第46話 記憶、確認
「まずは、記録映像を確認しろ。
サメは撮れているか」
「はっ、今」
「次だ。
今回の敵の特殊性についてだ。
古くからの伝説である、暗殺教団の内輪もめで持ち去られた麻薬類の回収が今回の依頼だが……。
かつてから周知のとおり、暗殺教団ではハシーシュの使用がされているという伝説がある。だが、大麻には、今まで俺たちが見せられていたことを幻覚として見せるだけの効力はない。
また、加えて船にいる段階の私達に幻覚を見せるとしたら、これはもはや絶対に大麻ではない。
薬学の進歩から考えても、とうに彼らは大麻を超える強力な薬剤で組織を統制しているだろうし、それを我々な対して使用してきた可能性も否定できない。
いや、使用しないはずがない」
部下たちの反応は、未だ半信半疑だ。
「どうだ、写っていたか?」
そこで、そう確認を取る。
「部隊長、部隊長の読みどおりです。
確かに見たはずの、海面上の背びれすら写ってません」
ここで、部下たちの部隊長を見る眼差しは、改めて信頼を浮かべたものになった。
「次に、私を含めた4人が空を飛ぶ姿は撮れているか」
「確認します」
「これで依頼の不備がはっきりする。
さて、これほど強力な幻覚剤に対し、我々は対抗する装備を持っていない。
我々が今こうやっていることすらどこまで真実かわからない以上、なによりも避けねばならないのは自滅行為だ。
まずは、各自拳銃に弾を一発残し、弾倉は抜け。
抜いた弾倉は各自で持っていろ。
連射による同士討ちをこれで防ぐ。
ほとんど効果はないだろうが、各自で自覚を持ち、まず隣りにいるのは仲間と信じ、視覚ではなく道理で動け。
弾倉を再度拳銃に入れる前に、一度立ち止まって考えろ」
「Aye, Sir!!」
部下たちの回答が揃った。
「さらに次がある。
森の中からここまで、私たち4人をどうやって移動させたかだ。
私は胴体を挟まれ、投げ上げられたと認識している。
どうだ?」
どうだ? とは、同じく投げあげられた他の3人に対する問いだ。
「部隊長と同じです。
胴体を……、そうですね、優しく咥えられたように挟まれ、一気に投げ上げられました。
背後からだったのと、あまりに一気に地面から引き抜かれたので、敵を確認する余裕はまったくありませんでした」
「私もです。
そして、なんと言うんでしょうか、まるでラグビボールのように投げられました」
「どういう意味だ?」
「回転しないように投げられた気がします。
だから、空中で受け身をとって、怪我をしないように着地する余裕ができました。
これを錐揉み状態に投げられたら、首の骨が折れていたかもしれません」
部隊長は頷く。
「このような投擲手段を思いつく者はいるか?」
返ってきたのは沈黙だった。
「私も思いつかない。
いくら無理があっても、薬剤で筋力を増加させた兵士でも想定しないと、だ。
もしも、その画像が撮れていれば、依頼の『敵はヤク中の半病人の集まり』という情報は明確に誤りだということになる」
部隊長はそう言い切った。
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