第41話 ブルー島

「ベー様。買い物終わりました」


 穏やかな時間が終わりを告げた。


 意識を前に向けると、満面な笑みを浮かべるミタさんがいた。


「買い残しはねーかい?」


「はい。アイスも買いましたし、ジュースも買いました。一月は大丈夫です」


 どのくらい買い占めたかは知らんが、とても一月で消費できる量ではないと思うのだが、まあ、一月に一回なら来てもイイだろう。ここ、落ち着くしよ。


「猫と不気味ガールは?」


「アヤネ様ならお帰りになりました」


 と、ミレイさんが教えてくれた。


「それと、アヤネ様より伝言です。たまにはお姉様のところに遊びに来てくださいとのことです」


 うん。ぜってーいかねー。


 と、心の中で堅く決意しながらも了解と答えておく。


「で、猫は?」


「外の長椅子で寝てました」


 とは、ボン・キュー・ボンなメイド型ドレミさーん。改めて見ると動き難そうな体してんな。


 ……まあ、見る分にはイイけどよ……。


 外に出て猫を回収。ドレミに渡した。


「世界には変わった生き物がいるんだね」


 ばーさんタヌキがしみじみと呟いた。ってことは、ばーさんの種族って結構いんのか? まあ、カイナーズホームでばーさんタヌキ以外見たことないけどよ。


「じゃーな。また来るわ」


「あいよ。またお出で」


 あっさりと別れを告げてココノ屋をあとにした。


「プリッつあんは、まだ買い物してんのかい?」


「はい。今は食器選びしているそうです」


 まだ終わってないんかい。姉御はそこまで求めてないと思うぞ。


 と言ったところでプリッつあんが聞くわけないので好きにさせておこう。


「せっかくだし、戦略ニートの物を買うか」


 まだ拠点は決めてないが、用意しておくのもイイだろう。


「寝具売り場に案内してくれや」


「はい。こちらになります」


「つーか、こんだけ広いんだからカートかなんか移動用の乗り物はねーのかい?」


 歩くのが嫌とかじゃなくて、無駄に広いから無駄に時間がかかるんだよ。


 直通エレベーターからココノ屋までだって一五分くらいかかったんだぞ。一五分あれば軽く一キロは歩けるわ。


「カートですか? 少々お待ちくだはい」


 スマッグっぽいものを出してどこかへとかけた。


「ミレイです。六三区画の一一番にカートを二台出すことは可能でしょうか? ……はい。そうです。運搬用ですか? 少しお待ちください」


 問題か?


「ベー様。申し訳ございません。ただ今ご用意できるのは運搬用のカートのみで、お客様を乗せるカートとなると少々お時間をいただきたいそうです」


「運搬用で構わんよ」


 時間が短縮できるのならなんでもイイさ。そこに拘りはねー。


 しばらくして軽トラサイズのカートが二台、やって来た。


「こう言うカートもあるんだな」


 荷台と床の差が五センチもなく、台車の積み降ろしがしやすい用な造りになっていた。


 荷台に乗り込み、中を見回した。改造されてる感じだな。


「運搬用で椅子がないので、しっかりとつかまっててください」


 ミレイさんは、助手席に座り、後ろを向いて注意して来た。


 ちなみに、この運搬用カートにはオレとミタさん。もう一つのカートにはドレミと猫が乗り込みました。


 まあ、一台で間に合うと言えば間に合いそうだが、せっかく用意してもらったのだから、ありがたく利用させてもらいましょうだ。


「では、発進します」


 スムーズに運搬用カートが発進した。


 多分、時速五キロ。やや早歩きくらいな速度だが、移動用としてはこんなものだし、客を乗せていてはこれ以上出せないだろうよ。


 のんびり外を眺めていると、カイナーズホームの制服ではない服を着た魔族の集団が遠くに見えた。


「あれは、軍の方ですね」


 と、ミタさんが教えてくれた。軍?


