第59話 食通、監禁
もうすぐ観光客がやってきて、僕たちは隠れなければならない。
そして、観光客が帰ったら、入れ違いに敵が攻めてくる。
普通の敵、つまり麻薬を欲しがる組織とか、そういう組織に雇われた人とかは落とし穴の幻影という対策でいいけど、薬で意思を奪われた人に対してはこの方法は使えない。死への恐怖を持っていないからだ。
お姉さまにそんな指摘を受けた僕は、ひたすらに考え続けていた。
「で、ヨシフミ、どうする?
そろそろ思いついた?」
と瑠奈。
「戦いたくないなぁ。
戦ったら、殺しちゃう。
それに、いくら制圧できるにしても、ヤク中の血なんか吸いたくないよ」
と僕。
コレ、なにも考えつけていないのを白状しているのと一緒だよね。
「グルメだからなー、ヨシフミは。
このままだと、真祖のヴァンパイアなのに、誰の血も吸わないで一生が終わりそうだよね。
それって、ヴァンパイアの人生としてはどうなんだろうね?」
「どうなんだろうねって言われても……。
瑠奈の血を吸うのなら、嫌じゃな……」
「それはダメ」
「返事、はやっ!」
ふん、どーせどーせ僕は意気地なしのヴァンパイアですよ。
他の真祖のヴァンパイアの中には、たくさんの女性を閉じ込めておいたりしたのもいるのにさ。もっとも瑠奈じゃ、閉じ込めるのも一苦労だろうけどね。
「……あ、閉じ込めよう」
「やだ。逃げる!」
「ああっ、そうじゃないっ!
作戦だよ、作戦っ」
と、思いついた作戦を説明する僕。
「ほんと、思いつきなんだけど……。
まずは上陸してくるときに、サメを見せよう。
ヤク中に幻覚が効くかどうかは、それでわかるよ。
どちらにせよ、捕虜を閉じ込めているところまでおびき寄せ、合流させたところで閉じ込める。
幻覚が効かなかったら、島中に転がっているありったけの倒木とか石を積み上げて、ドアを破られないようにするよ。
僕も怪力を使うけど、お姉さまと瑠奈も協力して欲しい。
レンガ壁だから、壁を貫通して撃たれることはないよ」
「できなくはないけど、タイミング的に難しいね。
相当に静かにかつ手早く積み上げられないと、押し負けるよ。
それにヨシフミ、『壁を貫通して撃たれることはない』って言うけど、ドアは簡単に貫通するからね」
相変わらず、お姉さまの指摘は鋭い。
「それにね、ヨシフミの考えるとおり、おびき寄せる餌として、捕虜は使える。
捕虜と救出部隊を閉じ込めるケージもある。
でもさ、そのケージはそこまで強くないよ。
レンガ積みは相当に古いとはいえ、軍施設だから基本丈夫だけど、部屋の仕切り部分はそんなに厚くなかった気がする。ドアだけの対策じゃダメかもよ」
だってさ。
「レンガでできているんだから、頑丈ですよね?
レンガの家は最強だから、3匹の子ぶたにも出たんですよね?」
という僕の反論に、お姉さまは鼻で笑った。
「ヨシフミ。
人間の怖いところは、道具を使うところと協力し合うことよ。全員で力を合わせられたら、それでも絶対に逃げられないで済むと思う?」
だってさ。
そう言われたら、僕、絶対大丈夫とは言えない気がしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます