029話 間話 忘れられました
キアリー side
意識が朦朧としながらもバカな事をして仲間が去って行くのは理解しました。
「行っちゃたね。私達もコアルームに戻ろうよ」
「けが人と死体の処理を考えないとだな」
「けが人?ん?あー!プロポーズ成功したからって仲間を忘れて置いてきぼりって酷いよ!手当てしなきゃ!海くんお願い」
「出血が大いな締め付けて止血するが間に合わないかもな」
「えっ!やばいじゃん!」
「無理なものは諦めろよ」
「そうだ!ポーション使おうよ。血と体力は回復しないけどケガは治るって説明あったし、いざという時の実験もあるしね」
「どう使うんだ?」
「えっ!?たぶん液体の飲ませるだけだよ」
「了解」
ボス部屋の彼は肩口をぎゅっと締め付てポーションを飲ませます。この時の手際はほんとすごくて、話してる間にあっという間に救急作業を終わらせます。
ポーションは怪我の回復のみで体力と血液は高価な物でも回復しません。場合によっては体力をより消耗することすらあるらしいです。
私の傷の回復速度からかなりの高価なポーションだと知ります。命の危機はさり安心感と消耗した血液が多くて意識を手放しそうですがまだする事があります。
「貴重なポーションを使って頂きありがとうございます。このご恩は必ずお返しいたします。」
どうやらボス部屋にいた彼は女の子に従うようなので、二人にしっかりと頭を下げます。ポーションの効果が良いは高級品でこんな場所で買えるものではありません。王都でも腕の良い錬金術師でないと作れないはずです。
ダンジョン産にしてもポーションなどは見つかりにくいので、ここまで小さな新しいダンジョンならポーションを準備出来て数個でしょう。
「申し遅れました。睡魔族のキアリーです。元メイドで今は付与師の修行で冒険者をしております。」
「丁寧にありがとうございます。私は優姫です。彼は海くんです。最近はダンジョンマスターやってます」
「ユウキ様とカイ様ですね。なぜダンジョンマスターがいらっしゃるのですか?」
「ダンジョンコアを拾ってね」
「魔王の領域でしかそれも、滅多に見つからないと聞きましたが・・・このあたりでも見つかるのですね。私は装備に防御の付与は未熟者ですが家事ならお役にたてますのでお任せ下さい。なんでも出来ることならやらせていただきます。」
お金は持ってないし彼はパーティーメンバーを殺しているので、下手に出たほうがいいでしょう。パーティーメンバーとは短い付き合いでまだ思い入れも少ないのは救いですね。冒険者は死にやすい職業ですし諦めもつきます。
「メイドさんならお料理できる?海くんのご飯が不味いから美味しいご飯作って下さいな」
「料理は賄いを少し作っただけですので期待しないで下さい。」
「ホント!!!!不味くない料理なら大歓迎だよ!これからよろしくお願いします!!」
「こちらこそよろしくお願いいたします。」
さすがに出血が多かったのか、命の保障を得て安心すると私の意識を手放したのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
目が覚めると、洞窟っぽい部屋で粗末ですが布団に寝かされています。どうやらカイ様が横にいるので看病してくれていたようです。
「急に倒れたが大丈夫か?起きて食えるならスープ食べな。ここはダンジョンの一番奥、コアルームだ。安全だから気にせずに食べれるぞ」
「ありがとうございます。」
スープが準備されていて野菜こそありませんが、肉と魚がしっかり柔らかくなるまで煮込まれています。匂いも美味しそうでほんのり温かいスープを一口食べて「ブーー!まっっず!」思わず吐き出しました。メイドとしても女性としてもはしたないですがこの味は破壊的です。「ゲホッごほっゲホッぜーぜー」
「大丈夫か?味見したし、腐ってないし普通だろ?」
そういう問題じゃないゾンビも蘇生するほどの不味さ、いえゾンビすら殺せるのでは?というレベルです。これは毒より危険物で存在が許されないですね。
「食べ物に失礼な味付けですね。」
今さらですが怒らせないように無難な言葉を選んだ私を褒めて欲しいです。
「そうか?不味いという感覚もいまいち理解出来ないんだよな。さて優姫からの伝言を食べながらでいいなら伝えるぞ」
それにしても食べられた物ではないですが、血と体力を回復させるために凶器いえ悪魔といえる味のスープに戦いを挑みます。
「承知しました。私は助けていただいたので恩返しはいたします。」
不味さで話を聞く余力があるかどうかが気になりますが元メイドの意地で聞きます。それに価値がないと殺されては困りますからね。拒否権は私に無いでしょう。
「ダンジョン側の味方になってくれるなら報酬を出すとのことだ。特に料理担当は決定とのことだ。」
「報酬とはどういうことでしょうか?私は助けていただいたので恩返しですよ。」
料理は辞めるように頼まれても私がいるかぎりは私がやります。この味は無理です。舌が麻痺してきました。でも破滅的不味さが脳に直接襲ってきます。どうしたらこんな味になるのでしょう?
「キアリーを信用するためと、恩返しはいずれ終わるが報酬があり続ければ味方であり続けるはず、ということらしいな」
「つまり私を雇用したいということですか?」
「そうなるな。報酬は金よりはDPが良いだろうから了承するなら権限を与えるとのことだ」
ふむ、冒険者からの転職ですか。長年冒険者で生きていくつもりではないのでまともな生活が送れるならありですね。
この味を食べなくてはならないなら絶対嫌ですが、料理は私なら問題ありません。あまりの不味さに舌がいえ身体が拒否を始めました。体力を回復するためと彼を不機嫌にしないため無理やり口に運びます。ついには手が震えています。
「ダンジョンには詳しくなくて申し訳ございません。DPとはなんでしょうか?」
「ダンジョン内でアイテムや生活必需品、魔物と交換したり、光熱費などなどダンジョン内では通貨として使える、ダンジョン内限定の給料みたいなものと言ってたぞ。後は防衛は俺と拡張したダンジョンでするからキアリーはしなくていい。魔物もダンジョン内に限るが支配出来るから気にしなくて大丈夫らしい」
「承知しました。自由時間は付与師を目指しているので練習してもよろしいでしょうか?」
「空いた時間は好きにするといい。敵対さえしなければ俺は気にしない」
「承知しました。今後も何卒よろしくお願いいたします。」
「深夜だしまだ休んでな」
「分かりました。明日の朝食から初めますのでお願いいたします。」
睡魔族は睡眠時間がかなり短いことが特徴で、1日3~4時間で十分寝すぎくらいなのです。人の夢に入る間は起きてるので当然です。
ダンジョンに転職するにしても手に職を付けないと職場が悪くても変えれないので技術は大切ですからね。
種族的には人族なら丸1日は寝たくらいの感覚ですし、ポーションは高級品のようでケガの具合も良くて後遺症もありません。
カイ様もこれから眠るだろうし、静かに明日の朝食のメニューと料理の手順を考える事にします。
無理やり食べきったスープの器を持って出て行く彼の背中を見ながら、最初に吐いた以外は文句を言わずに食べきった私を褒めましょう。
いろいろ言い訳を考えましたが、あの味を朝食べるなら後遺症があっても、寝不足でも無理をして料理をします。
不味いのに胃は受け付けるあたり本当に腐ってもないし、毒もないのでしょう。ただ不味い。どんな拷問よりあれを口に入れられるのが、キツイ。
彼は悪魔なのでしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます