第16話 判明、反省
思い返してみれば僕、中学の時からの同級生だった本郷に、問題を出されたことがあった。
「自衛隊の使っているライフルの弾丸の太さ、鉛筆より太いか細いか?」ってね。
僕の頭に浮かぶ武器なんて、せいぜいが日本刀。となると、武器って大きいものだから、鉛筆の直径じゃ全然どうにも細いだろうって思ったんだ。
したら、答えは「鉛筆より細い」って。
本郷、暇さえあれば本を読んでいて、さらに異常なまでに勉強していて、大学も相当にいいところの工学部を目指しているらしい。だから、そんな本まで読んでいるらしい。
なぜか急に人生のモチベが上がっていて、中学の時の「人柄の本郷」じゃなくなってるんだ。
で、それはともかく、この男が分解清掃している銃の弾丸の直径は、鉛筆のそれの倍以上あるように見える。なんせ、僕の小指くらいあるからね。
となると、倍と控えめに見積もっても、弾の重さは自衛隊のライフルの8倍にはなる。
つまり、人を殺すのに十分な威力の弾丸の、8倍ものエネルギーをこの大きな弾丸は運ぶことになる。同じ速さで打ち出したとしてもね。
こんなの、中学の理科の知識でわかることだ。
もしも、こいつの標的が殺し屋の男だとしたら、人間用の銃でいいはずだ。人間相手にこんな弾撃ち込んだら、撃たれた人間は霧になって消えてしまうかも。
あ、もちろん、僕が霧になるのとは違う意味で、だよ。
つまりさ、こんなでかい弾を、でかいカートリッジのたくさんの火薬で撃ち出す以上、人間以上の強度で、人間以上に動きを止めなくちゃならない標的ということになる。つまり、それはもう「ジェヴォーダンの獣」しかありえないじゃんか。
さすがに僕、改めてショックだよ。
自分の好きな女子を殺そうとして、銃を手入れしている男が目の前にいるんだよ。
だからって、どうしたらいいんだ?
僕、この男を予防のためにここで殺してしまえはしない。
逆に、この男が瑠奈を殺したら、徹底して5度くらいは殺すかもしれないけれど。不老不死は殺し甲斐があるからね。
僕、ここにいる全員に対して、どんなこともできるほどの力があるけど、その力をどう使っていいかが全然わからないんだ。
中学の時、瑠奈と一緒に荒川の家に侵入したときのことを思い出すよ。あのときの敵も、僕たちが人間じゃないことを知っていた。そして、僕はどうしていいかわからなくて、ただただおたおたした。
今回と同じで……、つまり僕、成長していないんだ。
どこかで訓練とかを受ける必要があるのかもしれないね。こうやって、戦うことがある以上はさ。
それでも、前回の経験を活かすとすれば……。
今はなにもせず、ひたすらに観察を。
観察を続けて情報を得て、相手への嫌がらせはそれからにしないと。
そう考えると、一気に心が楽になった。
ここの無愛想な連中だって、いくらなんでも晩ごはんのときには表情も口も軽くなるんじゃないだろうか。
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