第13話 骸骨嬢
ビー! ビー! ビー!
「艦長! バリア崩壊! 第一装甲板剥離しました!」
「まだ艦はもつ! 慌てるな! 非戦闘員は居住ブロックまで退避。いなくなった場所から隔壁を閉じろ!」
「敵、戦闘艇多数感知! 味方戦闘艇では対処できません!」
「各砲座に各個撃破させろ!」
「ダメです! 迎撃間に合いません! 取りつかれました!」
クソ! これまでなのか……!
「……艦長。ご決断を……」
「……副長……」
言われなくてもわかっている。だが、この艦を失えば我々に未来はない。我々が最後の希望なのだから。
「……わかった。総員退避。副長、あとの指揮は任せる……」
副長の敬礼に応えるように頷き、敵を見る。
敵は強大。勝てる相手ではない。だが、わたしは最後まで抵抗してやる! 最後の最後まで、わたしは戦ってみせる!
「我がヴィベルファクフィニー号は絶対に沈まん!」
………………。
…………。
……。
なにやってんの? とか、冷めた突っ込みをなさる方々に答えよう。
脳内で不条理と戦ってんだよ! そうでもしないと心が折れそうなんだよ、察しろや! こん畜生がよ!
クソ! クソ! クソ! なんなんだよ、この夢も希望もねー腐ァンタジーは? これならバトルファンタジーで血と泥の中で生きたほうが遥かにマシだわ!
「ベー。そろそろ帰って来なよ──」
──ドボン! ゲボゲボゲボ──って死ぬわ!
ルンタの尻尾から逃れ、水の底から抜け出した。
「なにすんじゃい!」
「ベーってよく溺れるよね。水の加護が足りないんじゃない?」
テメーらのような水棲動物と一緒にすんなや! 人は水の中じゃ生きられねーんだよ! いや、よく海の中とか入っちゃってる人生ですけどさ……。
「大丈夫ですか?」
フレンドリーに入って来んなや。まだオレはテメーを受け入れてねーんだからよ。
空飛ぶ結界を創り出して濡れた服を結界で乾かした。ってか、この下水、そんなに臭くねーな?
「まあ、立ち話もなんですから、こちらでお茶でもしませんか? いいのが手に入ったんですよ」
そこに幾万の突っ込みどころがあったが、カバ子とルンタが受けてしまったので、仕方がなくオレも続いた。
しかし、さっきの貯水槽的な場所も謎だが、ここも謎の空間だよな? なんの目的で造られたんだ?
広さはちょっとした体育館くらいはあり、なぜかドーム状になっていた。
その中央には、五メートル四方の島……と言うか、リビング? があった。
「どっから集めてくんだよ」
「この上からですよ」
だからオレの呟きに入って来ないで。入って来んなオーラ全開にしてんだからさ……。
「あ、ボク、あれが食べたいです!」
「ルンタ、がっつきすぎよ」
テメーらの平常運転が羨ましすぎるわ。
「ごめんなさい。あの子たちは食べ物じゃないからあげられないの。代わりにこちらはいかがかしら? パリアンヌ、出してあげて」
水面が揺らぎ、なんかオレンジ色に黒い線が走ったタコが出て来た。
「プラヌグラーニーですって!?」
ハイ、レイコ教授。ご説明お願いしますよ。
「最悪と呼ばれた邪獣です! 文献によれば国を一つ砂漠化させたとか、氷漬けにしたとかあり、何人もの勇者が挑みましたが、倒した話は聞いたことはありません」
聞いた感想は「へ~」だった。
これと言った驚きはなく、これと言った感想も出てこない。あえて述べるならマシな生き物って素晴らしいってことくらい。
オレの周り、マシな生き物いねー説。ほんと、誰か覆してください!
あと、お前が一番マシじゃない生き物ナンバーワンとかはマジ止めてください。立ち直れない自信があるので。
「まあ、ベー様の周り、そんなものばかりですもんね」
それだとあなたも入ってますが。精神破壊系で。
「これ、美味しい!」
「たくさん食べてください。お部屋に浸入してくるから処分に困ってたんです」
ってか、ルンタ。お前なに食ってんのよ?
「普通の、と表現していいかわかりませんが、白いグラーニーを食べているようですね」
同じ種ではないのですか?
