第24話 背を伸ばすぞ、ヴァンパイア
お姉さまが、「私はもう少し
「嬉しいです。
でも、お姉さまは、帰るときはアーカムじゃなくドイツに帰るんでしょう?」
「ええ、C.R.C.のお墓を守るのが、私の仕事だから」
「これからどれくらい、日本にいらっしゃるんでしょうか?」
「長くて2ヶ月くらいかな」
「そのあとは、なかなかお姉さまに会えなりますね。
それはとても、淋し……」
そこまで言ったところで、またもやいきなりの衝撃。
「ヨシフミ、淋しくなって残念ですねぇぇぇぇぇっ!」
「『淋しくなりますよね。瑠奈が』って続くんだったんだぞぉ!
瑠奈の肉親じゃないかっ!」
「言い訳するなっ!」
「事実だっ!」
「……小学生の愛情表現かよっ!?」
っていうお姉さまのツッコミが僕の耳に届いたよ。
ああ、そういうこと……。
他の愛情表現方法を知らないんだ、瑠奈。
でもって、600歳から見た260歳は、小学生なのかなー。
ようやく、
一発、まともにくらったほっぺたを押さえながら僕、ソファに戻る。
瑠奈、ストンピングを一発入れられたせいか、満足そうだ。
ちぇっ、今まで全部空振りさせていたのに。
そこで、今度はフリッツさんが口を開いた。
「さっきの検査で、ヨシフミくんの背を伸ばすための施術の基礎データも揃っている。
どうするかな?
いつでも施術できるよ」
「逆でしょう。
実験したいんでしょう?」
瑠奈に踏みつけられて、僕、被害者意識がマシマシになっているのを自覚しちゃうよ。だから、口から出てくる言葉も、こんなんになってしまう。
でも、フリッツさん、全然屈託なく僕に話してくる。
「そりゃ、実験したいね。
真祖のヴァンパイアの身体で実験ができることなんて、なかなかないからね。
でも、実際のところ、今のを見ていても思うけどさ、あと20cmくらいは背が伸びてもいいかもね。
そうしたら、ルーナにここまでいいようにはされないと思うよ」
「……はい、できるだけ早く、お願いします」
フリッツさんの、最後の一言が効いたよ。
僕の身体が成長できるのであれば、もう少しだけ大人になっておきたいな。
なぜか、お姉さまが微妙な顔していたけど、僕、フリッツさんと施術の日を
これで、クラスのみんなと変わらず、成長していけるかもしれない。
僕、とてもわくわくしたよ。
……そのとき。
笙香が身動ぎした。
さっきまでの、寝相の悪さじゃない。
いよいよ目を覚ますんだな。
全員の視線が、笙香に向く。
瑠奈が昨夜、笙香を眠らせるために、フリッツさんの処方で一服盛っている。でも、弱い薬だから、なんの自覚もなく目を覚ますはずではあるんだ。
無事に目が覚めてくれるといいんだけれどな。
笙香、ごそごそって感じで手を動かして、うつ伏せの体勢から腕を突っ張って上半身を起こす。
「おはようー。
……えっ、外人? 誰よっ?
……なんでヨシフミがいるん?
……なんで床で寝てんの、私?」
瑠奈が、思いっきりため息を吐いてみせた。
これから笙香に、嘘八百を並べるから、その導入なんだろうな。
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