第222話 キノコ狩り
ラナ姉さんに呼び出された。
キノコ狩りのお誘いだった。
ラナ姉さんからの誘いにしてはまともな内容だ。
キノコは干して出汁に使ってるが、米が入手できるようになったらキノコご飯も作りたい。
僕はラナ姉さんの誘いを受け、コパンダも連れて一緒に森へと向かった。
道中、どんなキノコが生えているのか尋ねる。
ラナ姉さんが今日採取したいと教えてくれたキノコはほとんど聞いたことがない――おそらく地球にはないキノコの名前ばかりだった。
ただ一つ、ラナ姉さんが本命だというキノコは知っていた。
「トリュフ? え? 近くの森にあるのっ!?」
トリュフといえば、キャビア、フォアグラと並ぶ三大珍味じゃないか。
僕は食べたことがないが、テレビなどで芸能人が美味しい美味しいと言って食べていた。
「あるわよ。セージ、そんなことも知らないの?」
「知らない。むしろ、なんでラナ姉さんが知ってるんだよ」
「そりゃ、森に生えてるキノコは全部覚えてるわよ」
そういえば、ラナ姉さんはこう見えて森やその周辺に生えてる植物はだいたい覚えてるんだった。
どうやらキノコもその守備範囲内らしい。
「でも、トリュフって豚を使って探すんじゃなかったっけ? 豚はトリュフの匂いが好きだから見つけるのが得意だって聞いたよ」
「ラインハルトがいるから問題ないわ!」
「コパンダへの信頼が厚いね。一緒に探したことあるの?」
「ないわよ。今回が初めてだもの。でも、誰でも最初は初めてだから問題ないわ」
誰でも最初は初めてっていうのは、プロなら初めてのことでも成功させるという意味の言葉ではない。
僕も本気になって探すか。
「ラナ姉さん、これなんてキノコ?」
「どれ? それはスカルシュルーブよ。毒キノコね」
「この緑のキノコは?」
「グリーンブルーム。食べられるわ。採っておきなさい」
「この美味しそうなのは? 赤いからやっぱり毒キノコ?」
「ラズベリーウィングね。食べられるけど美味しそうなのは見た目だけで味はいまいちだから採らなくていいわ」
凄いな。
聞いたことのない名前のキノコばかりだけど、ちゃんと全部覚えているようだ。
「ラナ姉さん、凄いね」
「このくらい当然よ。覚えておかないと、森でサバイバルになったとき苦労するわよ?」
「森でサバイバルしなくても済むように頑張るよ」
とりあえず、グリーンブルームはいっぱいあったから採っておくか。
と思っていると。
「ラ、ラナ姉さん! あれ見て!」
「トリュフがあったの? ……ってあぁ、パインマッシュね。食べられるけど美味しくないわよ。人気もないし」
「美味しくないはずがない!」
僕は思わずそう叫んだ。
だって、この見た目、そしてなによりこの香り。
松茸だもの。
前に森に来たとき、松の木があったから、もしかしたら松茸があるかもしれないなって思っていたけれど、本当にあったなんて。
回収回収っと。
何にしようかな?
土瓶蒸し? いや、網で焼いて醤油を垂らして食べるっていうのもいいな。
そうだ、菌を回収して、修行空間で増やせないだろうか?
松茸の人工栽培は難しいって聞いたことがあるけれど、森の専門家のハイエルフたち、植物の専門家のアウラ、そして万能執事のゼロがいるんだ。なんとかなるかもしれない。
そういえば、松茸は日本では貴重だけど、西洋の方ではあまり喜ばれる食材じゃないって聞いたことがあるな。
だから、ラナ姉さんも人気がないって言ったんだろう。
ソーカなら、松茸のすばらしさをしっているかもしれない。
お米が手に入ったら、松茸ご飯のおにぎりでも作って、前に貰ったおにぎりのお礼をしよう。
「セージ、マジックポーチ持ってきてないんだから、そろそろ本命に集中しなさい」
「集中してるよ。松茸……じゃなくて、パインマッシュをもっと見つけないと」
「トリュフよ! 私たちが捜してるのはトリュフ!」
あぁ、そうだった。
本命は大事だよね。
「コパンダ、トリュフを探して」
「メー?」
どうやって? という感じで首をかしげてる。
そして、とりあえず探そうという感じで歩き始めたが、自分でもどこを目指して歩いているかわかっていない様子だ。
だんだんと森の奥へと向かっていく。
歩き続けること十分。
僕は今更ながら、ある疑問をぶつけた。
「……ラナ姉さん。コパンダの奴、いつトリュフの匂いを覚えたの?」
豚がトリュフを見つけられるのは、トリュフの匂いが豚のフェロモンの香りに似ているからだと言われている。
でも、犬や他の動物に捜させるとなると、匂いを覚えさせないといけない。
「知らないわよ? ラインハルトはトリュフなんて食べたことないんだし」
「まぁ、キノコを食べるかどうかもわからないよね」
僕は無理難題を押し付けられたコパンダに同情し、頭を撫でる。
こりゃ、トリュフは諦めたほうがいいかな?
「セージ、止まって」
「トリュフ見つかったの?」
「しっ!」
え? ラナ姉さんがいつになく真剣な表情で、僕に黙るように言う。
そして、囁いた。
「足音が聞こえた。誰かいるわ」
「誰って、ゴブリン?」
「違う。もっと大きいわ」
もっと大きい?
そんな魔物、この森にいただろうか?
と思っていたら、そこに現れたのはオークだった。
―――――――――――――――――
昨日見たド〇ターストーンでトリュフの話してて
しまった、話被った! 別の日にしようか?
と考えながら、結局投稿しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます