第10話 ヴァンパイアに持ちかけられた取引
ただ、僕の疑問はそこまでになった。
だって、朝のホームルームで、先生が来ちゃったから。
いつの間にか、
授業を半分は真面目に聞きながらも、残りの半分で僕は考える。
僕の背を伸ばしたいという希望が、そのまま僕の存在を最強にも、だからこそ誰かの制御下に置かれることにも繋がるだなんて、だ。
今回、僕は、この望みを叶えることができる。
いや、叶えない自由はない。
なぜなら、笙香の生命が賭っているからだ。
別に僕は、笙香に弱みを握られてはいないし、笙香に惚れ込んでいるわけでもない。
でもね、見捨てることなんてできないよ。
ただ、僕があまりに強大になりすぎるから、という理由とはいえ、いつでも僕を殺せるスイッチみたいなものを握られるのもいい気はしないよ。永遠に、その人の下僕じゃないか。
代わりに、なにか方法はないかなぁ。
じりじりしながら、僕、放課後を待った。
だってさ、朝の短い時間ならともかく、昼休みとかは
とてもじゃないけど、込み入った話なんかできない。
ようやく……。
放課後が来た。
で、瑠奈に声をかけようとしたら、タッチの差で笙香に負けた。
でも、なんとか割り込みに成功。
結局、3人で帰ることに……。
ただ、話題には気をつけないとだよね。
って、思っている先から……。
「笙香、近頃、身体がだるかったり、食欲が落ちたりしてない?」
ずいぶんとダイレクトな質問だな、瑠奈さんよー。
「うーん……。
あるあるっ。
ほら、私、深窓のお嬢様だからあまり食べないし、内気消極的人見知りだし、それに……」
ホント、これだけ聞いていると、殺しても殺しても殺しても死にそうにないな笙香は……。
それを黙殺して、瑠奈が続ける。
「あのね、母さんが昨日看取った患者が、中学生で悪性腫瘍だったんだって。
話を聞いていたら、怖くて震えてきちゃった」
うん、作り話にしても、不自然さはないな。
ま、実際、これで笙香が検査でも受けてくれればめっけもんだ。
「そういう子もいるよね。
瑠奈、大丈夫?
気にしちゃダメよっ。
中学生でそんな病気にかかる確率なんて本当に低いんだから、瑠奈、そんなの気にしてノイローゼみたいになったらバカみたいだから。
よっぽど不安だったら、きちんと検査受けたっていいし、気にしちゃダメだよっ」
あれっ?
なんでいつの間にか、瑠奈のほうが検査を勧められているんだろ?
横目で窺ったら、瑠奈、深々とため息吐いてた。
こんな場合じゃなきゃ、相当に可笑しいはずだよね。
とにかく、笙香のポジティブ・オポチュニック・バリヤーが堅いことはよくわかった。
だめだ、こりゃ。
検査を受けさせたいなら、他の手を採らないとだなー。
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