第3話 ヴァンパイアの中間テストと文化祭
すぐにホームルームになって、先生がいつものように、いつものようなことを言う。
でも……。
聞き逃がせない連絡事項が2つ。
1つ目。
体育祭も終わり、来週は早々に中間テスト。気を抜かずにがんばれ、と。
2つ目。
文化祭が近いんだけど、クラス展示に制約がかかったらしい。
去年、お化け屋敷をやったクラスがあって大盛況だったんだけど、「それのどこが文化だ」っていう非難の声が挙がったんだって。
実はうちのクラス、2匹目のドジョウを狙っていたんだよね。
これは困るよ。
「先生、質問」
と、これは本郷。
「じゃあ、今で考えて準備してきたことは、みんな無駄になるってことですね?」
せめてもの本郷の抵抗だったけど、先生は頷いた。
「これから、一からやり直すんですね。
時間もないのに……」
「申し訳ないが、そういうことだ」
と、先生。
そこで、瑠奈が手をあげた。
「お化けについて調べて、その文化的側面を展示するのであれば構いませんね?」
あ、先生、想定外の言葉だったかな?
視線が泳いだよ。
「お化けは、人の心にさまざまな影響を与えてきました。
日本霊異記とかの古典もあります。
これを調べて展示するのであれば、文化祭にふさわしいですよね?」
と、さらに追い打ちをかける。
先生、追い込まれて「ぐっ」とか、言ってる。
「いいですよね?
それでもダメだということであれば、私たちが納得できる回答をください」
って、最後に、やたらとドスの利いた声。
先生、たじたじになったあげく、天井見上げちゃったぞ。
瑠奈ー、ダメだよ、そんな子どもをいじめるようなことしちゃー。
先生、立場上、本当は「ダメ」って言いたいんだろうね。
でも、瑠奈の言っていること、一応の筋は通っている。
それに対して、力押しでダメだって言い切れない辺り、いい先生なんだからさ。
ま、この場で「いいよ」とも言えないだろうし。
そもそも瑠奈、Sの気があるし、昨夜聞いた話からすれば、身の回りにいる全員のことを目下だと思っているから容赦ないな。
だめだよ、先生を嬲っちゃ。
それより、巻き込んでやらなきゃ。
「日本霊異記とか、雨月物語とか、怨霊と日本の文化とかを中心に、
って声を上げたら、クラスのちょっと不満そうな視線が僕に集中する。
たぶん、裏切り者と思われたな。「先生と一緒」ってあたりで。
そこで、背中を掻くふりして、後ろ手にVサインを出してみる。
どーせ僕は背が低い。
だから、席は前の方だし、意思は伝わるよね。
一瞬静まり返った教室が、次の瞬間、一気に盛り上がった。
「先生、古典の勉強のためにも、ぜひお願いします」
「先生、これからの僕たちは、心理学なんかも教養として知っていた方がいいですよね。恐怖とか、きちんと勉強したいです」
「恐怖に身体が反応するとか、そういうのもきちんと調べてみたいです」
わいわい。
先生、顔中をひくひくさせながら、「ほ、他の先生たちとも話し合ってみるよ」って言って、教室から逃げていった。
あーあ。
ちょっと、かわいそーだけど、ま、しかたないよね。
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