「軍のお給料はよいので休暇になるとよく来るんです」


 その金はどこから出てるのか気になるが、カイナーズホームに来るくらいには給料がイイのは理解できた。


「あんだけいてカイナーズホームを維持できんのか?」


 海軍や魔大陸にいた基地だけでも一万人くらいいんだろうが。


「お給料がよいと言っても月に一回来られるかどうかですし、家庭のある方はほとんどを仕送りしますのでそうは来られないんです」


「……カイナは王に向かんか……」


 あれだけの力があればやりようはいくらでもあるだろうに、まったく活かし切れてねー。魔大陸に街の一つでも造って、農業と工業をやれば五万人くらいならやっていけんだろうによ。


「そうなると、戦略ニートは魔大陸かな~?」


 最初、ヤオヨロズ国が襲われないように戦略ニートを配置しようかと考えたんだが、下手に置いて人外どもに警戒されるのも問題だと気がついた。


 まあ、カイナがいる時点でどうかと思うが、カイナは戦うだけ無駄な存在。でも、戦略ニートは勝てるかも、と思える存在だ。下手に煽るのは悪手だろう。


 だからと言って魔大陸も問題はある。戦略ニートは魔王より上の存在だが、他にいる魔王がちょっかいかけてこないとも限らない。基本、魔大陸の魔王は脳筋らしいからよ。


「まあ、なるようになるか」


 どっちにしろ魔大陸に街は必要だし、これ以上、ヤオヨロズ国の人口が増えても維持できない。やるしかないのならやれ、である。


 寝具売り場まで、そんなことを考えた。


  ◆◆◆


 お、このベッド気持ちイイな。オレも買っちゃおうかな~?


 と、キングサイズのベッドの上をゴロゴロ。あーイイ感じぃ~。


「うん。これ、五つ買うわ」


 一つは新しくできる飛空船に。一つ……ってか、残りは予備にしておこう。その内秘密基地とかできんだろう。人生に秘密基地は必須だからな!


「あと、そこの椅子とクッションもな」


 感じるままに買い物を続けて一〇分もしないで終~了~。お疲れしやした!


「こんなときの無限鞄はありがたいぜ」


 そして、プリッつあんの能力マジ優秀。買い物に欲しい能力だねっ!


「あ、食料品も買っておくか」


 米とか缶詰めとか、非常用のがもうないし、飢饉かかって来いやー! の精神が錆びついている。ここらで引き締めておかんといざってときに対応できんからな。


「この棚の米、買い占めても大丈夫かい?」


 ミレイさんに尋ねる。


「はい。問題ありません。それどころか買い占めしてもらえると助かります。食料品は消費期限がありますので」


 アホか! 出すんなら腐らないようにしろよ。もったいねーだろうが!


「ま、まあ、買い占めてイイのなら買い占めさせてもらうよ」


 無限鞄に仕舞っておけば消費期限とか関係ないしな。


 とりあえず、近場のから精算してもらい、無限鞄に放り込んでいく。


 しかし、米が多いな。これじゃ東の大陸にいく理由がなくなるぞ。


「米はタケルに回すか」


 うちだと米の消費は少ないし、魔族も米よりパンを主食としてるからな。


 しかし、何度でも思うが、ここは、誰に向けて商売してんだろうな? フルー○ェとか、前世の、日本人の記憶がなければ食い物かもわからんだろう。つーか、オレ、フ○ーチェ食ったことねーや。どんな味すんだ?


「ミタさん、これ食ったことあるか?」


 フルーチ○イチゴ味を見せる。


「いえ、ありません。美味しいんですか?」


 おや。食べたことないの。こう言うの好きそうな感じなのに。


「ミレイさん、ここで試食してもイイかい?」


 ちょっと食いたくなった。


「はい。では、あちらの休憩コーナーでどうぞ。必要なものや調理はこちらで行いますのでお買い物を続けてください」


 ハイ、すべてお任せします。美味しく作ってね!


