第70話 釣りがしたい
スカイスライム大会が終わったその日の夜、僕はゼロとアウラと一緒に別のことを祝っていた。
レベルが6に上がったのだ。
スカイスライム大会で忙しかったけれど、日課にしている修行空間での魔物討伐をサボるのが嫌だったのでゴブリン退治をしていたら、レベルが上がったらしい。
いや、本当に長かった。
たった6、されど6だ。
なにしろ、レベル5になったときの余剰経験値が約6700ポイントだったのに対し、今回の余剰経験値は1万ポイントを上回る約11322ポイント。つまり、12580ポイントも稼いだことになる。ゴブリン換算で2516匹分だ。
2516匹って、1回の討伐で約50匹くらい倒していたから、それを50回繰り返さないといけない計算になる。一日三回討伐に行き17日だ。いや、実際は三階層でビッグトードも倒していたのでゴブリンを倒した数は1500匹程度でしかないんだが。
え? ビッグトードを倒しに行く理由?
ジャイアントクラブを倒すために決まっている。
でも、何故かジャイアントクラブは中々出てこない。
どうしてかとゼロに尋ねたところ、ビッグトードが発情期の時は、ジャイアントトードの気性が荒くなって危険なためジャイアントクラブは何者かの気配を感じると、それが誰なのかも確認せずに池の底に潜って滅多に姿を現さないんだそうだ。最初に訪れたときにジャイアントクラブが現れたのは、我慢できないくらいお腹が空いていたのだろう。
ビッグトードの肉はとりあえず運べる分は倉庫に保存しているが、大半は池の周りに放置した。気付いたら無くなっていたので、おそらくは僕たちが帰った後にジャイアントクラブが食べたと思われる。
……それ、もっと早く教えてほしかった。
すでにジャイアントクラブ欲しさにビッグトードを100匹くらい死に物狂いで倒した後だったので、その分だけジャイアントクラブの腹を満たしていることになる。
腹をすかせたジャイアントクラブが池の外から出てくることはないだろう
まぁ、そろそろビッグトードの発情期も完全に終わるので、池から出てくるのも時間の問題らしいのだが。
とにかく、祝っていた。
食事は肉料理だ。
「この唐揚げ、美味しいけど、もしかして、これ、鶏じゃないよな?」
ゼロが育てている鶏は卵を生み、ヒヨコも生まれた。
もしかして、そのヒヨコが育って鶏になり、食卓に並んだのではないかと思った。
別に、飼っている鶏が食卓に並ぶことに抵抗はない。
一応卵目的で飼っているが、同時に食肉目的でもある。
ペットではないし、名前もつけていない。
ヒヨコは柔らかくてもふもふしてて、くちばしでつつかれても全然痛くなくて可愛かったけれど――うん、大丈夫、これが鶏の肉だったとしても僕は泣いたりしない。
「これはビッグトードですね。まだヒヨコが成鳥になるには時間がかかります」
「そうか……カエル肉か」
油はカエルの脂肪部分を集めて用意したらしい。
手間がかかっている。
うん、大丈夫、忌避感はない。
あの巨大カエルの見た目の悪さよりも、味が勝っている。
美味しい。
美味しいは正義だ。
アウラも気にせず食べている。
食事の後は、アウラとゲームだ。
一日一時間。
「セージ、これやりたい!」
珍しくアウラが興味を示したのは、釣りのゲームだった。
中々渋い選択をしてくるなと感心する。
本格的な釣りゲームではなく、結構シンプルなゲームで、見た目はRPGとタイミングゲーム、そして運ゲーという感じがする。
ただ、一番困るのは、待っている時間が長い。
ゲームは一日一時間だっていうのに、そのうち半分くらいは魚がかかるまで待っている時間だったような気がする。
正直、やり足りない。
だが、ゲームを一日一時間と決めたのは他ならぬ僕自身だ。
無限に時間があるからこそ、メリハリは大事なのだ。
ルールを破るのは違う。
でも、もっと遊びたい。
そうだ、実際に釣りをしたらいいんだ。
3階層の池で?
いやいや、あんな巨大なカエルを釣るのは御免だ。
ジャイアントクラブだって、ハサミで糸を切られてしまう。
なら、一階層か。
あそこなら魚も多い。
でも、僕は釣りの経験がほとんどない。
「アウラは釣りしたことある?」
「うん、あるよ」
おぉ、意外だ。
なるほど、釣りの経験があるから、釣りのゲームをしたのか。
「一階層でね、川に蔦を入れて魚を捕まえたの。でも、食べる必要ないからそのまま川に戻したよ」
それは釣りじゃないな。
糸を蔦と思えば釣りと言えなくもないが、どちらかといえば摑み取りだ。
そもそも、釣り竿もないんだよな。
あ、でもスカイスライム作りの竹ひご作りのために取った竹から細い物を選んで、あとはタコ糸を使えば、それらしいものができるのではないだろうか?
餌になりそうなカエルの肉は山ほどある。ていうか、実際に持って帰ってきた十匹ほどのカエル肉だけで山になっている。
ただ、材料があっても素人が簡単に釣り竿を作れるだろうか? と思ってゼロに相談したら、
「それでしたら、私が作ります」
ゼロが釣竿を作ってくれることになった。
僕にそこまで手を貸してくれてもいいのか? と思ったが、僕の成長に大きな影響を及ぼすこと以外なら手伝うのは問題ないらしい。
手伝うことができないのであれば、食事の準備もできないし、魔法の講師もできない、弓矢も作ってもらえなかったよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます