第47話 責任、睡眠
「我々は傭兵だ。
任務というもの対する考え方も、当然正規軍とは異なる。
聞こう。
諸君らは、このまま帰ることを選択するか。
それとも、装備もないまま命がけで戦い続けるか。
だが、依頼内容はドラッグの強奪だ。誇りを賭けべき崇高さのかけらもない目的だ。
さらに言えば、依頼主は我々との契約にも反している。
なので、成功報酬は請求できる」
部下たちが、一瞬どよめいた。
「考えても見ろ。
敵にその意志があれば、我々の殲滅は即時に可能だ。
今、一掃射されたら、それで我々は終わる。
だが、彼らは我々の前に上陸した連中も含めて、誰も殺していない。
彼らの砂浜でのクロールは見せられた幻覚かもしれないが、だとすると殺さない幻覚を見せる意味がわからない。
ブラフなら、惨たらしく殺す幻覚を見せるはずだ。
だから、殺さなかったのは現実だ。
そして、未だに我々は撃たれていない。
かと言って遊びでないのは、我々を放り投げた高さと勢いからわかる。繰り替えずが、私を含め投げられた4人、頭から落とされていたら確実に死んでいた。
それは、我々が飛ばされたのを見た者は納得できる事実だ」
部下たちの顔に理解が浮かぶ。
部隊長は、ダメ押しの話を続ける。
「だが、これらの行動は、依頼主の言う何百万ドルものドラッグを強奪した組織のやることだろうか?
また、敵勢力はヤク中の意思を失った半病人たちと依頼時に聞かされているが、その情報は正しかっただろうか?
私が何百万ドルもの現物を守る立場なら、殺しを厭いはしない。手を抜けば殺されるのはこちらだからな。
サメを見せるより、お互いを敵に見せあって同士討ちをさせる。生き残りに対しても、軍用犬でおびき寄せるまでは一緒でも、その後は強武装したヤク中の意思を失った半病人たちに掃射させる。
これなら、確実に全滅されられる。それこそ楽な作戦だ。
だが、敵はその手さえも取らなかった」
そうだ。
すべてがちぐはぐなのだ。
戦場での戦果は
おそらくは殺さないために。
部隊長は結論を口にした。
「だが、なぜ敵はここまで回りくどいやり方で、殺しを避けるのか。
それを我々は知る必要はない。
だが、依頼内容に嘘があるのは明確にわかる。
我々はハメられたのだ。
依頼内容に虚偽がある場合、我々は依頼主を決して許さない」
賛意を示すうなずきが、部下たちのあちこちでなされる。
「これからの方針だ。
我々は白旗は揚げないが、彼らの監視下に身を置き、全てを晒し時間を稼ぐ。
明け方が来れば撤収し、ここには二度と足を踏み入れない。
いいな?」
「Aye, Aye, Sir!!」
「部隊長、部隊長を含め、4人が飛ばされている画像、撮れています。
ただ、視界の悪い森の中ということもあって、コマ送りにしても何者による仕業かはわかりません」
「よし、それでいい。
これで幻覚だけでなく、実際の戦力においても依頼情報に不備があることが立証できた。装備含め、もっと大掛かりな上陸作説が必要だった。
歩哨立て。
残りは、寝ろ。
敵の前で、大いびきをかいてな」
「Aye, Sir!!」
部隊長にとっては、長い夜はまだ続いていた。
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