 買い物を続けること三〇分くらい。できましたとのミレイさんの言葉に休憩コーナーにいくと、なんかフ○ーチェ祭りになっていた。


「……多いだろう……」


 今日は食いしん坊は連れて来てねーぞ。


「各種用意してみました」


 なんか割烹着を纏った緑鬼のおばあちゃんがいた。


 ……鬼だけど、肝っ玉かーちゃん度がハンパない……。


「食品部でフルーチ○を作らせたら右に出る者はいないと言われるタガさんです」


 それにどう返したらイイんだろう。上手い言葉が出て来ません。


「あ、うん。ありがとな。ミタさん。試食してみようぜ」


 オレの舌よりミタさんの舌のほうが信用できるからな。


「はい! お任せください!」


 グレープ色のフル○チェに手を伸ばし、一口食ってみる。


「……旨いな……」


 フルー○ェ、ナメてました。ごめんなさい。


「はい。こんな美味しいものがあったんですね……」


 今にも泣きそうなミタさん。それはようござんした。


「ベー様。わたしも買ってよいでしょうか?」


「好きなだけ買いな」


 オヤツに出してもらえると嬉しいです。


 二口食って次へのと手を伸ばし、いろんなフ○ーチェを楽しんだ。うん、うめ~!


  ◆◆◆


「あー! わたしを除け者にしてなにしてるのよ!」


 と、プリッつあんがやって来た。買い物は終了で?


「なに食べてるの?」


「フ○ーチェだ」


 食うてみなと、オレンジ味のフルー○ェを差し出した。


「どれどれ」


 マイスプーンを取り出し、フルーチ○を掬ってパクリ。


「……美味しいじゃない……」


 で、プリッつあんもフル○チェ祭りに参加。五皿も完食しました。


 オレも全種完食……はしなかったけど、全種は食べられた。うん。余は満足じゃ。


「イイ喫茶店はあったか?」


「ええ。ネラフィラの好みそうなものを選んで来たわ」


 あんた、オレの知らないところでどんな付き合いしてんのよ? とか微塵も思いません。オレにこのメルヘンを理解することは無理だもの。


「これ、ネラフィラの店で出してもらおう」


 牛乳入れて混ぜるだけ、のを喫茶店に出してイイのか? 喫茶店に出すものなのか? まあ、あったら頼むけどさ。


 メニューは姉御が決めること。好きにしろ、だ。


「ごっつぉーさん。旨かったよ」


 作ってくれた鬼の肝っ玉かーちゃんにお礼を言った。


「はい。また補充しておきますね」


 それはありがたいけど、消費期限を考えて出してね。うちは廃棄処分場じゃないんだからさ……。


 買う物は買ったし、食うものは食ったので、カイナーズホームを後にした。


 直通エレベーターから出ると、三兄弟が玄関ホールでかたまっていた。どうした?


「あ、あの、マーローは?」


 マーロー? なんだそりゃ? 食い物か?


「マーロー様はこちらです」


 と、メイド型ドレミが抱えていた猫を三兄弟に見せた。


 あ、ああ。猫のことか。ってか、すっかり忘れてたわ。


「そう言うところは猫だよな」


 これと言って羨ましくはないが、よくのんきに寝てられるよな? お前の野性が心配でならんよ。


 まあ、そのうち野性を目覚めさせてやるかと思いながら、館を出ると、作業着姿の魔族が何十人といた。


「カイナーズホームの第八工事部の方々です」


 あ、そう言や、排水設備とかなんとか言ってたっけ。ってか、なんか大工事になりそうだな。


「そうかい。それはご苦労さん。扉は常に開いてるから好きなようにやってくれや」


 細かいことはミタさんにお任せと、転移結界門を潜った。


「姉御はどこだ?」


 この箱庭は小さいとは言え、軽く十万人は暮らせる広さはある。そこから一人を捜すのは苦労でしかない。が、オレの考えるな、感じろは高性能。姉御はあっちだと教えてくれた。


 今さらだが、ここは、バイブラストの地下にあるフュワール・レワロで見つけた箱庭の一つで、それを空飛ぶクジラの背につけたのだ。


 まあ、空飛ぶクジラと箱庭を合わせてブルーヴィと呼んではいたが、それだとややっこしいし、オレも間違えそうなので、空飛ぶクジラがブルーヴィとし、箱庭はブルー島とうにしようと思う。どうでっしゃろ?


「いいんじゃない」


 とのメルヘンさんの了承を得たので今後はそうします。ミタさん。周知のほう、よろしこです。


「はい。お任せください」


 万能メイド万歳だね。


「あと、ブルーヴィの頭を北にして、地図も作って、案内板立てておいてくれ。初めて来たヤツが迷わないようによ」


 ってか、まだ道もないし、警備も兼ねて誰か巡回させてちょうだい。箱庭内は一切の転移術が発動しないからよ。


「わかりました。早急に対処します」


 うん。よろしこ。


 この箱庭──ブルー島とう内に生息している植物は少なく、短い雑草しか生えてないが、人が踏みしめた跡がわかる程度には生えていた。


 なだらかな山とは言え、まっすぐ下りれるわけもなく、斜めに下りていくように雑草が踏まれていた。


 土魔法で道か階段を創りながら下りるか? とは考えたが、オレが下手に手を出すと整備する者が困るだろうと思い、空飛ぶ結界を創り出して下りることにした。


「姉御、結構下まで下りてんな」


 高い木は生ってはいるが、ところどころ生っているだけなので、視界は良好だ。


「あ、家が建ってるよ」


 プリッつあんが強制的にオレの頭を動かした。ちょっと、やるときは声かけなさいよ。首千切れるわ!


「コテージか?」


「ここに住む者の仮住まいです」


 あんなものどうやって持ち込んだんだ? それとも組み立てたのか?


「たぶん、クルフ族の方が建てたのでしょう。クルフ族も多種多様な技術を持つ種族ですから」


 まあ、ドワーフもすべてが鍛冶職人ってわけじゃねーしな。そんなもんだろうよ。


「海が珍しいのか、大体の者は海辺に近いところに住んでいるようです。ネラフィラ様もそこでしょう」


 まあ、一人が好きって性格じゃないしな、姉御は。


「どうやら南側を選んだようですね」


 足跡が南側に続いており、ミタさんがそう判断した。


 ブルー島の南側は浜辺が広がっていて、リゾートにでもしようと思ったのか、人が暮らしやすい地形となっていた。


「今度、クルーザーでも買ってくるか」


 気温は南の島と同じで、海の透明度も高い。冬はここでのんびりするのもイイかもな。


「あ、ネラフィラいたよ」


 だから強制的に頭を動かすのは止めてくださいって……。


  ◆◆◆


 さあ、忙しくなるぞ! ってことにもならず、喫茶店で茶をしばいてた。


 しばくってなんだろう? とか、考えながら姉御が淹れた紅茶を飲んでいた。


 あの後、クレイン湖へといこうとしたが、丸投げしたオレが行ったところでやることもなし。それどころか邪魔にされるだけ。ってのを、遠回しにミタさんに言われました。


 そのミタさんは、喫茶店の厨房でフ○ーチェを作ってます。


 ……いつ、指示とか出してんだろう……?