「人とゴブリンくらい離れた種ですね。もう、魔力が桁違いです」
まあ、確かに魔力はスゴいが、これならアリザの光でイチコロ程度。勇者ちゃんでも勝てるだろうよ。
「ベー様。そろそろ現実を見たほうが楽になれますよ」
オレの場合、現実から目を逸らしたほうが幸せになれると思うのは気のせいでしょうか?
誰もイイから肯定してもらいたいが、この現実と戦わないことにはこの場からは去れない。つーか、去らしてくれないだろう。運命ってヤツがよ!
空いてる席に座り、どこから調達したか謎のハーブティーをいただいた。無駄にウメーな、こん畜生が。
「お代わりいかが?」
無駄に高級そうなカップを掲げ、お代わりをもらった。
「で、なんで骸骨なの?」
単刀直入に尋ねる。遠回しに尋ねる根気も勇気もオレにはねー!
◆◆◆
聞くも涙、語るも涙なキャロリーヌの物語が紡がれた。
うんうんと頷き、口元を手で隠しながら後ろに憑くレイコさんに振り向いた。
で、要約するとなんだって? と口パクで尋ねた。
「……無駄にいい笑顔でいたからそんなことだろうと思ってましたよ……」
なぜか呆れ果てるレイコさん。んなことはイイから要約して!
「所謂『
霊化? なんですの、それ?
「生前、強い後悔や思いがあり、なんらかの魔力霊力が合わさることで霊体として現世に固定されるのです。リッチや骸骨霊がそのよい例です」
あなたはそれに入らないの?
「わたしは、いわば魂の具現。思念体です。霊化ではありません」
その違いがよくわからんが、「一緒にしないで!」と解釈しておこう。レイコさんを同類にしたらリッチや骸骨に失礼な気がしないでもないからよ……。
「なるほど。事情はわかった」
「いや、百を聞いて一も理解してない人がなんの事情をどう理解したんですか?」
ソコはアレ。アレはソレ。考えるな、感じろさ☆
「ふふ。おもしろい方たちですね」
「……なかなか手強い性格してますよね、キャロリーヌさんって……」
この幽霊にそこまで言わせる骸骨。目くそ鼻くそを笑うってヤツだな、うん。
「しかし、怨み辛みでいる感じではねーし、なんで成仏しねーの?」
まあ、後ろにイイ例(いや、例外か?)がいるので、怨み辛みどかじゃないかもすれんけどよ。
「う~ん、後悔、ですかね~」
随分と軽い口調(後悔)やね~。
「どんな後悔よ?」
まったく興味はねーけど、一応、聞きはする。
「もっと可愛い男の子を飾りたいです!」
………………。
…………。
……。
「ドレミ召喚! 助けてー!」
席から立ち上がり、全身全霊を込めて叫んだ。
「畏まりました」
と、ドレミの声が。どこよ!?
辺りを見回すと、ベストの下から拳大の水色の塊が出て来た。なによ!?
テーブルの上に落ちた水色の塊が、グニョグニョと蠢き、一七、八センチのメイド型ドレミとなった。はぁ!?
「マスターを守るために分離体を仕込ませました」
なに仕込ませてんだよ! いや、今回は助かったけどよ。
「まあ、可愛いらしいですこと」
……マイペースな骸骨嬢やな……。
「初めまして、キャロリーヌ様。マスターの僕でドレミと申します」
「ふふ。可愛い名ね」
「ありがとうございます。マスターにいただいた名です」
いつも無表情なドレミがにっこり微笑んだ。表情筋とかあるんだ……。
「キャロリーヌ様は、こう言う男の子をどう思いますか?」
と、メイド型ドレミが十歳くらいの、半ズボンを穿いた男の子に変身した。
「う~ん。わたしは、もっと丸みがある男の子が好きですわ」
「こう言う感じですか?」
と、女の子っぽい男の子に変身。半ズボンを変えない理由はなによ? いや、訊きたくはねーけどよ。
「はい。大好物です!」
なんだろう。寒気(恐気)は? 今すぐお家に帰りたい!
「──やはり、仲間でごさる!」
ぬわっ!!
突然、上からエリナが降って来て、吹き飛ばされてしまった。なによ!?
「まあ! どちら様で?」
「キャロリーヌどのの同士でごさる!」
うん、同類な。
水の中に沈みながら突っ込んだ。ってか、誰か助けてー!
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