第74話 貯金、救世


 秘密結社とかからしても、米軍は怖い存在なんだ……。そう発見したの、僕、顔に出たらしい。

「そりゃそうよ。

 世界最大の実力行使機関で、裏も表もたっぷりと予算がありますからね」

 お姉さま、僕の考えを読んで、そう説明してくれた。

 そして、さらに続けた。


「でもってね。

 私、古い暗殺組織の本部にも、日本支部壊滅の詳細を知りたければ2000万出せって、情報の売り込みをした。

 こっちは正直、どうでもよかったんだけど、出してきたわー。

 まぁ、暗殺教団も古い組織だけど、やっぱりウチの方が格は上だからね。だから、こちらの申し出を信じたみたい。

 だから、トータル、1億8000万円。

 今回、ちょろかったわー」

 ちょろかったって、億だぞ、単位が。

 ちょろくていいのかよっ。

 そんなにちょろかったんなら、僕にもう1000万円寄越せっ。って、なんに使っていいか、僕の頭の中に相当するものが浮かばないほどの額だけど。


「いやーね、ヨシフミ。

 そんな、私がみんなぶん取ってるみたいな顔で見ないでよ。

 あんたたちに1000万ずつ払ったし、日本国内でガイドをしてくれたあの運転手の彼の組織にも2000万払ったし。

 手元には1億4000万しか残らなかったのよ」

「……十分でしょう?」

 そもそも、『1億4000万しか』ってなんだよ?

 あ、瑠奈も同じこと考えたな。

 小さくため息ついてる。


「いやいや。

 まだまだ貯めないと。

 4桁億円になったら、世の中に介入して世界を救うんだから。

 まだまだ先は長いっ」

 握りこぶしを固めて、お姉さまはそう宣言する。

 うーむ、普通の寿命の人間じゃ、4桁億円を働いて貯めようって考えは浮かばないよね。さすがは2000年生きる獣だよ。


 で……。

「そんなこと、考えてたんですか?」

 僕、思わずツッコんじゃったよ。

「そんなことって、なによっ?

 私、C.R.C.の遺志を継いでいるんですからね。人知れず世の人々を救うためには、いくら予算があっても足らないのよ。そもそもね、あなたが今怖いと知った米軍の予算なんて、80兆円を超えてるんですからね!

 そこまではさすがに無理だから、4桁億円で辛抱してあげたのよっ!」

「わかった、わかりましたっ!」

 相変わらず、迫力でぐいぐい押して来るねぇ。


 C.R.C.に話が絡むと、ときどき我を忘れるよね、お姉さま。本当に好きだったんですねー。なにか手があったら、もう一度会わせてあげたいです。

 おまけに、今日は思いっきり力説してたみたいで、変装が剥げてきてます。ほら、耳が出ちゃってますよ、お姉さま。尻っぽが出る前に、自覚した方がいいですよ、と。

 どっかの民話の、間抜けなたぬきじゃないんですから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る