第7話 同窓会するぞ
瑠奈が女子たちに。
僕が男子たちに。
手分けして連絡して、同窓会、実現できることになった。
どこでするかってことについて、散々悩んだけど、すごーく安上がりに済ますことができた。
ってのはさ、お店と違って、無料のスペースを見つけることができたんだ。しかも、50人は楽に入れる場所で、持ち込みは自由。
どこって、まあ、公民館。
アイデアを出してくれたのは父さん。
会費を抑えたくて悩んでいたら、「この間、町内の囲碁の大会で使ったぞ」って教えてくれたんだ。
父さん、僕に打ち明けた話のことは、完全になかったこととして振る舞っている。
そりゃそうだ。
僕が「妄想だったんじゃない?」なんて言い出したら、父さんは立つ瀬がない。でも、身体の奥で、実感として死を感じていたはずだから、妄想じゃなかった自信もあるだろう。
だから、僕と水掛け論になりかねない話をするなら、黙っていた方が得策。
父さんのその考えもよくわかるよ。
ま、僕としても、父さんに自分がやったことを説明する気はないしね。
お互いに無言の了解ってことでいいじゃん。
で、話を戻すけど……。
公民館って、イメージと違ってとても使いやすい。
テーブルと椅子もたくさんあるし、座敷もあってごろごろすることもできそう。
ガス台があってお茶くらいは淹れられるし、トイレもきれいだ。
宴会場ではないけど、そもそも僕たちはまだアルコールは飲めない歳だから、会合ってことで言い訳はできたみたい。
で、そこで節約できた分をピザを取ったり、フライドチキンを買ってきたり、ペットボトルも箱で買って、それはもう注ぎ込みましたよ。
僕と瑠奈は個人的に寄付する感覚で、ちょっとずつ会費以上に買い物した。
次の同窓会が20年後だとしたら、もう僕たちは出られない。
だから、お別れのあいさつみたいなもんだ。
そう考えたら、瑠奈の存在がいかにありがたいか、あらためて自覚した。
だってさ、瑠奈がいなかったら、クラスの全員とお別れ。誰とも二度と会わない。
それって、あまりに過酷で残念な運命じゃないかな?
不老不死の存在の人生ってのは、過去をどんどん脱ぎ捨てていかないと、存在が周囲にバレちゃうんだ。
おっかしいよなー。
不変に生きたかったからヴァンパイアになったのに、ヴァンパイアになったばかりに生々流転のスピードが上がって、同窓会もそう何回も出られない。
もっと考えてからヴァンパイアになればよかった、って、何度目の後悔だろ?
でも、瑠奈がいれば、完全な孤独じゃなくなる。
それはとても大きな救い。
運命というか、めぐり合わせに感謝だよ。
そんな準備をして、当日。
こういう人を集めるってことは初めての経験だけど、みんな本当に来てくれるのか心配で、心配で。
ドタキャンの嵐で、誰も来てくれなかったらどうしようかとか、日付を勘違いしていたらどうしようとか、頭の中でぐるぐる回っていて、結局、前日から一睡もできなかったよ。
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