第6話 ヴァンパイアの逃走
「すげぇな、ヨシフミ。
なにをしたんだ?」
って、桜井が興奮気味に聞く。
クラスの展示エリアで、僕と
「また僕、おんなじことを言うのー?
それに、怖かったのは僕よりも瑠奈だったんだよ」
「ふーん。で、なにしたん? る…………、るぅ?」
途中で桜井が凍りついた。
ん?
なに?
なんだ、このちりちりした空気?
でもって、瑠奈からは露骨な殺気。
全然隠す気がないだろ?
そんな、オーラが見えるような殺気を出したら、正体がバレるぞ。
「
僕だけじゃない。
そこにいた、クラス全員が「ひっっ!」ってなった。
ああっ!
やっちまったっ!!
つい、口から出ちゃった!!!
「る、瑠奈さんっ!」
「遅いっ!」
それからは、もう大変。
クラスの連中が、僕を冷やかそうとして、そのままそれが
僕の告白を再現してみせるんじゃねーよ、笙香!
もう、こいつはさぁっ!
ソコまで、みっともなくなかったっ!
「自分でバラしたんだから、情報解禁だよねっ♡!」
って、うるせぇーっ!
単純に僕のミスなだけだっ!
そこまでするこたぁ、ないだろっ!!
で、ここまでみんなの注目を浴びていると、さっきみたいにヴァンパイアの能力を活かして黙らせるってこともできやしない。
パニックになった頭の中で、僕はいい手がないか必死に考える。
なら、いっそ……。
「私こと、ヨシフミは瑠奈さんが好きでありまーす!
瑠奈さーん、好きじゃあああ!
だから、僕のもんだぁ!!」
この際だ、開き直っちゃるわー!
全部オープンにして、隠さなきゃ冷やかしようもないだろっ!
ついでに、僕のものだって、宣言しちゃえっ!
どうだっ!!
次の瞬間、とんでもない衝撃を背中に受けて、僕は教室の床にほっぺたを擦り付けた。威力、衝撃ともに、普通の人間なら間違いなく死んでるよ。
「ぅわたしはぁっ! おまえのもんじゃないーっ!!」
絶叫に近い叫び声。
視線だけ上に向けると、毛を逆立たせた尻尾を高々と天井に向けた瑠奈が仁王立ちしていた。
尻尾、そんな揺らしていたら、作りものじゃないってバレちゃう……。
なんて思う間もあらばこそ。
今度は、瑠奈の足がものすごいスピードで僕に向かって降ってきた。
僕、小さな上履きを履いた足に重なって、ど太っい毛むくじゃらの足を幻視したよ。
かろうじてそれを避けた僕は、「殺す気か!?」って思いながら連撃を躱して必死で逃げ出した。
「真空飛び膝蹴りからの、ストンピングの連打です。
いやー、内川選手、イイ動きでござったーっ!」
綾田、うるせーぞーっ!
走る背中で、クラスのみんなの力ない笑いが湧いたのを聞いたよ、僕。
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