第3話 ヴァンパイアに打ち明かされた話
真祖のヴァンパイアがヴァンパイアにした人は、元の人間に戻るのか? って……。
えっ、なに、その質問……。
「わかんないよ。
わかんないのには理由があって、もしかしたら噛まれた人に命の長さが残っていて、その間に僕が死んだら……。
つまり、80歳で死ぬ人は、70歳までヴァンパイアだったら、10年しか生きられない。150年ヴァンパイアになっていて、そのあと人に戻ってまた生きられるかってのは無理だと思う。
で、この答えを保証しろって言われても、その時になったら僕は死んじゃっているわけで、本当に人間に戻れるかはわからないよ」
そう答える。
「そう……」
ぽつんと瑠奈は答える。
「なに?
噛んで欲しければ、噛むよー」
「いや、遠慮しとく」
「じゃ、なに?」
なんか、いつになく歯切れが悪いなぁ。
「ヨシフミ、君は口が堅い?
信用できる?」
「わかんない。
拷問受けたらしゃべっちゃうかも。
痛いのは嫌いだし、怖いのも……」
「ヴァンパイアのくせにっ!」
「だからだよーっ!
人間のほうが怖いんだからー」
「いや、あのね、人間は怖いけどそうじゃなくて、普通の範囲の話。
拷問とか、考えなくていいから」
「うん、瑠奈さんが黙っていろって言うなら、僕、黙っているよ」
瑠奈、じーっと僕の目を見ていたけど、ふっとその目をそらした。
「ヨシフミ。
あと半年ぐらいで死ぬよ」
「ふーん。
それって、またお化け屋敷するってこと?
でも、幽霊させるなら、髪の毛伸ばさせないと」
「違う。
マジの話」
……マジ?
どういうこと?
「あのね、犬とか狼の嗅覚があれば、悪性の腫瘍ってわかるのよ。
あの娘、ほぼ間違いなく身体の最奥の臓器に腫瘍が生まれてる……。
年齢的にはとても珍しいけど、10代前半だから進行はとても早いし、一番発見されにくくて予後のよくない部位だし、全身に転移してからでないと、腫瘍の検査すらされないかもしれない。
本人、今はなにも異常を感じていないし、そのうち、『なんかだるいなぁ』なんて思っているうちに全ては終わり」
……マジかよ?
「なんで、僕にそんな話を……」
「甘えているのよ。ヨシフミに。
私が今までに、何人の人を見送ってきたと思っているの?
それも、この100年ぐらいがようやくマシになった程度で、それ以前はみんな苦しんで苦しんで、苦しみ抜いて死んでいった。
それを全部、私、最初から最後まで誰にも言わず、独りで見てきたのよ。
……ヨシフミ。
私、初めて誰かにこれ、話している。
ヨシフミに甘えてるの。
甘えさせてよっ!」
瑠奈の目、涙でいっぱいだ。
……僕は、僕はまだ、そんな、そんな不幸見たことない。
こんな事態、言われても実感がわかない。
もしかしたら、誰かの血を吸ったらその人の健康状態はわかるのかもしれないけど、まだ僕は血を吸った経験すらない……。
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