第19話 父さんの魂1


 でも……。

 僕、決心した。

 父さんを助ける。

 いつまでかは今は決められない。でも、父さんは元々の自分の寿命を知っていた。73歳って言ってたかな。それまで、あと30年以上ある。その間に僕は、もっともっといろいろなものを見て、きちんとした判断ができるようになっているはずだ。

 いや、なっていないと困る。


 これ、僕としては先送りのようで、そういう思いはない。

 だって、ここで父さんを死なせてしまったら、30年後、どう悩んでも悔やんでも、取り返しがつかない。

 でも、その頃の僕には判断できる。そう、僕は僕を信じる。


 そして、そう信じられる理由は、僕は真祖のヴァンパイアだからだ。

 神の視点は持てないかもしれないけれど、人間の視点でもない。たぶん、神と人間の中間の視点を持てるはずだ。そうしたら、どっちにも偏ることなく、きちんとした考えが持てるはずなんだ。


「うん、いいんじゃない?」

 瑠奈、僕の考えに頷いてくれた。

「なんかさ、ヨシフミ、アンタ急激に頼り甲斐が増しているね」

 えっ、そうかな?

 瑠奈にそう言ってもらえるのはとても嬉しい。

 歳の差からくる経験の違いと、考えの深さの差を少しでも埋めたいもんね。


 ここで僕、自分の考えを口に出してしまって良いものか悩んだ。

「ねえ、瑠奈。

 いい方法があったら言って。

 とりあえず、僕は僕の考えを言うけど、それがベストとは思っていないんだ」

「いいよ、ヨシフミ。

 言って」

 瑠奈、僕の言葉に、覚悟完了って顔になった。僕の言いたいこと、わかってるのかな?


「結果から言うよ。

 僕、父さんの魂は売るしかないと思っている」

 僕の言葉に、瑠奈、大きな目を瞠って僕の目を見た。

 僕も、瑠奈の目を見返す。

 僕、辛くても、下を向かずに話すよ。

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