第21話 買物、手紙
結局、手は思いつかないけど、殺し屋の男の体は洗ったよ。ってか、本人が自分で洗うんだけど。
森を出て、道路を渡ったら砂浜。
しばらく泳いでいろって。
で、その間に身体を霧化して周囲を一気に確認したら、500mと離れていないところにコンビニがあった。
さすが三浦半島。
緑が多いところでも、一歩踏み出すと普通に市街地だ。土地勘がないと、そんなことも気が付けないんだね。トランクから出たところが森だったから、ずーっと森が続いていると思っていた。さすがに深夜で静かだったし。
ただ、次の問題。
僕、お金、そんなに持っていない。
今回のが初仕事だから、報酬みたいなものもまだ貰っていないし、財布には1000円札が一枚と、小銭がいくつかだけ。
パンツだけ買った。せめて、色は黒。
これからあの男に抱きつかなきゃだから、白は生々しすぎる。
それから、おねしょされて懲りたから、調理パンと飲み物も。生きている人間の世話は大変だよ。出すと入れるを常に考えておかないと、汚れたり倒れちゃったりするもんね。
それから、ちょっと悩んで、コピー機で1枚コピーした。白い紙が1枚だけ欲しいときは、これが一番いい方法だったんだよ。で、一番安いペンも1本。
これで、僕の財布のお金は尽きた。
悲しい。
お金がないと、もうなにもできない。今月のおこづかいの残りだったのに。
これ、ずっと続くんだろうか。
さすがに、殺し屋の男の面倒見るってのは、ペットを飼うようなわけには行かない。それになにより、僕に貢がせること自体は可能でも、職業が殺し屋の段階で働かせられないんだよ。
だって、「人を殺して稼いでこい」とは言えないだろ?
頭の中で愚痴るだけ愚痴ると、僕、殺し屋に服を着てもらった。
でも、上半身に着ていたもの、やっぱり臭くてだめ。
下半身は黒いパンツに靴下と靴。
なんか、顔も濃いし、昭和の悪役プロレスラー感が漂うね。前にY○u Tubeで見たレトロな動画の人みたいに、サーベルでも持たせようか。
で、再度潜入する前に、暗闇の中で手紙を書いた。
ヴァンパイアは、夜目が利くんだよ。
これまでのことと、なにを目的に再潜入しているか、できるだけ詳しく書いて、隠しておいたんだ。
もしも、お姉さまと瑠奈が追ってきてくれれば、狼の嗅覚で絶対に手紙に気がついてくれるはずからね。
でもって、殺し屋の男の処遇についても考えておいてくれって書いた。
引き続いて僕に面倒見ろなんて言われたくないから、丸投げしたんだ。
気がついたら、昭和のプロレスラー姿の殺し屋の男が、かたかたと震えていた。
唇も紫色だ。
ああ、全身濡れて、そのまんまほとんど裸でいたから冷えたんだね。
もう、人間ってめんどくさいっ。
ちょっと早いけどいいや、霧化して潜入しちゃおう。
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