第12話 ぽっと出のヴァンパイア
3日間の中間試験が終わった。
そして、もう3日間のやきもきした期間が過ぎて……。
答案が返ってきだしたよ。
その度に
なんか、その表情がぱりぱりに硬い。
でもって、瑠奈の点は僕、教えてもらえない。
ったく、いっつも横暴だよなー。
5日目。
5教科すべての答案が戻ってきた。
まだ、平均とか、最高点とか、順位とかの統計上のことはわからないけどね。
そこで、ようやく瑠奈が僕に声を掛けてきた。
「今日、一緒に帰ろう」
って。
当然僕、頷いたよ。
もう、本当に待ちわびてたからね。
今日は女子たちの諜報チームで、先生の目を盗んでお菓子会をしてから帰るってことだから、瑠奈と2人で帰れるよ。
来週までに、きっと2kgは増えるだろうなー。遠慮なくみんな平らげてるもん、笙香。
で、いつもの公園。
瑠奈はベンチに座る。
僕は……、やっぱり横に座る勇気はないな。いや、怖いっていうんじゃないよ。ただ、女子と一つのベンチに隣り合って座るってのが、ちょっと、まだ……。
前回抱きしめたのは、赤毛のフランス人のルーナだったもんね。今の瑠奈の姿、つまり僕が好きになってしまった姿でいられると、やっぱりまだ……。
なんていうのかな、神聖なものにずいずい近づくって、できないよね。
……ヴァンパイアになったのに、神聖なんて言っちゃいけないのかもしれないけど。
で、僕は立ったままで瑠奈と話す。
「『大切なことを見落としてた』って、なんだったの?」
瑠奈、僕の問いに、まずは大きな大きなため息を吐いた。
「ヨシフミ、このあいだ、アンタ、改造素体なんて言ったよね。
私、それがショックでね。
私が、狼の改造人間って……。
で、それはまだいい。
ヨシフミ、アンタ、このあいだ、学年1位を取ったよね?」
「うん」
僕は頷く。
話の行き先が、僕にはまだ見えていない。
「私ね、ヨシフミには話したけど、C.R.C.、つまり
その私が本気になって、それも5回目の義務教育で、ぽっと出のヴァンパイアのヨシフミにどうやっても敵わなかったら……」
自分がバカだと思うってことかな?
そんなの、気になるの?
「改造元が狼だとさ、どう努力しても、作ったのがあのC.R.C.であっても、人間には敵わない存在なのかな?
ヴァンパイアとジェヴォーダンの獣の差がそこにあるとしたら、私、ヨシフミと一緒にいられない。だって私、ヨシフミとの関係が好きでも嫌いでもいいけど、飼い犬にはなりたくないんだよ」
ああ、もっと重かった。
瑠奈自身の存在意義自体の話なんだ……。
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