僕はヴァンパイアになるっ! - なり時を間違うと、人生設計のハードルがあがるものなのです。ヴァンパイアって-
林海
第一部 中学生編 僕はヴァンパイアになった!
第1話 僕はヴァンパイアになるっ!
ヴァンパイア、すなわち吸血鬼。
これほど魅力に満ちた存在はあるだろうか。
だって、美しく不老不死で、基本、死なないんだぜ。
で、だ。
死なない以上、できるだけ若いうちにヴァンパイアになっていた方がいい。
よぼよぼになってからの不老不死じゃ、あまりに淋しすぎる。
だからね、中2の夏、僕は頑張った。
それこそ頑張った。
小学校の時から貯めていた、おこづかいやお年玉も使い切った。
クラスで前から二番目の身長で、イジってきていた奴らも見返せるからね。
夏休みの最初の三週間は、文字どおり寝ずにネットに張り付いて今まで集めた情報の洗い直しをしたし、次の二週間は行動してあちこちに出かけた。
その結果……。
僕は、望みどおりヴァンパイアになることができた。
そう、それも真祖のヴァンパイアになれたんだよ。
夏休みはあと数日しかないけど、後悔なんて毛頭ない。
これで、僕は不老不死。
食事も生き血を吸わないまでも、真紅の薔薇の花から生気を吸えばいいだけだし、もともと夜型の引きこもり人間だし、なにも困ることはなくなった。
夜の
コウモリに変身すれば、帰りの電車代が節約できるからね。
って、飛び立ってから気がついたけど、青春18きっぷで動いていたから、使わない方がもったいなかったかも。
一つ心配だったのは、ヴァンパイアの川を渡れないという弱点について、電車に乗っていて強引に通過させられたらどうなってしまうのかということだった。
本当か嘘かもわからない弱点だし、まさかいきなり死ぬことはないだろうけれど、自分自身で実験したくないし、救急車とかの騒ぎになったら、それはそれでとても困る。
救急車の中で、「患者は14歳の少年、川を渡った結果、失神した模様」なんてマヌケな報告無線、聞かされるのは嫌だからね。
コウモリになって飛んで帰るのであれば、川にぶつかっても、海に出て迂回するか、山に登って迂回すればいいだけだ。
それに、まさか道路側溝も、用水路も、みんなみんな渡れないってこたないだろ。小さい川ならきっと大丈夫。
僕は飛び始めて、すぐに気がついた。
これはいい、これはいいぞ。
僕の身体は、無尽蔵の力を持っている。「迂回なんて面倒くさい」なんて、心のどこかで思っていたの、まったく意味がないほどの体力だ。
無限の力ってのは、どれほどでも浪費できるってことなんだな。実感したよ。
明け方、うちに帰り着き、窓から自分の部屋に入って人間の姿に戻る。
ああ、やっぱり当然、素っ裸、か。
そりゃそうだ。
なんか、がっかりだけど、スマホは持っていかなかったし、結果として置いてきてしまったのは服と靴だけ。布の財布には帰りの青春18きっぷと小銭しか残っていなかった。まぁ、仕方がないであきらめもつく範囲。
ま、世界の王たる真祖のヴァンパイアの僕が、そんなものを惜しがっていても仕方ない。
自分の布団に潜り込む。
僕は決心していた。
今度、棺桶を買おう。
次の瞬間、自分が和風の棺桶に寝る姿を想像して、すごく嫌な気分になった。あの、顔が扉で見えるやつだ。ヴァンパイアのベッドとしては論外だよね、アレ。
やっぱり、西洋風の棺桶をなんとしても探さねば、だよ。
なにはともあれ、2日前にこの家を出たときと、今帰ったときで、僕は別の存在なんだ。
そう、僕は無敵。
最高だ!
誰ももう、僕には敵わない。
この世界で、王になることすら可能なんだ。
− − − − − − − − −
「ヨシフミ、起きなさい。
ヨシフミ!!」
うーん、昼間は眠い。
これ、やっぱりヴァンパイアになったからだろうね。
ようやく目を開けるけど、太陽の光が眩しすぎて拷問みたいだ。
部屋の中に直接に日は差していないのに、それでもここまで眩しいと感じるものなのかな。
そして、その光の中で仁王立ちした母さんがいた。
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挿絵を戴きました。
久水蓮花 @ 趣味小説書き(@kumizurenka22)様からです。
感謝なのです!!
https://twitter.com/RINKAISITATAR/status/1368914991055736842
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