ヴァンパイアの「好きです」
第1話 問い詰められるヴァンパイア
翌朝。
学校で教室に入ると、黒板の上の天井近くに、体育祭の表彰状が貼られていた。
なんだかんだ言って、うれしいもんだよね。
で。
僕はクラスの中で、ヒーロー扱いになっていた。みんな僕に話しかけてきて、話が一つ一つ盛り上がる。荒川でさえ、僕の顔色を窺っているみたいだ。
それはいいんだけれど……。
最後に
背の高さからして、見上げられているはずなのに、逆に感じるほどの威圧感だ。
おかしいぞ、体育教師の片山だってここまで怖くない。
「昼休み、体育館の裏に来なさい」
……ずいぶんと直接の命令口調だよね。
さすがは強気の国の国民だ。それもきっと、上級国民に違いない。
で、僕、なんか悪いことしたっけ?
たださ、それでもうれしかったんだ。
女子に呼び出されるなんて、僕の人生で初めてのことだからね。
やっぱり、ヴァンパイアになれた効果かなぁ。そんなことを思いもしたよ。
昼休み、僕はいそいそと体育館裏に行く。
僕はヴァンパイアなんだから、人間の女性との関係を深めてはいけないって思っている。それでも、あの瑠奈からの呼び出しだからね、うれしかったんだ。
僕に遅れること5分、瑠奈はやってきた。
そして、開口一番。
「あんた、この前、私がここで荒川に呼び出されていたときの話、聞いていたでしょ?」
すぱっと切り込んできたよ。
僕は否定できなかった。
いや、すればできたんだけど、そこにはさらに地雷か埋まっている気がして。
そもそもさ、なんでバレた? そこを追求するのも怖いんだよ。
「あ、うん、ごめん」
返事の切れ味が悪いのは、いろいろと逃げ道を考えざるを得なかったからだ。
「ヨシフミ、あんた、どういうつもりよ?」
瑠奈、喧嘩腰ってわけじゃない。
でも、道の真ん中にいるのは自分って自認しているような、無茶苦茶な強気というか自信を持って聞いてきている。
「どういうつもりって……?」
僕、たじたじしてしまう。
「荒川に呼び出されたのが気になって覗くくせに、デートとかの
どんな
「いや、ストーカーだなんて……」
「違うの?」
……いや、まぁ、そうかも知れないけどさ。
「そもそも、アンタ、あのときどこで聞いていたのよ?
この周囲に隠れるところなんてないじゃない?」
「それがわからなくて、なんで僕が聞いていたってわかるん?」
「質問に質問で返さないっ!」
なんだそれ?
なんで、そんなに偉そうなんだ?
おまけにだけど、慣れてるだろ、その強い言い方。
瑠奈の言うことの、すべてが答えようのないことばかりだ。
言い逃れしようにも、瑠奈の大きな目が僕の退却の道を塞いでいた。
答えるとすれば、僕がヴァンパイアになったことを白状するしかない。
「……事情があるんだ」
僕、時間を稼ぐ目的が見え見えの返事をしていた。
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