第27話 スカウトされたヴァンパイア


「その点に納得してもらえたら、次だ。

 真祖のヴァンパイアは、超絶的な体力と知力を誇り、身体を霧にもコウモリにも変えられる。

 人を洗脳する力を持ち、超回復力と不老不死の力を持つ。

 どう考えてもチートな存在だ。

 さらに、そこに好きな年齢の外見を持てるとなったら、最強にもほどがある。

 なので、ヨシフミが自らを王として世界に君臨するための、世界征服を企むことがないように監視を行う。

 それについても、いいね?」

「はい」

 なんか、しっかり言い渡された気がするよ。


 フリッツさんの言葉をお姉さまが通訳した以上、この2人の意思は揃っているわけだ。

 つまり、薔薇十字団として、僕を監視するという意思は確定しているってことになる。

 ヨーロッパで絶大な影響力を持った団だからね。きっと人脈なんかも凄いはずだ。敵に回すと大変な人たちだってのはわかるよ。


「お姉さまが僕の監視に当たるとも聞きましたが、C.R.C.のお墓を守る仕事もあるんでしたよね。

 どうするんですか?

 少なくとも僕、ドイツには行けません」

「私が監視責任を負うのよ」

 と、お姉さま。

 うん? 違いがわからないぞ。


「直接監視するのは瑠奈るいな

 そして、その監視結果を報告するのは私あて。

 私は定期的に日本に来て、きちんと監査するから」

「ああ、そうですか。

 でも……。

 僕が言うのも変ですが、その監視体制ってうまくいくんですか?

 僕と瑠奈が、揃ってお姉さまを騙そうとするかもしれませんよ?」

 そう言ったら、お姉さま、笑った。

 妖艶って表情だな。

 中学生の僕ですら、どきどきするよ。


「保険は2つ。

 今回、生気プネウマが練り合わされて作られた短剣を使用して、体内に仕掛けを作っている」

「はい、僕と笙香しょうかの体内のそれが保険になると言うんですか?」

「ええ、脅すつもりはないけれど、いつでもその体内の仕掛けを解除できる手段がこちらにはある。

 あくまで、事実として言っているのよ。

 そして、瑠奈と笙香は仲良しよね。

 さらに瑠奈は、小学生の女の子みたいな感情でも、ヨシフミに惹かれている。

 で、ヨシフミと自分のせいで笙香が亡くなることになったら、瑠奈は耐えられるかな? ということ。

 だからね、少なくとも50年以上の保険が掛かっているということになるのよ」

 ……なるほど。


「それにね、ヨシフミ。

 あんた、どうやってこれから生きていくつもり?

 私たち、世界の王になる野望を抱くかもしれないって、ヨシフミを監視する。

 でも、実際のところ、よほどのことがないとその実現は難しい。そのよほどのことをしでかす可能性はあるにせよ、高校大学と卒業したあとは、なんらかの職に就かないと生きていけないわよ。

 で、ヨシフミの真価は夜にこそ発揮されることを考えると、ヨシフミの人生は長くスポイルされることになる。

 そうなら、私たちの仲間になって、私たちの団の仕事を受けてもらった方がいいと思うのよ。

 報酬は、はずむわよ」

 ええっ、マジに就職の斡旋まで込みになるんかいっ!?

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る