第181話 魔石あり〼
零階層に戻った僕は、スローディッシュ家が保有する周辺国を含む地図を持って戻り、ハイエルフに見て貰った。
彼女たちはその地図を見て考える。
「知っている地図と違うところもありますが、似ていますね」
「私たちの時代の地図も正確ってわけじゃなかったから」
「え? 正確じゃないの? リアンナちゃんがかなり丁寧に測量してた気がするけど」
「うん、森の周辺は測量して書いたけど、それ以外の場所は人間の国から貰った地図を書き写したものだし」
ハイエルフたちがワイワイと話した結果、どうやらハイエルフたちの住んでいた森というのが、モリヤク男爵領に接している森であることが判明した。
なんで教えてくれなかったんだ?
と思ったら、僕の住んでいる国の王城の地下に魔王城に続く地底迷宮があることは神から聞いたが、ハイエルフ達には話していなかったか。
フォースが宴会に来たときとか話していなかったかな?
何故かあの時のことを思い出そうとすると、頭に
やっぱりあの時お酒を飲んでしまったのかもしれない。
まぁ、ハイエルフの住んでいた森が近くの森だったとしても、別に大した問題じゃないんだけどね。
「ここがセージ様が所有する領地ですか?」
「僕のじゃなくて、僕の父さんのだけどね。この辺りも知ってるの?」
「はい。この山に鉱山を作ろうとしたことがあるんです。でも、その前に天罰食らっちゃって計画は頓挫したんですけどね」
「へぇ、珍しい鉱石でもあったの?」
「はい。この辺りの地下深くに魔石が埋まっているという調査結果が出たので」
「魔石っ!?」
あれ? この国で魔石がある鉱山って一カ所だけじゃなかったっけ?
うちの領地で採れるの?
魔石が?
いやいや、既に採掘されている可能性も高い。
高いが……もしかしたら、まだ残ってるかも。
魔石の採掘の場所はリアーナが覚えていた。
というのも、リアーナが地質調査ができる魔法を使って調査をしたらし。
遥か昔の出来事なのによく覚えているなと思ったけれど、ハイエルフは永遠の寿命があるため人より記憶力が優れているらしい。
山の地図を持ってくると、リアーナは少し困った顔をする。
「私が知っている地形と少し違いますね。この山、一度噴火したんじゃないでしょうか?」
「そういえば、千年以上前に噴火したことがあるって聞いたことがある」
「それが原因ですね。でも、一致しているところもあるので……えっと、私が採掘しやすいと思っていたのが、こことここですね」
二箇所の採掘ポイントを地図に直接書いていく。
山は国境として使われているが、険しく越えるのが厳しいため、街道も登山道も存在しない。
「そういえば、森のダンジョンでも魔石は採れましたよね」
思い出したように、そう言ったのはリーゼロッテだった。
ダンジョン?
「森のこの辺りにダンジョンがあるんです。地下十階層のダンジョンですね。魔剣もたまに見つかるんです」
「へぇ、そうなんだ。エルフと友好関係を築けたら使わせてもらえるかも」
そうしたら、ラナ姉さん喜ぶだろうな。
僕がダンジョンに行ったって言ったら羨ましいって言ってたし。
さらに、あまり情報のない森の西側についても教えてもらった。
でも、魔石の場所って教えてもいいのかな?
ただでさえ面倒なことになってるのに、これ以上面倒なことになったら困る。
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「魔石の鉱山が見つかったら、いろいろと楽になるね」
ロジェ父さんからの返事は僕が思っている答えとは逆だった。
「なんで? 今の状態でも忙しいのに鉱山まで手が回せるの?」
「セージ、魔石の鉱山は国営事業だよ? 仮に北の山に鉱山が見つかったら、その周辺はスローディッシュ領から国の直轄地になって、鉱山町が築かれる。そうなったら、鉱山から王都までの街道の整備もしっかり行われるだろうからね。でも、流石に北の山に魔石があるとは思えないけど」
「それが、そうでもないんだ。実は――」
と僕は、蛇毒の治療法と同じように、旅のエルフから魔石があるかもしれない場所について教えてもらったことを話した。
その頃は魔石が貴重だって知らなかったから鉱山の重要性を理解していなくて、すっかり忘れていたということにした。
僕が話すと、ロジェ父さんはエイラ母さんを呼び、三人で話し合うことになった。
「ダウジングの魔法……そんな魔法があるなんて知らないけれど、蛇毒の治療法を教えてくれたエルフというのなら、そんな魔法を知っていてもおかしくないわね」
エイラ母さんは地図を見て言った。
「ロジェは一度見に行ったのよね? どうだった?」
「見に行ったけれど、あくまで北の遊牧民族たちが攻め込んでくる防備の穴がないかどうか調べるためで、鉱石については調べてないね」
「普通はそうよね。一度調査をしてみるのもいいと思うわ。私も一緒に――」
「エイラはダメだ。隣の村とは違う。この辺りは魔物もまだ残っているし、道も整備されていない。転んでお腹の子供に何かあったら大変じゃないか」
「心配性ね。でも、それなら今回は甘えさせてもらうわ」
本当にラブラブのカップルだな。
まぁ、僕も報告の義務は終わったし、後は結果を待つか。
「じゃあ、代わりにセージを連れていって。あと、セージだけだったら文句を言うだろうから、ラナもね」
「え!?」
魔物もまだ残って、道の険しい場所に子供の僕を連れて行くって、そんなのあり?
整備されていないって言っても急こう配じゃないから滑落する危険はないし、魔物が出てもロジェ父さんがなんとかしてくれる?
回復魔法が使える人間が必要?
どうせだから僕の部下の騎士見習いも連れて行って、連携くらいできるようにしておけ?
なんか、いろいろと理由を付けられた。
断りたいんだが。
「引き受けてくれるのなら、特別に面白い魔法を教えてあげるわ」
「面白い魔法?」
「ええ。セージ、魔法好きでしょ?」
魔法は確かに好きだ。
ハイエルフからいろいろと教えてもらってるから、わざわざエイラ母さんに教わる必要はないんだけど、でも、このエイラ母さんが面白いというほどの魔法。
……気になる。
これはズルい。
「わかった。頑張る」
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