う。
叫びながら股間を押さえるヴィシリアは戦闘不能というか転げ回ってる。
女性の私でも恐怖の一撃だね。
「海くん酷い一撃だね、いや二撃かな?」
「これで不能になるな」
それは戦闘不能?それとも股間が不能?怖いから黙ってよ。
「不潔な髭とモジャモジャヘアは罰せられたね」
「ノォーーーーーーーー!!」
ヴィシリアはまだまだ転げ回っている。
「魔法使いが格闘家に挑んではいけない、相性が悪すぎたんだよ。私も覚えておかないとね」
「ノォーーーーーーーー!!」
ヴィシリアは転げ回って返事もしてくれない。海くんの攻撃力は凄まじいみたいだね。
「これどうする?」
海くんにヴィシリアはこれ扱いされてる。名前は絶対海くんの記憶力なら、覚えてると思うんだけどね。
「外に出して放置でいいよ」
「了解」
「ノォーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
海くんは遠慮なく金的でダンジョンの外に蹴り飛ばして出し、放置したのでした。わざわざ股間を狙う必要あったのかな?その方が難しいよね?
チビでも人はあんなに飛ばないと思うけど地球って魔法のある世界より恐ろしいところだったんだね。
「ノォーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
御愁傷様です。
さてヴィシリアのせいで遅れたけど、ダンジョン生活スペースに荷物を運び込んだり、座礁船を探検したり、打ち上げられてたり船で亡くなってる人達お墓作ったり忙しくなるよ。
私は力仕事は出来ないから、ほとんど海くんの仕事なので、しっかり応援するよ。
海くん頑張れー♡
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