第17話 ヴァンパイアの悪意あるいたずら
「いないのか?」
男は未練がましく、空に向けて聞く。
当然、返事をしない僕。
男は再度舌打ちをして、部屋から出ていった。
瑠奈をこのまま抱き上げて運ぶのは、とても怖いだろうしね。
抱き上げたところで瑠奈が気がついたら、次の瞬間には喉笛に噛みつかれているかもしれないからね。冗談じゃないよ。
僕、倒れている瑠奈が呼吸しているのを確認して、そのままぎゅっと抱きしめて、また共に霧になった。
そして、男を追う。
さ、ビーグル犬のヌーピーちゃんは、学んだかな?
うん、よく学んでいたようだ。
尻尾を後ろ足に挟み、頭はクッションの間に突っ込んで現実逃避をしている。やっぱり頭のいい子だね。生き残る選択がきちんとできているよ。
男は、そんなヌーピーちゃんに目もやらず、医療機器のキットみたいなのを引っ張り出している。
ふーん、紫外線ライトも予備球があるんだ。
ロープもあるんだね。
うん、なかなかの悪意だ。
科学的探究心かもしれないけど、それが向けられる方にとっては、やっぱり悪意としか言いようがないもんね。
さて、悪意には、悪意ある
男がばたばたと引き出しを開け閉めしている間に、体の一部分を実体化して、紫外線ライトの電池を押さえているスプリングを潰す。
ロープは僕の怪力で、何か所か切れ目が入ったように繊維をぼろぼろにした。ピストル型ボウガンの弦も、だ。
ついでに、薄いガラスの管に入った薬剤の名前を覚える。
医療キットも予備があったので、ケースの中身だけをすべて握りつぶす。
ついでに、本棚のそっち関係の本とか、荒川を操るのに使った洗脳道具らしいものとか、すべて台無しにしてあげよう。
バソコンのディスプレイを見ると、メールのやりとりが見える。
この男、仲間がいるらしい。
その相手のメールアドレスも覚えた。僕の今の能力であれば、こんなの苦でもない。
まぁ、そらそうだよね。
仲間が、というより、この男の上部組織がいなきゃ、ジェヴォーダンの獣である瑠奈のことを知っているはずがない。
じゃ、こっちもやっつけておきましょう。
スマホの中の基板をチップごとぐっちゃぐちゃにスクランブルして、さらさらの粉にした。
バソコンのハードディスクも、同じく。
でも、パソコンのディスプレイは問題なく、今までと同じ画像を出し続けている。
キャッシュからハードディスクにアクセスすることになったら、初めて不具合はあらわになるだろうさ。
僕がこの
だってさ、おおっぴらにできない相手のメアドだもん。そんなにあちこちバックアップがあるはずない。
スマホとパソコンの両方の記憶媒体を粉々にされたら、自分の頭でメアドを覚えていなければ、永遠に連絡は取れない。
なかなかの嫌がらせだろ?
これで、僕が壊したもろもろを、再度手に入れるのも難しくなったわけだ。
そして、僕は早いうちに、捨てアドからここに作り話のメールを送ることにするよ。
男がオカルトなんか、二度と関わりたくなくなるように。
そして、荒川の良い叔父さんに戻れるなら、戻るべきだしね。
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