067話 間話 見捨てられた?
エマーシュ side
さてトオイノナンデ伯爵の指令書とマフィアの回答が帰って来ました。
トオイノナンデ伯爵は「ネイを見つけて殺せ」とそれだけです。
これは放置しても良いでしょう。出来るとも思えないしバックレるつもりだしさ。
「これはヤバイわ・・・」
思わず一人で愚痴るくらいにヤバイ内容がファミリーから届きました。
マフィアの組織としての回答を考えてみましょう。間違いかもしれないので、小難しい暗号をもう一度解読し直すのです。
トオイノナンデ伯爵からのネイ元女王暗殺の仕事を受けたのなら助けられない。
よって、アスカファミリーから除名する。
問題が発生したらエマーシュの首を王家に差し出して解決する。
「・・・えっと何度も同じ事が解読されるわ。これは見捨てられて場合によってはマフィアに狙われる可能性があるということだよね」
まさかの金の亡者と恐れられるマフィアのアスカファミリーに金を出すと言っても完全に見捨てられるのは想定外ですよ。
ファミリーに金を積み増して私の命を守って貰うというのは不可能ではないが凄まじい金額がおそらく必要で私には支払えない。
全ての前払いで受け取った依頼料で除名ですからね。普通の30倍でも拒否ってもう王家にバレてる!?
トオイノナンデ伯爵家は暗殺が成功したら御家を潰されるだろうし、計画がバレたと思われる時点で当主はアウトだろう。
失敗したらトオイノナンデ伯爵にも切り捨てられるだろう。つまりは、誰も助けてくれない。そして生き残る道がない。
「これ詰んでない?このままバックれるしかない?」
問題は私は冒険者としては弱く魔物を狩って生きては行けないだろうし、他国にあてもない。今までマフィアの力で生きて来たのだから仕方ない。下手に知り合いに会うとそのままファミリーによって王家へ売られかねない
見た目は自信があるけど逃げるのには目立ってマイナスになるのよ。
それに逃げても金は増えないから生きていくには稼ぐしかない。
風俗なら今は仕事が有るだろうけど、10年後は厳しく、暗殺に比べれば稼ぎも少なくなる。
「バックれても金がなくなるのを待つしかない、なら違うマフィアかな?」
シバル国内で有名なマフィアだと上の命令は絶対、実力が全てというのと、スラム街の統治をしてるヤクザの2つである。
実力がないので助けてもらえないというか強ければバックれて国外で冒険者をしたらいい。
スラム街の統治してるヤクザならスラム街の民ならある程度は助けてくれるだろう。
私はマフィアの人間だし、スラム街に住んでもいない。
助けてくれるわけがない。
「いっそダンジョンでその日暮らし的に稼いでいい冒険者と結婚しようかな?」
優秀な冒険者なら女は選びたい放題で同じ狙いのライバルは多いだろう。
わざわざ後ろ暗い仕事をした私を選ぶ必要はないだろうバレなければいいけど、ファミリーとトオイノナンデ伯爵が放置してくれるかどうかだよね。無理だろうな。
「残るはダンジョンに特攻かな?惨めに暮らすならダンジョンを攻略していっそ財産築く方がいいかも」
攻撃力は私はないけど防御だけは自信がある。そうそうダメージを受けることもない。
暗殺の成功率が高いのはハニートラップと防御を合わせてるからだ。
仕止めきれなくても、反撃を無視して、攻撃を繰り返し致命傷を負わせるのが私のスタイルだ。囲まれても目標さえ殺せばいくらか攻撃されても気にせず全力で逃走すればよい。
私の防御力なら剣だって魔法だって無視して問題ない程度の攻撃力しかない奴ばかりのだった。
Aランクの化け物でもないと致命傷は受けないだろうしそうそうそんな奴が居るとも思えない。
拘束さえされなければどうにでも出来る自信がある。
「ダンジョンに特攻してトラップも魔物も防御に物をいわせて突き進むかな」
最悪でも逃げることは出来るだろう。殺されなければ何の問題ないのだから。冒険者は死ななければ素材か装備品を持ち帰れば良いのだ。簡単な職業な気がして来た。
しかしエマーシュは冒険者としての経験と知識がなかった。故に情報収集を怠った。
このダンジョン特攻で奥に進むより、3階層が利益になることも、攻略が禁止されていることも知らなかった。ボス部屋で逃走不可なら泥仕合になり、倒せないと出られないつまりは、餓えて死ぬことも知らなかった。
そして、本気でダンジョンから猛攻されるだけで、宝物はなく、せいぜい防衛の魔物から素材が得られるだけということも知らないのである。荷物が増えればそれだけ不利になるし剥ぎ取り中も猛攻に晒される。
より戦い易く安全に3階層で狩れるから素材で攻略する意味もないのではある。
もちろん国家の財源でダンジョンマスターと交渉できる以上は下手に刺激しないようにラスボス攻略を禁止している。
ラスボスのヤバい所業を知って攻略する者などいなかったので無意味な禁止事項であった。
こうして事前に調べていれば絶対にしないダンジョン攻略を決意してしまったのであった。
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