第13話 決断、追尾


 人間の耳でもサイレンが明確に聞こえだしたらしい。長い銃を持っていた2人組がぴくりとして、動き出した。

 そか、こんなに普通の人間の感覚って鈍いのか。


 まあ、逆の意味で感心している僕の目の前で、2人組、てきぱきと撤収の準備を進めていく。消防車がたどり着く頃には余裕で姿を消しているだろう。


 僕、決めた。

 この男たちの後を付ける。

 お姉さまと瑠奈、無事だと信じる。

 逆に、無事じゃないとしても、僕にできることはない。僕は自分の怪我があっという間に治ることは知っているけど、その力を誰かに分け与えることはできない。

 それに、瀕死の人を助けるにも、ヴァンパイアにしてしまうしかできる方法がない。ヴァンパイアにヒーリング能力はないんだ。

 お姉さまも瑠奈も、共にヴァンパイアにはなりたがっていなかった。となれば、残っていてもどうしようもないからね。


 それに、焼け焦げていても、人の姿のままで命が残っていたら、消防の人が救急に連絡して病院に移送されるだろう。

 もっとも、血液型を調べられたら、病院中が大騒ぎになるかもしれないね。身体の中身は人じゃないから、ABO式の血液型じゃない。

 その騒ぎ、ちょっと見てみたいとは思うけど、とりあえずは目の前の2人組に集中しよう。

 とりあえずは、お姉さまと瑠奈、無事だと信じることにしたんだから。




 周囲の片付けから清掃みたいなことまでを瞬時で終わらせて、2人の男が駆け出す。これって、きれいにするってことじゃなくて、痕跡を消したんだよね。

 僕、その後を追う。

 でも、人1人を抱えた霧だからね。どうしてもスピードが出せない。


 病院裏に車が隠してあって、追いかける距離が少なかったのが救いだったよ。

 連中が車に乗って、エンジンをかける時間でようやく車に取り付いた。で、一度切り替えしている間に、トランクに入り込んで実体化した。ま、霧の状態だと入り切らないからね。体積の問題だよ。

 って、今晩は車に乗るのに、いつも座席じゃないところかよ。また転げ回ることになるんだろうけど、狭い中で殺し屋の男と2人きりで転げ回るってのは、残念すぎて言葉もでないや。



 車の動きは、15分くらいで変わった。

 おそらく首都高に乗ったんだと思う。

 なんと言っても、止まらなくなったからね。それに細かい右折左折がなくなったので、トランクの中で転げ回らなくて済むようになった。

 そして、さらにスピードが増していく。


 そか、敵の本拠地は東京じゃないんだ。だけど、東京からいくつも伸びている高速道路のどれに乗ったのかはわからない。トランクから顔の一部を出して周りを見てみようとも思ったけど、時速100kmで走る車から霧化した顔を出したら吹き飛ばされそうじゃん。

 頭だけ吹き飛ばされたりしても、自分が大丈夫とは断言できない。だから僕、あきらめたよ。

 こんなことしなくても、どーせ目的地に着けばわかることなんだ。 


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