第15話 推測、観察
敵と一つ同じ部屋にいるというのに、得られる情報があまりにない。ちょっと困ってしまって、部屋の中を物色したよ。
あれだな、仮の住まいってやつだ。
生活臭が少ない。
つまり、手がかりも少ない。
でも、なんだこれ?
1つだけ変わったものがある。
ガラスの塔みたいなもの。
1メートルちかい高さがある。
底はフラスコみたいで水が入るみたいだし、全体になんかホースがぐるぐる巻き付いている。
こんなモノ、見たことが……、なくはないかも。
僕の記憶の底から、急速に形を顕わに浮き上がってくるものがあった。
これ、水タバコの道具だ。
中東の男たちの娯楽。
イスラムはアルコールが禁じられているから、これで水タバコを長い時間かけて楽しみながら、甘いものとお茶を楽しむんだったよね。
で、僕がこの道具を知っているのは、タバコを吸う道具としてではない。
タバコ以外のものも吸えるんだよ、これ。
ハシーシュとか……。
正直に言うけど。
僕、震え上がった。
ハシーシュ、つまり大麻。
昔、仕事の前にこれを吸う暗殺教団があった。
このハシーシュという単語がハッシャーシーンという教団の名前となり、そのまま
僕、他の知識は高校生だけど、自力で真祖のヴァンパイアになったくらいだからね。オカルトの知識ならそこそこあるんだよ。
その暗殺教団のことを書いた本に、銅版画みたいな挿絵があって、こういう水タバコの道具でハシーシュを吸っていたんだ。
確認のためってほどのことじゃないけど、ノートパソコンに向かっている奴の顔を見る。
ああ、見慣れた日本人の顔じゃないわ。
白人でもないけど、やたらと濃い。
思い返してみれば、車のトランクに置いてきた殺し屋の男も相当に濃い顔だった。
でもさ、アサシン教団は、伝説にとどまるものだっていうのが、現在の歴史上の結論だったはずだ。
とはいえ、まぁ、僕たちの薔薇十字にしても実在はない寄りの不明ってされている。他にも、実在しないって言われているけど実は、って組織はありそうだよね。
でもさ、殺し屋を捕まえたら、殺し屋の巣に踏み込んじゃったわけで、僕の恐怖、わかって欲しい。
それも近代化されて、銃とか火炎放射器まで使う集団なんだ。
そーっと他の連中も窺うけど、質素な煮込み見たいのを作っている奴、中華鍋をひっくり返して凸面で紙みたいに薄いパンを焼いている奴、シャワーを順繰りに浴びている奴、みんな無愛想に黙っている。
でも、1人、長い棒みたいな銃を持っていた奴だけど、コイツはバッグから銃を取り出して分解掃除を始めた。たぶん、今日は撃っていないはずだから、こういうの、好きなんだろうね。
それとも、銃って、毎日こういうメンテが必要な道具なんだろうか?
引き抜かれたマガジンがでっかい。
その中のカートリッジもでっかい。
当然のように銅色の弾もでっかい。
ああ、わかっちゃった。
こいつらの殺しの対象は、お姉さまと瑠奈だ。
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