第5話 ヴァンパイア、殺しの予告を受ける


 6時間目終了後、国語の先生が教室からいなくなるなり本郷が立ち上がった。

「みんな、10分くれ」

「ひっこめ、聡太!」

「そうだっ! すっこんでろ聡太!」

「オマエラ、話を聞けよっ!」

 ざわざわざわざわ。


「今度の中間、一組に負けなければ、体育祭のリレーに続いて連勝だ、

 学級委員だとか抜きにしても、俺は勝ちたい。

 自分には関係ないって考えている、クールな奴がいるのはわかる。

 けど、結果として自分の成績があがるならば、それはそれでいいだろ!?」

 ざわざわ。


 でも、なんとなく肯定的な雰囲気になった。

 さすがは、人柄だけで学級委員にのし上がった男だ。「クラスのために」なんて小綺麗なこと言わないあたり、話の持って行き方が上手い。


笙香しょうか、頼みがある。

 テストの山を張ってくれ。各教科5問ずつでいいから。

 たぶん、笙香の読みが一番正しい。

 次、ヨシフミと荒川と瑠奈るいな

 荒川は男子を、瑠奈は女子を、ヨシフミはクラス全体について、その山の問題だけでいい。各教科5問について、問題を用意して、クラス全員を鍛えてくれ。

 これで、各教科5点ずつ平均点が上がってみろ、5教科だけで25点も数字が上がる。

 とんでもないことになるぞ」

 みんなの反応、しーん。


 たぶん、信じられないんだ。

 そんな上手いこと行くかなって。


 で、僕、口を出す。

「なるほどー。

 たださ、安全係数、取り過ぎだと思うよ、聡太。

 笙香の張った山が、各教科5問のうち、2問しか当たらない計算だろ。

 で、みんなが、その2問のうち、1問しかできない計算だ。

 1問で5点なんだろ。

 なあ、みんな。

 まずだけど、笙香の張った山って、5問のうち3問くらいは当たると思わないか?

 だって、器用さと要領の良さだけで世の中渡っている、あの笙香だぞ?」

「ヨシフミっ!!

 あんたねっ!

 私のことどう思ってい……」

 笙香の抗議の声。


 僕、それを無視して続ける。

「しかもだ。

 山が当たって、なお半分しかできないって、みんなそんなに間違えるか?

 聡太にみんな、舐められてないか?

 笙香の当てた山の3問のうち、2問ができてみろ、10点だぞ!

 5教科で50点だぞ」

 おおーって感じのため息が、みんなから漏れた。

 ただ、まだ温度感は低い。


「よっぽとよっぽど失敗しても、聡太の読みのとおりだから、誰も損しない。

 僕は、聡太の考えに乗る。

 笙香は?」

「ヨシフミをあとで殺せるのならば、あと、女子5人の協力が得られるなら、やってもいい」

「どういうこと?」

「ヨシフミ、ぶっ殺すっ!」

 ったく、これだよ。

 クラス中で笑いが湧いた。


「そっちじゃねー。

 女子5人の協力の方だ」

「あと2日で、試験前ってことで職員室に入れなくなるよね。

 それ以前に、私を入れた女子6人を3班にして、各先生に質問攻めを掛ける。

 中間テストは先生が作る問題で、業者テストじゃない。だから、各先生のクセとか好みの問題が出る。

 それを探るんだよ。

 先生ってのは、無意識に自分が出す問題のところは説明がクドくなるんだ」

 これには、クラス中から感嘆の声が湧いた。

 なんとなくそっぽを向いていたヤツまでが、視線を笙香に向けだす。

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