第11話 ヴァンパイア以外、みんな失礼!
「ともかくさ、ベルゼブブはもともと悪魔じゃない。
豊穣の神よ。
いくら悪魔に比定されるようになっても、その基本姿勢は変わらない。
七つの大罪のうちの
だから、目的が生贄かなんかはわからないけれど、人を食い散らかしたと思われている私も、きっと貪食つながりでベルゼブブと相性がいいと思われてる。
ったく、失礼ったらありゃしない。
そんなに食べるように見えるのかなぁ、もー」
ぷんぷんって感じだなー、
まぁ、瑠奈のいうことを信じるのであれば、人は食べてないんだもんね。
濡れ衣着せられて、気分が悪いのは理解できるよ。
「じゃ、やっぱり瑠奈さん、ベルゼブブ召喚の生贄要員にされてたってこと?」
「そうだと思うわ。
どこまで本気だったかは、わからないけれどね。
命を奪おうと考えるほどの覚悟は見えないから、生き血を取られて終わりぐらいかもね。だって、ここには武器とか拘束具がない。生贄にされそうになった私が反撃するってこと、考えてないよね。
あとは、逆転の発想だけど、私を手に入れるために、ベルゼブブから情報を手に入れていたのかも……」
ああ、そういうのも、ないとは言えないんだよね。
「でも、売れっ子はこんなとこ、営業に来ないんでしょ?」
僕、そう確認をする。
「うん。
でもね、『自分はベルゼブブだー』って名乗る、三流の木っ端悪魔は来るよ。
で、そんな連中でも、最初の数回だけなら確度の高い
おまけに、そんな三流悪魔なら、荒川に万能感を誤解させるのも上手でしょーよ」
うーむ、単に使い捨てにしか思われてないんだなー。
可哀想な荒川……。
「三流の木っ端悪魔でも、正しいお告げを数回ならばくれるんだ……」
「ええ、だからこそ、頼った人間は身を滅ぼすのよ。
最初から当てにならない情報ばかりならば、誰も相手にしないけど、注目だけ浴びたところで放り出されるからね」
ああ、そういうことか。
「さらにえげつないこと言えば、荒川の厨二病心を刺激して、いいように扱えるって利点もあるしね」
「うわっ、それはさすがに荒川が可哀想だー」
うーん、自業自得とも言い切れないよなぁ、その状態。
「どっちにしても、荒川にはバックがついてるのは確実。
そして荒川の近くにいて、いつでも思考に介入できる。
さらに、私の正体を知っている。
割り出せそうだよ、これだけで」
そうだね。瑠奈の言うとおりで、たしかにヒントが多いよ。
「じゃあ、その荒川のバックにいるヤツの最終の目的は?」
「そんなの決まっているじゃん。
私を手に入れたって、お金になんかならないよ。
ベルゼブブだって、『お金が欲しい』なんて契約を願ったら怒るよ。せめて、『世界征服』くらい持ちかけないとね。
でも、そうなると、代償も莫大なものになる」
「そりゃ、そうだ」
なんたって、「蠅の王」だからね。
「『自分はベルゼブブだー』って名乗る三流の木っ端悪魔で用が足りてる話、荒川の厨二病を刺激する話、どっちでも、やっぱりお金とかより私自身が欲しいのよ。
荒川の動きも最初からそうだし、首尾一貫してるよね」
瑠奈、ちょっと白けたふうに言う。
ま、嬉しくはないだろうなー。
「そうは言うけどさ、お金にしないのにジェヴォーダンの獣が欲しいってことだと、瑠奈さんを生体解剖でもしたいってこと?」
「ヨシフミ、バカじゃないの?
荒川を使ったのは、たぶん身体だけでなく心も支配できればと思ったんでしょーよ。つまり、生きている私を利用したいのよ。
まぁ、完全に人選ミスだけど」
人選ミスかぁ。
ここまで言われる荒川、やっぱり可哀想と言ったら可哀想だよね。
そして、面と向かって「バカじゃないの?」って言われる僕も、だよ。
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