第49話 援軍到着
オレは、海面に漂いながら未来的戦艦と戦闘機群を眺めていた。
「前世だったら第三次世界大戦だな」
カイナが率いているかわからんが、転移結界門から現れた戦闘機は、約二〇〇機。なんて名前か知らんけど、どれも同じ機種だった。
約二〇〇機が四つに分かれ、下半身不随な未来的戦艦を攻撃をしている。
数の多さにやられるんじゃないかと心配したが、指揮官が優秀なのか、パイロットが優秀なのか、未来的戦艦からの攻撃を上手く避けながらミサイルをぶち込んでいた。
まあ、未来的戦艦の装甲が厚いようで、致命傷は与えてないようだが、苛立たせているのはわかった。
「上手くやってはいるが決定打に欠けてんな」
ビームを射っているところからして、攻撃差や技術差があるのはしょうがねーか。
巨大化させたアネムも鬱陶しい蚊のごとく未来的戦艦に銃弾をぶち込んではいるが、やはり効いている様子はない。まったく、どんだけだよ。
「しかし、未来的戦艦のミサイルおかしくね?」
オレが来てからでも何百発と射っている。それが今も止まらない。無限に湧き出る仕様なのか?
「あ、射ち落とされた」
下半身不随な状態ながらもミサイルを五〇発近く一斉に発射させている。それだけ射ってれば当たるのが当然。今まで射ち落とされなかったのが奇跡だわな。
「……飛ばすのも上手ければ逃げるのも上手いこと……」
下手に避けないで、わざと当たるように仕向けて脱出してる感じだった。
それが作戦なのか、今度は故意に戦闘機がミサイルに当たっていった。どう言うことだ?
なんだろうと考えながら見てると、転移結界門からプリッシュ号改が現れた。
いや、遊覧船でなに来ちゃってんの! 的にしかならんでしょう! と思ったが、なにか動きが違った。なんや?
転移結界門を出たらすぐに降下し始め、海面ギリギリのところを飛んでいる。なんや?
と突然、真っ黒の戦艦が現れた。
唖然と見詰めていたらまた、真っ黒の戦艦が──三隻も。いや、駆逐艦っぽいのやら空母まで現れた。
「…………」
もう言葉も出てこねー。マジで第三次世界大戦が勃発したかのようである。
ファンタジーの海とは思えない海戦に、なんかもうどうでもよくなって来たぜ。
未来的戦艦はカイナに丸投げ。オレはタケルのところに向かいますか。
空飛ぶ結界をタケルの潜水艦に向けて飛ばした。
途中、照明弾が上がり、そちらを向けばクルーザーがこちらに向かって来るのが見えた。
「ベー様!」
見事な着水を決めて、ピッタリとオレの横につける万能メイド。生きていてなによりだ。
「おう。ご苦労さんな」
クルーザーに上がり、轟牙を脱いで無限鞄へと仕舞った。
「ご無事でなよりです」
「ワリーな、危ないことさせてよ」
オレの専属とは言え、メイドにさせることではなかったな。いや、いろいろさせちゃってるけどさ。
「謝罪など不要です。あたしは、ベー様のお役に立つためにいるんですから」
メンドクセーとは思うが、いてくれて助かってんだから無用な言葉はミタさんを傷つけるだけ。
「ありがと。助かったよ」
と、感謝しておこう。それがミタさんに報いることだからな。
「はい!」
なんとも嬉しそうな顔をする。嬉しさのツボがよーわからん。
「タケルのところに頼むわ」
「はい。
と、誰かに指示を出した。
え、誰に? と思ったが、そう言や、ミタさんの他にメイドが三人いたことを思い出した。
「ミタさんや他のメイドには危険手当をつけておいてくれ。なんならカイナーズホームで買い物でもイイぞ。三百万まで許すからよ」
命の値段が三百万では安いかも知れんが、一千万とか出しても使い道がないだろう。逆に三百万をどう使うか興味があるわ。
「はい。ありがたくいただきます」
そうしてくれるとこちらも心が軽くなるよ。オレの都合で命を賭けさせたんだからよ。
操縦はメイドさんに任せ、オレは船首へと立つ。
「タケルの潜水艦、動いている様子がねーな?」
つーか、潜水艦なのに姿を現している時点でただ事ではねーか。
「いえ、微かに動いてます。戦場から離脱しようとしてるのでしょう」
万能メイドさんが言うのならそうなのだろうが、それでもただ事ではないのは変わりはねー。あの潜水艦、一〇〇キロほどスピード出せるし。
