第17話 検査されるヴァンパイア、そして……
僕、親を裏切った。
だから、僕、墓石の家に泊まりに行くって母さんに話し、お姉さまから電話をしてもらった。
仕方ないとは言え、嘘は嘘だよねぇ。
墓石を引っ張り出したのは、聡太とか小学校から同じ奴だと、親同士が知り合いで、ごまかしようがないからだ。
まぁ、母さん、泊りがけで一緒に勉強するっていうの信じてくれたよ。でもって、お礼に持っていけって果物の詰め合わせを用意してくれた。
良心が痛むなぁ。
笙香には
フリッツさんも、病院の手配を終わらせたし、国内では権威っていう先生の見学希望のリクエストも受け付けていた。
これで、準備は万端。
で……。
金曜日、僕は学校が終わるなり、事前検査でフリッツさんに同行されて病院に。
僕が笙香の臓器の一つだけをヴァンパイア化するわけだから、まずは僕を調べるんだって。
で、真祖のヴァンパイアに噛まれるとヴァンパイアになるっていうのは、ヴァンパイア・ウイルス見たいのがやっぱりあるらしい。
ただね、ソレ、ウイルスみたいに体外から来たものじゃないんだって。
人間の体内にもともとある、ジャンク遺伝子と呼ばれているものの中から、後天的にアクティブ化されるものらしい。
で、その後天的ってのが、僕が試行錯誤した方法論。
しかも、その遺伝子を活性化する因子を、ウイルスみたいに他の人に打ち込めるのが真祖のヴァンパイアなんだって。
って、僕、説明してくれているフリッツさんの言葉が、どういう意味なのかさっぱりわからない。
でもさ、なんとなく僕が感染源だって言われた気はしたよ。
でもって、僕のその因子、
で、僕の犬歯を綿棒で拭って、確認。
そのあと、そのまま僕の口内細菌が混じるとよくないって、メンブレン・フィルターで濾過して、長ーい針の注射器で背中側から打ち込むって。
話を聞いただけで、怖くでぞくぞくするよ。
さらにフリッツさんは、その打ち込まれる臓器だけを隔離する力場を作る術の準備もある。で、その力場を作る術については、それなりに話されたんだけど、さらにさらに僕にはわからない。
僕の検査と並行して、笙香の検査も進んだ。
そして……、フリッツさんの眉が思いっきり寄った。
「ルーナの嗅覚はさすがだった。
まだまだ小さいけど、あったよ」
「手術、できますか?
それとも……」
とルーナ、もとい瑠奈。
「手術はできない。
この画像を見ろ。
半分血管、半分組織にまたがっている。
まだ小さいが……、化学療法以外、手の施しようがないな。率直に言って、5年後の生存確率は20%を切るだろう。
新たな方法による治療を開始し、2週間経過後の状況によって化学療法を開始する。ただ、その必要はたぶんないと思いたい」
通訳してくれている、お姉さまの声までもが低い。
「じゃあ、すぐに、どこかに転移しないうちにすぐに……」
瑠奈の声で、再びフリッツさん、立ち上がった。
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