第51話 尻尾、対策


 1つだけ、さらにわからないことがある。

 尻っぽは女の命ということは、言われたからわかったよ。

 で、女の命ってどれくらい価値があるもんなんだろ?

 僕、女になったことがないからわからないよ。


 でも、これ、聞いたらやっぱり怒るよね。

 そういう勘だけは良くなったんだ、僕。

 しかたないから、正面からもう一度頼もう。

「だめ?」



「あーっ、もう、ヨシフミっ、わかったけど、尻っぽは見ないでよ。

 絶対見られたくないっ」

「はい、わかりましたっ。

 見ませんっ」

 僕は宣言した。

 やっぱり瑠奈、お願いしたら頼まれてくれた。

 頼み込めば、けっこう僕のわがままを聞いてくれるんだよね。


「で、それだけでいいの?」

 と、さらに瑠奈の問い。

 なんだかんだ言って、でも結局瑠奈は優しい。


 で、もう一度僕は考え込んだ。

 そうしたら、もう一つ安全策をとりたいことを思いついた。

「僕もさ、映画程度の知識しかないけど、銃を持って戦うときって、かならず別の武器も持っているよね。

 ナイフとか、手榴弾とか。

 ナイフはかまわないけど、向こうが手榴弾とか持ってきたら弾薬と一緒に使い切らせたいよね。

 島の形が変わっちゃうような強力な爆薬は持ってこないと思うけど、手榴弾対策は考えておいたほうがいいよね。

 あれってすごい威力なんだよね?」

 と、僕。


「そう聞かれても、私だって知らないよ。

 でも、怖そうだってのはわかるから、使わせてしまうってのは賛成」

 と、瑠奈。

 うん、じゃ、そう考えよう。

 我ながら思うけど、なんて泥縄なんだ。


 で、手榴弾を使う状況ってなんだろうねぇ。

 なんとなく、ライフルで狙うより近くにいる敵で、かつ直接狙えない場所にいる敵が対象って感じはある。

 あと、もう一つ、僕には仕組みとかわからないけど、手榴弾は火薬のかたまりを投げているってイメージだけはある。

 つまり、どれほど威力があるか知らないけど、射程は人間が投げて飛ばせる範囲で、爆発の半径は人間が投げて飛ばせる距離以下だ。


 あれっ、これって、大して威力がないってことじゃないのかな。

 訓練を受けた兵士が、みんなみんなメジャー・リーガー並の肩を誇るなんて聞いたことないもん。きっと重いものだろうし、50mも投げられればいいもんなんじゃないだろうか。

 僕なら500mくらいは投げられるだろうけど、あまりに遠距離を投げても空中でタイマーが切れて爆発しちゃいそうな気がするし、そこまでぶっ飛ばす想定はない武器なんだと思う。


 じゃ、サメでいいじゃん。

 海中で激しく大きなサメが暴れていて、それに脅されれば脅されるほどその中を突破できて陸上に上がれたら手榴弾を投げるよね。

 水中じゃ鉄砲の弾は威力がないって、なんかの映画で見たし。


 じゃ、この作戦で行こう。

 うんと脅してやるー。

 中学生や、中学教師が相手じゃないから、思いっきり脅してやるっ。

 リアルな恐怖を見せてやるっ。

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