035話 間話 生き倒れ元女王
「食べられる物の気配を感じます!!」
鳥の翼をもった女性で20代半ばというところ身なりは高貴で美人なのだが、生き倒れていたと思えない速度で立ち上がり叫びながら走ってくる。
胸は大き目でプロンドカラーの髪と清楚な美女だ。
「おおう」
まさかの海くんがドン引きで、スライムのうみは恐慌状態でパニックなのか海くんの後ろにコミカルさを発揮して逃げ込む。
他の生き残りのスライム達はダンジョンの奥に逃げしまう。本能的な恐怖がダンジョンの命令を上回ったようだ。仲間がびろーんより怖いらしい。
「これは食べられます!!」
びろーんしているスライムの死んだスライムをちぎっては食べ始める。
「食えねーよ」
「不味い、もう一匹!モグモグ」
「ゼリーじゃないぞ?頭大丈夫か?」
そこはもう一杯だろ、青汁じゃないけどな。と突っ込みを入れて欲しい。テレビ知らない海くんには無理な注文なのであるが。
「死ぬほど不味くはありません。肥料だって頑張れば食べられます。モグモグ」
「ほぼ土と同じだろ?というか肥料はどう頑張っても無理だろ?まだ土の方が可能性を感じるな」
せっかくの清楚系美女が肥料用の魔物を食べると台無しで千年の恋も一発で冷めるほどだ。もちろん犠牲スライムは今も食べられている。
うみはまだ海くんの後ろでぷるぷるしながら隠れている。食欲でスライムを本能的に脅えさせるってどんだけよ。
「自ら退位し王族の地位も捨てたので、一文無しでしてお腹が減ってるのです。今ならスライムも食べられます。モグモグ、モグモグ」
「退位とお腹が減るのは関係ないからな、その前にスライム食えるのとはもっと関係ないからな」
そこは王族!とか退位!一文無し!?とか気にすることは多いはすだが海くんは権力は興味が無いようだ。そして海くんが全力でツッコミしてる!彼はボケではないがどちらかといえば引っ掻き回す側だよね?
「モグモグ、おや?私が元女王でも気にしないのですか?モグモグ」
「肥料を食べてる奴がお偉いさんとか信じられんな、食べるスピードアップしてるし余計に頭おかしい奴としかな」
「モグモグ、そこまで頭おかしい行動ではないかと思いますよ?モグモグ」
「肥料って基本的に排泄物と同意義だよなー、厳密には微生物やらに食われた後の植物の栄養ではあるけどやっぱり排泄物だよな?元素的にはギリギリセーフか?やっぱりアウトだな」
マジのドン引きで、Sの彼でも引っ掻き回すことすらやりたくないようだ。
生態系は循環しているので動物の排泄物や死体などが微生物や腐肉動物などに食べられ分解すると、肥料になり植物の栄養となり育ち、植物は動物に食べられてまた排泄物になるので、肥料は動物のつまり人の食べ物ではない。
ミミズなどの糞や微生物が腐らせた物が肥料ということである。合成肥料にしても食べられる物質ではない。
そして良い肥料であるスライム死体は成分的には排泄物の腐った物に近いということである。破滅的に不味い料理を普通に食べることが出来る海くんが食べられないと断言する。それほど食材として終わっているのだ。いや成分的にも食糧ではない。鉄分が人間には必要だが鉄塊は食えないのと同じ原理だ。
「ぶーーーーーーーーー!?げほっげほっ!?」
元女王は盛大に吹いた。きっと人生最大の粗相だろう。美人も台無しである。そりゃ排泄物が腐ったそれに近い成分は食べられないでしょうよ。なぜ味で気が付かない?そしてスライムの成分は何なんだよ?
正面にいた海くんが避けられず汚れるが素早く後ろにいた、うみが素早く食べて、海くんを綺麗にして事なきを得るスライムなのに気遣いが出来る知性スライムなのである。
食べられることがなくなったと理解したからこそのスライムうみの行動だろうが、理解できることこそが異常なのだ。知能のある魔物でも人語の理解はしないのだ。
一番まともな空気読める奴はスライムだったようだ。
「汚いなぁ、口に入れたものをそんなに勢い良く吹き出すなよ。もったいないし食べろよ」
海くんが食べれないと教えたのに食えとはやっぱりSですな。吹き出すと予測はなかったらしい。そして海くんに始めて攻撃?がノーダメージだけども、まともにヒットしたのは彼女になった。名誉ある称号だ。
「無知が恐ろしいということをこれほど実感した日はありませんでした。お見苦しいところををお見せしてすみません。王族としてではなく、一人の人として助けてはいただけないでしょうか?」
「えっ、肥料食うような奴はやだ」
海はなかなかストレートに言うが確かに、いきなりスライムの死体を食べる仲間とかホラーである。いきなりはステーキで十分である。そろそろどうなってるか気になる時期だがステーキは売れてるのか?
「本音はヤバいもの食べたので腹を下したら大変なのでマジで助けて下さい」
「勝手に食べただけだろ?助ける理由は・・・おもしろいからいいのか?」
海くんに助けられたら酷い目に合いそうだし諦めたら?
「もうスライムは食べませんよ」
「身体をはったお笑い芸人なら助けてもいいな。毎日が楽しくなりそうだ」
海くんがやる気ですよ。何させるの?元でも女王ですよ。やめてあげて。
「こう見えても、現シバル王国の女王の姉ですよ、少しは融通効かせられます」
「お偉いさんよりも、芸人の方が価値があるな。熱湯風呂とかする?(笑)」
ええっ!海くんなぜ熱湯風呂を知っている!?Sな発想は伝統芸能に通じるのか?
「スライムの死体を食べる並みに身体をはるのはお許し下さい。交渉は自信があったのですが全く敵いません。諦めましょう」
流石にこれ以上の羞恥には耐えられなくて引くと、キアリーが食事のために海くんを呼びに来た。
「カイ様、昼食が出来ましたのでお越し下さい。!?ネイ王女様ではないですか!?」
「おや?私の顔を知っているので?」
「メイドとして下働きしているときに1度だけですが拝見したことがあります。」
「そうですか、もう退位して女王でも王女でもないのですよ。それではお暇します」
「少しお待ち下さい。何かの縁ですし昼食くらいは食べていってください。カイ様よろしいですか?」
「キアリーがしたいならいいぞ、今さっきスライムの死体食べたから腹が減ってるかは知らないが。だから食事はどうなんだ?」
ネイの人生最大の粗相はあっさりと公開されたのであった。キアリーも顔が引き攣りつつも回答する。
「元であっても、シバル王国は王の権力が強い国ですしダンジョンを喧伝してもらえれば、DPが稼ぎやすくなるでしょうから恩は売って良いです。冒険者が全く来ないとユウキ様も困ってます。」
「まともなの食事は大歓迎です。まだまだ腹半分くらいです」
「5~6匹のスライム食べて腹半分っての凄まじいな」
飲み込んだのは吐き出してないらしい。
「カイ様もたくさん召し上がられますが、一度にそれほどではないですね。それではお二人共にご案内致します。」
こうして優姫の元に鳥人国家、シバル王国の元女王がやって来て退位の理由をコアルームで話したのだった。
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