002話 勇者降臨と聖女

 頭琉ナナトは2回目の浮遊感が治まって地に足がついて、白い世界から視界が戻ってくる。

 

 どうなっているのか、ワクワクしながら周囲の確認をする。

 

 目の前には美少女がいる。とても可愛いく、十代後半で白い服と白い帽子に金刺繍が豪華にされている美少女が、両手を組み片膝をついて、やや下を向いて目を瞑って祈っているみたいだ。

 

 アイドル顔負けの美貌でリアルには見たことが無いレベルの少女で好みだし、彼女にしたい!!

 

 なんとか自身の美少女にロックオンした視線を外して、周辺を確認すると西洋風の神殿の中みたいだ。白い石造りで少しでも明るくするためか、太陽神と名乗った女神を信仰するからか、天井は総ガラス張りで、太陽光が燦々と入っている。


 白い服に白い帽子をかぶっている神官がずらっと美少女の後ろで、整列して頭を垂れて祈っている。

 

 手前に来るほど、白地になされている金の刺繍が多くなることから、年齢と地位が上がっているようだ。

 

 だが男の神官のことはどうでもいい!!あのかわいい子が聖女ですか?清純派アイドルか女優として、世界で簡単にトップ取れそうなほどですよ!!!!

 

 しかしこの空気はどうしよう・・・テンション上がるけど、心臓の音が聞こえるほど、めっちゃ静かなんですけど・・・

 

 シーーーン

 

 少しキョドりながら、待っていると目の前の女の子が声をかけてくれる。

 

「私は太陽神オー様の聖女に任じられているシーナと申します。神託の勇者様、お名前を教えていただけますか?」

 

 少し緊張しているようだけど、透きとおった声も最高です。

 

「頭琉ナナトです」

 

 何と噛むことなく、名前だけは言うことが出来た。噛んだら人生を悔やむレベルの失敗だったな。

 

「ズル様、ありがとうございます。ステータスを調べさせていただけますか?」

 

「お願いします」

 

 勇者と聞いてはいるけど、スキルがないとか職業が違うとか起こらないかと不安も僅かにある。


 ステータスで勇者と確実に、即時確認出来ることは嬉しい。ざまぁ系では最初はとにかく危険なのだ。勇者なのに追放されたり、弱くて失望されて虐められたりする。


 後々にやり返したり美少女には理解されたりするけどさ。

 

 すぐに水晶と紙と金属プレートが、運ばれてくる。

 

「鑑定水晶と記録紙とステータスプレートです。鑑定水晶はステータスを調べることができます。記録紙は勇者様の正当性を証明し、公開すためのものです。ステータスプレートは鑑定水晶結果や身分を持ち歩け、身分証となります。ステータスプレートの内容更新するには鑑定水晶で鑑定が必要です」

 

 聖女シーナが説明してくれる。

 

「鑑定水晶に手を触れてください。あとは私がいたします」

 

 水晶に掌を当てると水晶が直視できないほど強い光を放つ。

 

「「「「おおぉぉ~!!」」」」


 神官たちが驚き声を出す。

 

 キターーーーーーーーーーーーー!!!!!!ステータスがめっちゃ高いやつだ!!!

 

「ステータスプレートと記録紙に記録しました。ステータスプレートは頭琉ナナト様にお渡しします。大切に持っていて下さい」


 聖女シーナよりステータスプレートを受け取ると首にかけて服の中にしまう。


「ステータスを確認いたします。大変素晴らしいです。スキルは得るのはとても大変なのに、もう19個は凄まじいです」

 

 記録紙の内容をしっかりと見てみる。

 

 -------------------

 

 名前 頭琉 ナナト

 種族 人間 男

 

 MP  100

 攻撃力 15

 防御力 15

 魔法力 15

 素早さ 15

 精神力 15

 

 スキル 

 双剣技Lv1

 収納魔法

 光魔法Lv1

 火魔法Lv1

 風魔法Lv1

 状態異常耐性Lv1

 精神耐性Lv1

 魔物特攻Lv1

 物理攻撃強化Lv1

 斬撃攻撃強化Lv1

 刺突攻撃強化Lv1

 魔法攻撃強化Lv1

 光属性強化Lv1

 火属性強化Lv1

 風属性強化Lv1

 魔物探知Lv1

 魔法感知Lv1

 高速詠唱

 言語理解

 

 -------------------

 

 レベル表記がないがステータスは、レベルアップで上がるのではないのだろうか?しかしスキル数19で相当強力なスタートに安心する。

 

 鑑定紙の内容は読んだことが無い文字だ。でも不思議と読める。スキルにある言語理解の効果だろう。

 

「素晴らしいスキルです。勇者様の役目である世界を救うための戦闘系のスキルで18個とは驚きです。特に強化系、特攻系のスキルは1レベルで5%強化、最大50%強化の乗算式でステータス値を瞬間的ですが、上乗せします」

 

 聖女シーナに褒められるだけで内心テンションが爆上がりする。たぶん表情はにやけてるだろう。しかも強化系が多いのなんのって最大だと1.5✕1.5✕1.5とかだろ?やばくない?たぶん2倍は超えてるな。


 ※3.375倍です。現役大学生ですが計算はできてません。

 

「スキルレベルとステータスの向上のために、魔法は私がお教えします。剣技は聖騎士のムツナがおこないます。ムツナは明日、ズル様の練習用装備のお渡しと共に紹介いたします」

 

 こうして俺のステータスとスキルを知ったのだった。

 

「それでは、本日はお疲れと思いますので、お着替えと食事を用意しております。ゆっくりくつろいで下さい。ではご案内いたします」

 

「ありがとうございます」

 

 昼食が途中で腹が減ったし食事は嬉しいけど、いつの間にかスマホがないな、と思いながら聖女シーナを追いかけて歩き出した。

 

 さっきのお気に入りのマンガの主人公の様に冷静沈着なキャラでモテるために、スマホで調べられないし、いろいろな勇者を調べて参考に出来ないと後悔したのだった。

 

 もしスマホがあっても電気がないし、発電機を作ってもスマホの規格に合わせられない。よって無理に充電すれば壊れる。


 定格電流や周波数、コンセントの形や導線の素材、安全装置などなど精密機械は、細やかな複数の技術があってこそ成り立っているのだが、そんなことを知っているはずが無い。それ以前に、大学生ではあるが小学生6年で習う発電機の仕組みすら覚えては無いので壊すことすら出来ないのだった。

 

 スマホがあっても充電が切れたらただの板になるし、インターネットが異世界に存在してないから、ダウンロードしてないためマンガも1冊たりとも読めない。


 検索も全く出来ないのだが、そんな事に勇者ナナトは気が付く事は無かった。彼は目の前の超絶可愛い聖女が気になっていて、頭がいっぱいなので幸せなのかもしれない。

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