第10話 ヴァンパイアの片思い


 瑠奈るいなは小さい。

 背だけでなく、手とかもとても小さくて可愛い。

 僕が小柄だからね。その僕から見ても小さいから、さらに可愛く見えるのかもしれない。

 でもね、毛量がやたらと多いらしくて、ツインテールに結んだ髪の束はやたらと太く、他の女子のポニーテール並だ。その奥に埋もれたたぬき顔は、左目に泣きぼくろがあって、守ってあげなくちゃって気になる。

 でも……。

 その態度は、髪の束よりもっと太い。


「ヨシフミくん、なんで寝てたん?」

 そもそも、そこを聞いてきますかね、瑠奈さん。

「夏休み中、いろいろと頑張ったんだ。で、疲れていて……。

 二学期の僕は、成績もちょっと違うかも」

「厨二病ですか?」

ずけずけっと聞くねぇ。


「いや、そんなことはないと思うんだけど……」

「片山先生に対抗しようなんて、よほど妄想が完璧なのかもしれないね。

 どんなゲームを頑張ったの?

 それとも、なんかあやしいラノベでも読んだ?」

「まだ僕、なにも言ってないっ!」

「だってさ、勉強もトレーニングもしていないのに強がるパターンあるじゃん」

 立て続けの攻撃に、さすがに傷ついたぞ、僕は。

 で、ついでに僕、信用ないなぁ。


「じゃあさ、勝負をしよう」

 くやしいから、そう提案。

 ヴァンパイアになる前の僕だったら、こんなこと言わなかった。

 でもね、対両親と違って、対テストには手加減は要らないよね。

「なになに?」

 これは、瑠奈といつも一緒にいる笙香しょうかだ。


「僕が夏休み後の実力テストで、学年3位以内になったら内川さん、どうする?」

「どうもしない」

 即答かよ。

 あ、内川さんは、瑠奈の姓だ。


「だって、ヨシフミくんが学年1位になってもならなくても、私にはなんの得もないじゃん。なのに、負けたら損だけはするのは嫌だよ」

 ああ、それはそうだな。

「じゃあ、なれなかったら、この間できたクレープ屋さんのクラッシュナッツのキャラメルソースがけを奢ろう」

「笙香の分も?」

「わかった」

 まぁ、女子がつるむのは想定のうちだ。


「じゃあ、学年3位以内になれたら……」

「おめでとうって言ってあげる」

 と、瑠奈。

「えっ、それだけ?」

 クレープに対して、一言で終わりかよ。

 そう思っていたら、笙香がとどめを刺してきた。

「瑠奈に、なに期待しているんだ、このドスケベっ!」

 ……僕、即死。ヴァンパイアなのに。


「成績が上がったら、それはヨシフミくんのものだよ。

 それが、そもそものリターンじゃん」

 と、瑠奈がとりなすように言う。

 わかったよ。

 しゃーない、がんばるよ。


「でもね、体育祭も近いじゃない。

 そこでも活躍できたら、瑠奈、デートしてあげたら」

 笙香、調子に乗ったな。

「よし、じゃあ、体育祭のリレーで、うちの三組のメンツだと1位は無理だよね。陸上部は一組が多いからね。

 それをなんとかするっ!」

「……やっぱりヨシフミ、瑠奈とデートしたいんだ」

 えっ!?

 そうくる!?



 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


瑠奈のイメージのFAをいただきました。


久水蓮花 @ 趣味小説書き(@kumizurenka22)様から。

感謝です!!


https://twitter.com/RINKAISITATAR/status/1371581885327970305

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