第8話 再会1
一番最初に自転車で乗り付けてきてくれたのは、本郷聡太。
まぁ、同じ高校だし同窓会の計画も相談していたから、来てくれることは確実だったんだけど、これで一気に僕、安心したよ。
ただ、本郷もすごく気になることを言ってた。
あくまで一般論として、「次の同窓会にみんなが揃うかはわからないから、一生懸命、準備はやっておこう」って僕が言ったのに対して……。
「そうだな、俺もたぶん次の同窓会は出られない。
大学を卒業したら、遠い国に行きたいんだ」
とか言ってたんだ。
「遠い国って、どこ?」
って、聞くよね、当然。
工学部志望の本郷が行きたいってことは、どこかの発展途上国かなあ?
「とても遠いけど、とってもいい国だよ」
って、ソレ、やっぱりどこよ?
この言い方だと、アメリカぐらいの距離感じゃないよね。
「僕も行きたいな。
遠くていい国に」
日本だけで考えると、あまりに書類上の手続がしっかりしているので、行政手続的に永遠に生き続けるのは難しい。そのへんが緩い国で、書類上の世代交代を済ませてまた日本に戻ってもいいよね。
そんな不純な考えもあったんだ。
でも、そう言ったら、本郷、すごく妙な顔になった。
そして……。
「ヨシフミ、信頼しているからさ、向こうで会社とか作るかもなんだけど、そのときは日本の代理店になって輸出入の管理をしてくれるか?」
なんて、言いだした。
僕、二つ返事でおっけーしたよ。
どうせ僕だって、毎日会社に通うような仕事をするわけじゃない。とはいえ、本郷のいる国の時間に合わせて仕事をするのであれば、時差の関係で夜の仕事になるかもだし、そうなれば僕としてはとても楽だからね。在宅勤務もできるだろうし。
そういう堅実な仕事っていいよね、絶対。
でも、本郷、なにかを隠している。
コイツんち、母子家庭だからね。遠くに行くってなると、母親置いていくってことだろうから、それを今から計画しているのってどうよって。
ま、僕も隠していることはあるから同類だ。
でも、こういうのもいいかもね。
次に来てくれたのは綾田暖。
「お久しぶりでござる」
「テメェ、昨日会ったろ?」
お前とは同じ高校じゃねーか。
「同窓会に出たら、まずはソレらしいあいさつをしなければと、拙者、思ったのでござるよ」
「他の高校に行ったヤツに言えよっ!」
本郷と2人で総ツッコミだ。
ったく、こいつも相変わらずの人だなぁ。
次に来たのが桜井蓮。
「おう、来てるな。
女子はまだ来てないのか?」
って、真っ先にそれか、墓石。
「今はまだ、俺たちだけだ。
なんでよ?
今さらナンパでもするのか?」
本郷がそう聞くと……。
「もう彼女ならいる。
杉木だ。
もう来ているかなって思って」
杉木って、杉木結菜か?
笙香と一緒に、試験に出る問題を先生たちに探りを入れた……。
むう、こんなところでそんな成果を聞かされるだなんて。
あ、綾田がマジなショックを受けてる。
可哀想に……。
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