第67話 言訳、疑問
「おはよう」
そこへ、父さんが起きてきた。
「あれ、どちらさまですか?」
「……それ、もう母さんがやった」
「なんだ、つまらん」
「僕が悪かったよ、ごめんなさい」
とりあえず謝る。
「この子ったら、寝ずのぶっ続け3日のアルバイトで10万稼いできたとか言っているのよ」
まぁ、母さんが父さんに言いつけるのは仕方ない。
「ん、金曜の夜から、ずっと肉体労働か?」
「……うん」
……答えをためらったのは、金曜夜はブリーフィングで座っていればよかったってことと、嘘を吐く相手として母さんより父さんの方がチョロくないからだ。
「そうか、そうか。
がんばったなぁ、ヨシフミ。
母さん、ちょっと朝食待っててくれ。ヨシフミと話してくる」
そう言って、父さん、僕を台所から居間に誘う。
一体全体、なにを言われるんだろうね?
「嘘ってのはだな、もっと上手く吐け」
いきなりそれかい、父さん。
「嘘だと思うの?」
「ああ、嘘だな。
俺も似たようなことをしたことがある。
発売日に徹夜で並んで買ったドラ○エを、それから二日二晩寝ず飲まず食わずでクリアしたことがあってだな。へろへろになったよ。
そのあと、水だけ飲んでぶっ倒れて、20時間寝通した。体重も結構減ってたなぁ。
で、ヨシフミ、お前は肉体労働だったな。60時間、人は活動し続けられるようにはできていない。
飯を食ったって無理だよ。
なんか言いたいことはあるか?」
言えることなんかないよ。
確かに父さんの言うとおりだからだ。
「実のところ、いくら稼いできた?」
「……1000万」
「……俺の年収より多いな。
今度、100万くらい寄越せ」
僕、心底呆れ返った。
「父さん、僕、今2つのことに驚いてる。
なんで僕の言った金額を信じたん?」
「だってヨシフミ、お前、真祖のヴァンパイアだろ?」
ああ、そっちを信じてるから、びっくりしなかったんだ……。
「人間社会の中じゃ、特殊技能にもほどがあるからな。そりゃ儲けられるだろうさ」
「……まぁね」
どうしてだろう?
僕がヴァンパイアだと信じてもらえているのに、なんか複雑な感情が胸の中にわだかまっている。
「もう一つ、本当に100万、欲しいの?」
「欲しくない奴がいるか?」
「そりゃそーだけど、そのとーりだけど」
僕、半分以上呆れちゃったよ。
「いや、そういう話じゃなくてさ、なんで父さんは息子の僕にしれっとお金を寄越せって言えるの?」
「ヨシフミがヴァンパイアになった日から、お前は俺の息子というより、ヴァンパイアだからだ。
もうお前は、人間とは別の生き物なんだ。孫を抱くという楽しみはもうないと思っているよ」
「改めて父さんにそう言われるとショックだな。
なんでそんなに、僕の言うことをそのまま信じてくれるん?」
さらに僕、父さんに聞いた。
「内緒だ」
それが父さんの答えだった。
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