第5話 真祖のヴァンパイアの現実


「中学生じゃ、バイトもできませんねぇ。

 あ、盗むのはナシにしてよ。

 だいたいね、由緒正しい平民の家系のうちには、お城とか、地下室とか、ありませんからね。

 自分の部屋に引きこもるのは勝手だけど、学校の先生とか友達とか、児童相談所とかも出てきちゃうかもねぇ。

 で、そこでも名乗るの? 真祖のヴァンパイアのヨシフミ様だって?」

 もう止めてくれえっ!!


 なんなんだよっ!?

 話が可怪しいだろっ!?

 僕は本当に真祖のヴァンパイアで、無限の力があって、不老不死だ。

 それなのに、なんだ、この扱い?

 しかも、実の母親からだ。


 ましてや、僕が誰かの血を吸ったとかで、どこかに迷惑をかけたとか言うならまだしも、まだ何もしてないぞっ!


 しかも、だ。

 母さんの言いようだと、僕、なんか詰んでないか?

 一生って、無限に続くものを一生って表現でいいかは疑問だけど、僕はずっとこのままの容姿だから、小柄な中学生のままで働くこともできず、この両親の横暴に耐えないと衣食住の衣住がままならない。


 さらに……。

 長くても50年後、僕はどうするんだろう?

 両親がいなくなると同時に、完全に詰むんじゃないだろうか?

 部屋から出ない引きこもりが、親の老化と共に行き詰まるなんてニュースを見た覚えがあるけど、まさかの僕の人生のことかよっ!?



 くっそ、今までそんなこと、考えたこともなかった。

 たくさんのホラー小説も読んだけど、家賃とか水道代とか電気代とかを払うヴァンパイア、見てない気がする。さらには、ユニクロで服を買うヴァンパイアとか、銭湯に入るヴァンパイアもだ。

 敷金、礼金もいらない先祖伝来の城にいればいいって、アンタ甘えているだろ、ドラキュラ伯爵っ!


 ラノベだと、子供でヴァンパイアって例はあったけど、生活についてはなんにも書いてなかった。

 だいたいそういう存在ってのは敵側なんで、生活なんて描かれていないんだ。それに、そういう連中、そもそもボスがいたりお金持ちの仲間がいたりして、全部が上手く行っている。


 ……これは、自分が特別な存在だとどこかにアピールして、急いで対応策を練らないと大変なことになる。

 人知れず生きていく予定だったのに、せめて生活費を出してくれるスポンサーだけは見つけないと、なんだ。


 で、さらに考えて……。

 スポンサーには、なんらかの見返りを与えないといけないと気がついた。

 僕が不老不死だからといって、それでいきなりお金をくれる人はいないよね。

 しかも、そのスポンサー、僕の基準だとあっという間に歳をとって死ぬだろう。

 これは、マジ、ダメだぁ。


 なんか暗澹とした僕は、母さんの前から逃げ出して、自分の部屋で人生設計を考えることにした。

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