第5話 ヴァンパイアの告白しそびれ
「ねぇ、内川さん。
僕は、このまま行っても、高校生までだと思う。
そこから先、この外見のままで就職とかはきびしいと思うんだ。
この先生きていくのに、どうしたらいいと思う?」
って、逆に聞き返したんだ。
「……まぁ、いいわ。
もう、アンタには期待しない」
は?
なんの話?
瑠奈、ちょっと怒ってる?
そう思って、僕、気がついた。
話、最初の瑠奈の質問に戻ったんだ。
つまり……。「荒川に呼び出されたのが気になって覗くくせに、デートとかの
どんな
これを聞かれたんだよ。
僕は……、僕の気持ち、それを答えないといけなかったんだ。
「待って、瑠奈さん……」
僕、初めて瑠奈を名前で呼んだ。
「僕……、前から……」
なんでこんなに、口が思うように動かないんだろう。
とてもじゃないけど、「好きだ」なんてスムーズに口から出ない。きっと、アオハルの暴走にせよ、言えるヤツは物理として顎の筋肉がとても発達しているに違いない。
瑠奈は大きな目を瞠って、僕を見ている。
僕は、さらに固まってしまう。
もう一度、なんとか口を動かし、声を出そうとし……。
「なにしてんのー?
探したよー。
もしかして、もしかしなくてもヨシフミ、瑠奈に告白とか?」
って聞こえてきて、さらにけたたましい笑い声が被さる。
僕、「こ、このばかやろー」って思いもしたけど、助かったって気もしたよ。
やっぱり僕、意気地なしだ。
残念って気持ちより、ほっとしたって気持ちの方が大きい。
それに、ヴァンパイアとジェヴォーダンの獣がつきあうって、ちょっと濃すぎるかな、いろいろが。
で、瑠奈の目が一瞬ぎらんって光った気がしたけど、次の瞬間には何もなかったように笙香と一緒に笑っている。
ひょっとして、今の、殺気だったのかな!?
「なんであと2分が待てないよのよ、笙香のばかーっ!」
「えっ、やっぱり告白だったんだー♡
邪魔しちゃったよ、私」
「ヨシフミったら、頑張った実績でクドくから、ぐらってきちゃったよー」
お願いです。
そこは無かったことにしてください。
笙香にそんなこと言ったら、今日の放課後までにはクラス全員に、僕が告白したって知られちゃうっ!
「まぁ、いいかなーって。
足が速くて頭がいいんだから、あとの欠点には眼をつぶるよ、私」
ちょっと酷い言い草じゃないですか、瑠奈さん。
呆然と立ち尽くす僕に、瑠奈はすっと身を寄せると、僕だけに聞こえるようにこう言った。
「こうしとくと便利だよね。
私、人間に言い寄られても困るし。ヨシフミもでしょ。
そういうことで、納得してなさい。
イ・ク・ジ・ナ・シ」
……ヒドいよ、内川さん。
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