「このクルーザーのスピードってどのくらい?」
「最大三五ノット、時速にしたら約五五キロです」
万能メイドはノットまでわかるんだ。ミタさん、生まれて来る時代と場所を間違えたんじゃね? 世が世なら歴史に名前が刻まれてんぞ。
「五五キロは遅いな。
赤毛のねーちゃんにも用意しなくちゃならんしよ。
まあ、それは後で。今はタケルだ。
二〇分くらいかけてやっとタケルの潜水艦に追いつき、その惨状がわかった。
「よく浮いてるもんだ」
左舷が完全になくなり、船体各所は穴だらけ。さすがアニメの産物。非常識なもんだわ……。
◆◆◆
確かにミタさんの言う通り、タケルの潜水艦は動いていた。
「機関は生きてんのか?」
潜水艦なので駆動音から生きてるかはわからないが、動いているってことは生きてるってことだろう。
クルーザーと潜水艦を結界で繋ぐ。
「ミタさん。中に入るぞ」
それで充分と、潜水艦に乗り込んだ。
前に搭乗員として登録したと言ってたので、構わず開いた穴から中へと入る──が、隔壁が閉じていて先に進めない。
しょうがないと一旦外に出て、艦橋へと向かった。
艦橋だった場所はビームで溶かされおり、中を覗くと誰もいなかった。
「でも、タケルたちに仕掛けた結界はこの下から感じるんだがな」
どう言うことだ?
「ベー様。もしかすると戦闘ブリッジにいるのではないのですか?」
戦闘ブリッジ? なんだいそれ?
「タケル様の船の構造はわかりませんが、造りからして通常航行時は見渡しのよい場所にあり、戦闘になれば装甲の厚い場所に移動させる場合があります」
このメイド、やっぱり生まれてくる時代間違えているだろう。ファンタジーの住人がなんで前世の記憶があるヤツより理解してんだよ! コールドスリープさせて千年後に目覚めさせたろか!
なんてこと思ったが、千年後の方々にご迷惑をかけないとも限らない。今この時に生まれたのなら今この時を生きてもらいましょう、だ。
「タケル! 開けれるんなら開けろ!」
と言って聞こえるかはわからんが、こんな未来的な構造、どうしてイイかわかんねーよ。
「ベー様。ドレミ様が先行したのだから中は大丈夫でしょう。それよりも、ここから離れたほうがよろしいかと思います。シーカイナーズの戦艦が一隻撃沈されました」
「死者は出てんのか?」
さすがに死ぬまで付き合う必要はねーぞ。
「一人も死んでません。カイナーズの兵士はカイナ様の御加護を得てますから」
まあ、カイナならやるか。実弾でサバゲーとかやっちゃうアホだから……。
「なるべくこの海域から抜けるべきです」
未来的戦艦とカイナーズの戦いを見る。
距離的に結構離れてはいるが、あのビームの威力ではまだ至近だ。せめて星の丸みに隠れなければ安心できないだろう。
「つーか、あのビーム、曲がったりしねーだろうな?」
ファンタジーの住人は余裕で曲げるから。
「わかりませんが、ミサイルは確実に届きます」
そうだな。大陸弾道弾とか持ってても不思議じゃなさそうだし。
「クルーザーで引っ張るか」
「それはさすがに無理があるのではありませんか?」
まあ、クルーザーは三〇メートルに対して潜水艦は一〇〇メートル近くある。押すならまだしも引っ張るのは無理だと思うのは無理からぬこと。
だが、我が結界術にかかれば問題ナッシング。
「大丈夫。潜水艦の前にクルーザーをつけてくれ」
小さくする手もあるが、今は隙を未来的戦艦に見られたくない。小さくしている間に狙われたら阻止する自信はねー。攻撃力を半減させたとは言え、あのビームは脅威すぎるからな。
「畏まりました。クルーザーを前に!」
船尾に移動し、クルーザーが潜水艦の前につくまで警戒する。
船はまだ激しく、ビームも乱舞している。ったく、どこまで無尽蔵なんだよ。
クルーザーが潜水艦の前につき、戦闘を見ながら結界で繋ぎ、クルーザーの両脇にスクリューを創り出す。
「オレは警戒するからクルーザーの操縦を任せる。島があったらその陰に隠れろ」
諸島と言うからには島はあるはずだ。せめてその陰に隠れないと安心できんわ。