 ミタさんを眺めながら疑問を考えてたらレディ・カレットが話しかけて来た。せっかく影を薄くしてんだから邪魔しないで。


「カイナーズホームで服を買える?」


 ってなことを尋ねて来た。


「買えるんじゃねーか。オレは買ったことないが」


 服はトアラが作ってくれるし、今着ている服は六着ある。気に入っているから他を欲しいとも思わない。お洒落な人間ではないしな。


「では、これをどうぞ」


 と、いつの間にかミタさんが現れ、雑誌をいくつか出してレディ・カレットたちに渡した。


「なにこれー!?」


 驚くレディ・カレット。でも、それほど衝撃は見て取れなかった。ってまあ、それ以上の見てるから当然と言えば当然か。


「これに写されたものはカイナーズホームにあるもので、お取り寄せ可能の商品です。今日中なら明日にはお渡しできますよ」


 なんでもやってる店だこと。


「あんちゃん、買ってもイイ? あたし、下着欲しいの」


 そんなものを欲しがる年齢になったか。でも、それを言っちゃうところがまだまだ子どもだな。他のお嬢さん方が顔を赤らめてるぞ。


「好きなだけ買え」


 服ならうん百億も使わんだろうしな。あ、でも、使うようなら止めてよ! とミタさんに目で合図する。頼むよ。


 オレの言いたいことをちゃんと理解してくれ、にっこり笑って頷いた。


 女の買い物は男にとって災害と同じ。いや、それ以上だ。席から立ち上がり、カウンター席に向かった。


「賑やかでいいわね」


 キャッキャッと騒ぐお嬢さん方を慈しむような顔で見ていた。


「そう言や、プリッつあんは?」


 こんなときこそプリッつあんが出て来るんだがな。


「プリッシュならわたしの寝室を仕上げてるわ」


 随分と拘るメルヘンだこと。もう、コーリンのところいけよ。なんでオレのところにいるんだよ。引っ越せよ。


「終わったよ~」


 と、二階からプリッつあんが下りて来て、オレの頭にパ○ルダーオンした。


「ありがとう。なにか飲む?」


「カクテルお願い」


 ここは喫茶店だってーの。あるか!


「これでいいかしら?」


 と、冷蔵庫から缶チューハイを出した。なんであるの!?


「それでいいや。注いで」


 態度デカいメルヘンだこと。なに様だよ?


 カクテルグラスに缶チューハイを注ぐ姉御。それを傾けながら飲むメルヘン。その光景に突っ込む者はなし。


「ところで、あれなーに?」


 お嬢さん方に目を向けるプリッつあん。混ざって来たら?


「そんな野暮なことしないわよ」


 なにが野暮なのかまったく知りたくないのでサラリと流した。


 と、お腹グ~。腹減った~。


「あ、けんちん汁、届けてもらうんだった」


 いつ誰が、なんて言わなかった。嫁さんも訊いて来なかったから軽く流しちまったかも。どーすっぺ?


「けんちん汁でしたら先ほど届けられました」


 ほらと、寸胴鍋を掲げて見せるミタさん。いつの間に……?


「このブルー島はベー様の家。快適に過ごせるようにするのがメイドの勤めです」


 あ、うん、そうですか。それはご苦労さまです。お陰さまで快適に過ごさせてもらってますです、ハイ。


「焼きおにぎりと焼き魚もどうぞ」


 皿に盛られた焼きおにぎりに白身魚の塩焼きが出て来た。うん、和風~。


 喫茶店で食うには違和感しかないが、もう無国籍風異世界。突っ込むだけ無駄である。


「あ、あんちゃん! なに食べてるの?」


 キャッキャッしてたサプルが横に現れた。


「東大陸の料理を食ってんだよ」


 カイナが言っていた。和食のことを訊かれたら東大陸の食いもんだって言っておけば丸く収まるんだってよ。意味わからんわ。


「へ~そうなんだ。美味しそうだね。皆に出してもイイ?」


「まあ、そりゃ構わんが、お嬢さん方の口に合うか? 田舎料理だぞ」


 わたくし、おフランス料理しか食べたことありませんの。とか言いそうなお嬢さんばかり。無理矢理はいかんぞ。


「ベーのところで美味しくないのなんてないし、サプルが美味しそうって言うなら絶対美味しいに決まってるわ! 皆食べるでしょう?」


 レディ・カレットの問いに、お嬢さん方は元気に食べたいですと声を揃えた。


 ……さすが、公爵どのの血筋にお友達って言ったところか。まったく、お転婆なお嬢さん方だよ……。


「ミタさん、ある?」


「はい。いっぱいありますよ。たくさん食べてください」


 それはなにより。二杯は食うって決めてるからな!


 いつの間にかメイドさんがぞろぞろと現れ、お嬢さん方に配膳を始めた。


 うちのメイドに隙はなし、だね。

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