第6話 僕たちの将来
ともかく……。
ウチの両親に比べれば、僕と瑠奈の関係の方がずーっとシンプルで、悩みがなくて済むことに気がついたよ。
お姉さまとフリッツさんは、お茶を飲みながら話し込んでいる。
それをいいことに、僕も考え込む。
両親のことは切りがついた。
それにさ、自分の将来も決まった。
すぐに瑠奈に勝てるほどのお金持ちにはなれないけど、これを一歩目に、だんだん貯めていけばいい。そうしたら、たまには学校帰りに落ち合って、クレープくらいはご馳走できる。
って、あと1年くらいしかないのかぁ。
それに、瑠奈だと、甘いのよりもソーセージのクレープとかだろうな。
ならいっそ、最初からたんぱく質を狙おうか。
でも、たんぱく質を食べるとなると、デートの趣が変わっちゃうなぁ。
高校生が学校帰りに彼女とステーキって、変じゃない?
ぶつぶつ。
そんなことを考えていたら、ぎゅーーって後ろから首を絞められた。
「私がせっかく優しくしているのに、なに考えてるん?」
う、コレ、下手なことを言うと首を絞める力が本気になるやつだ。
「いや、今回さ、荒川とか笙香の話が出たからさ……。
1度くらい同窓会しておかない?
だって……。
今から10年後の同窓会は、もう出られないかもよ。なんとかごまかせたとしても、20年後の同窓会は絶対無理でしょ。
なら、今、みんなに会っておいてもいいかもね」
僕、そんな話をする。
即座にでっち上げたにしちゃ、いい話だろ?
「うん、いいね。
いつか会えると思いながら、気がついたら100年経っていて、絶対に会えないっていうことになっちゃった後悔はたくさんあるよ。
だから、会えるうちに会っておくことは賛成だよ」
そう言えば、昔お姉さまも似たようなことを言ってなかったかな。
辛いないぁ。
気がついたら100年経っていてって言葉に、実感がこもり過ぎている。
きっと、僕たちみたいな生き物に比べたら、人間って本当に弱くて長生きできなくて。
でも、きっとそれが救いでもあるんだろうな。
死は御破算って考え方もできるんだ。
だってさ、僕と瑠奈が喧嘩したら、100年どころか500年絶交していたなんてこともありうるだろ?
だから、瑠奈がへそを曲げないように、ずーっと変わらず付き合えるように考えなきゃなんだよね。きっと、同じことを瑠奈も考えている。
そんなところが、僕たちがお姉さまほど強くないってことなんだろうなー。お姉さまなら、もっと生々流転を自分自身から突き放して考えてる。
僕と瑠奈は、そのつもりになれば永遠に生きて、永遠に一緒にいられる。
でも、だからこそ、死の御破算がない前提でいろいろ考え続けなきゃいけない。
もしかしたら、僕たちの間に子供だってできるかもしれない。
その子の人生まで含めて、ね。
たださ、僕たちに時間だけはたっぷりあるんだ。
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