「哨戒機より近くに島があると報告がありました。その島に向かいます」
「任せる」
クルーザーの船尾から潜水艦へと移動して警戒に当たった。
◆◆◆
徐々に距離が開き、波に隠れてきたので、潜望鏡のようなものを結界で創り、未来的戦艦とカイナーズを見ていた。
「カイナの指揮じゃねーな」
未来的戦艦の死角に入り、砲弾を浴びせる戦艦の動きが、カイナの性格にあってないように思えた。
アレは全体を見て指揮をするタイプではなく、最前線に立って、突貫! とか叫びながら突っ込むタイプだ。
そうなると、あの戦闘機にカイナが乗ってそうだ。
サプルのようにアホな動きはしてないが、人だったら確実に気絶している動きをしている。
「あいつもよくわからん拘りを持つよな。神に近いくらいの力を持ってんのによ」
体一つで未来的戦艦にも勝てるのに、前世の武器でしか戦わない。まあ、他のことには使うけどよ。
前世の戦闘機では勝てないとわかっているのに、それでも戦闘機での戦いを止めない。ただ、ミサイルは力を使って尽きないようにはしているようだが……。
「ん?」
なんか視界の下になにか映ったと、潜望鏡結界を下に向けると、小型の船が数十と未来的戦艦に向かっているのがわかった。
「え? 乗り込む気か!?」
そのまさかで乗り込みやがった。メチャクチャだな!
牽制のために戦闘機群は未来的戦艦の周りを飛ぶが、戦艦からの攻撃は止んだ。
ミサイルや砲弾が当たってもびっくともしないのに、浸入なんて可能なのか? と思って倍率を高めたら、いろはが見えた。
いや、そこまでしろとは言っ……たっぽい、か? ま、まあ、いろはなら問題なかろう。
その読み通り、いろはさんが換気口っぽいところからにゅるっと浸入。特殊部隊のような格好をしたヤツらを招き入れた。
未来的戦艦は、複数人で操っているようで、徐々にビームが止んでいく。
「詰んだな」
敵がどんなかは知らんが、操るものなら中のヤツらを封じたら動かない。もう勝利は覆らないだろうよ。
あとはカイナに任せ──と潜望鏡結界から目を離そうとした瞬間、未来的戦艦の艦橋が爆発。その中からなにかが発射された。
すわ、大陸弾道弾か!? と思ったが、なんか未来的飛行機っぽい。
空を旋回していた戦闘機や戦艦がミサイルを発射させるが、未来的飛行機の速度に追いつかない。白い雲を生み出しながら空の彼方へと消えていってしまった。
「……逃げるか……」
どんなものにも脱出機構をつけるのは基本だが、それを発動させるのは人の判断。一つだけしか発動しないってことがそれを証明している。自動だったら他にもあるはずだし、救命艇なり出るはずだしな。
「自分だけ助かるために逃げたら脅威でもねーが、なにかを守るためなら脅威でしかねーぜ」
考えるな、感じろ的に後者だろうな。
まあ、それならそれで構わんか。こちらもそのほうが助かるしよ。
空の彼方へと消えた未来的飛行機から未来的戦艦に目を戻した。
「……消えない、か……」
これで消えてくれたら万々歳なのだが、そう都合よくないか。
「今度は艦隊でやって来そうだな」
敵の能力は謎だが、恐らくエリナ系の能力だろう。しかも、無尽蔵なエネルギーを持つとか反則だわ。
「まあ、それもタケル次第か」
今度こそ潜望鏡的から目を離した。
「ベー様! 島が見えてきました!」
とのミタさんの声に、潜水艦からクルーザーへと移った。
船首に立ち、島を眺める。
結構、デカい島のようで、視界からはみ出しており、南国の諸島ってよりアジアの諸島って感じだった。
「海賊とかいそうな雰囲気だな」
切り立った崖や柱のような岩島などの陰から今にも海賊船が出て来そうだ。
まあ、出て来たら即沈めちゃいますけどね。
「とりあえず、潜水艦が入れそうな入り江か接岸できる場所を探そう」
落ち着ける場所なら文句は言わねーよ。
ミタさんに任せ、また潜水艦へと戻った。いつ中から出て来るかわからんし、腹減ってんなら料理を出してやりたいからな。
潜水艦の甲板にテーブルと椅子を出してマ○ダムタイムと洒落込んだ。
ん~。コーヒーうめ~。
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