160話 間話 盗賊を定義しなさい
第三者 side
シバル王国の人里近い山中にて、事件は起こっている。
「キャハハ、ほら、早く金目の物出さないとこの娘殺しちゃうよ?」
「頼む!!その娘は関係ないだろ!許してくグエッ」
「そんなことは知らないよ。キャハハ、ほらほら早く金目の物持ってこいよ」
小柄な人質を取ってる女、ミレーナは貧乏そうな男を踏みつけグリグリする。
「お父さん!!きゃ痛い!!」
ミレーナに捕まっている10歳も越えてなさそうな少女の首筋にナイフが軽く刺さる。
「早くしないとひま潰しにどんどん刺しちゃうぞ、キャハハ」
「ミレーナ姫様、それではどちらが犯罪者か分かりません」
出来る男ぜーストが、ミレーナをそれとなく止める。でも踏みつけてグリグリは止まらない。金目の物を持ってこさせるつもりあるのだろうか?多分なさそうだ。
「傭兵なんて半分は盗賊だよな?な?」
戦時こそ雇われるが平時は仕事がないそれが傭兵だ。平時には盗賊行為で、食いつなぐ傭兵も当然いる。
盗賊が稼ぎがいいから傭兵をすることもある。だいたい主力は冒険者と騎士団なのだ。傭兵は死んでも惜しくない尖兵であり、肉壁だ。
傭兵が稼ぎに困らないなら戦乱の世の中であり、それはまた別の問題があるだろう。
平時にも常に仕事に困らない、プライドが高い歪曲魔族が特殊なのだ。
「我々は、誇り高き歪曲魔族ですよ」
「都合のいい方選ぼうぜ」
ミレーナは今の気分で、盗賊になるらしい。
「歪曲魔族の名誉が地に落ちるのですが?」
「えー、仕方ない。皆殺しか?根切りか?」
「どちらも同じことなんですが?まぁ殺した方が名誉は守られますな」
盗賊だけど、娘を人質にとられている男は諦めるなよ、とゼーストを見る。そう、ミレーナは金目の物を制圧した盗賊のアジトから、回収しているのだ。
「じゃー誰から死ぬ?やっぱり女の子からが映えるよな?そう思わだろ?な?な?」
盗賊もドン引きの残忍さだ。しかも楽しそうに、それこそスイーツの食べる順番か、インスタ映えするための写真選びのような感覚で言う。
「誰に聞いてます?そんな非戦闘員しかも、女の子の死は見たくないので全会一致です」
盗賊の男は良く言ったと、ゼーストに賛美を惜しみなく視線で送る。
「えー、じゃあ殺さないくて面白いこと考えないとなっと、ならこの娘をお前が犯ったら殺さないですまそうか」
ミレーナ鬼畜の所業である。親に幼い我が子を襲えというのだ。
「それは・・・」
ある意味で死んだほうがマシだろう。肉体が無事でも精神が死んでしまう。その状態で生きること、自死のハードルは高いから一生苦しむかもしれない。親に出来ることではない。
「ミレーナをオカズにしたらぶっ殺すからな!」
「歪曲魔族の名誉が地に落ちて、地面を突き抜けそうですが?」
ゼーストが真当なことを言う。盗賊にしたらゼーストも皆殺し派ではあるが、それでも話しが通じる普通の人だ。
「ジョークに決まってるだろ?犯るのを見るために娘を解放しないしー」
「ミレーナ姫様は笑いながら実行しても、誰も驚きませんよ?今までの行動を振り返って下さい」
「ん?商人を襲ってる盗賊を捕まえてアジト教えてもらって、当然の権利として金目の物を回収してるけど?」
ミレーナの言ってることは正しい。正しいのだがそうじゃない。
「商人を襲っていた盗賊を一人残して手先指先からスライスしてどこで死ぬか実験とか言いながら5人惨殺。怯えた最後の一人を脅して案内させ、アジトの目前で中の盗賊にわかるように案内役をバラバラに惨殺。激昂した盗賊達のアジトに単身突撃し、盗賊を手を変え品を変え惨殺しまくり、ここまでの道のりを血の海に変えて盗賊の親分の娘を人質にしています。端折らないで下さい」
物凄い長文を喋るぜーストである。ミレーナの鬼畜の所業に聞き取りやすさを気にする余裕がなかったようだ。
どうやら盗賊の親分だったグリグリされてる男はマジで悪魔かなにか、人外の存在を見る目でミレーナを見る。極悪非道な盗賊から見ても、ミレーナの行いは畏怖の対象らしい。
「世間的にはミレーナ間違ってないだろ?」
盗賊を殺しても罪ではないし、討伐は推奨されている。傭兵として肉壁にもなるし、殲滅するのは難しいためにある程度は野放しだが、殺してもなんの問題はない。犯罪者の使い道も多くはないし殺した方が、ありがたいまである。
「世間的には結果は間違ってませんけど、人として過程が間違ってます」
「ミレーナは人じゃなくてミレーナ!キャハハ、なら正しいな」
盗賊の親分の娘が遠い目をしている。どうやらこいつ頭おかしいと理解して諦めたらしい。親分はゼーストに縋るような表情でグリグリされながら拝んでいる。
「歪曲魔族としても過程は間違ってます」
「マジで!?歪曲魔族の族長だからなぁ、ここは証拠隠滅?やっちゃう?花火大会か?いやキャンプファイヤーだな。やっぱりビッグファイヤーストームやろう」
「山を焼き討ちするつもりですか?こんな中腹から焼いたらシバル王国にマジギレされますよ?あとファイヤーストームは火災旋風のことで、半ば誤用です。国によっては合ってますけども」
端から奥に向けて追い詰めないと火事から逃げた魔物が人里を襲ってしまう。
「シバル王国のマジギレは後に置いとかないとな。キャハハ、飽きてきたし残りはシバル王国に突きだすぜ」
この後生き残った盗賊達は改心し熱心に、クソ真面目に普通に底辺なキツイ仕事でも一生働いたそうだ。よっぽどミレーナが怖かったのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます