第15話 ヴァンパイアに突きつけられた条件


 よし、言うぞ。

 正直言って、「本当に言っちゃってもいいのか」って気もちょっとはするけど、ぐだぐだしていてもしょうがない。

 腹は決めたんだ、僕。



瑠奈るいなさん。

 僕、まだまだ瑠奈さんに比べて、子どもだと思います。

 回り道もしました。

 でも、瑠奈さん、僕とつきあってください。

 大切にします。

 お願いしますっ」

 もう、僕、必死。

 だって、瑠奈の反応リアクションは、僕の予想の上にあることが多いからね。

 それを封じるために、告白の力押し。

「うん」と言ってくれるまで、言い続けたっていいって思っている。


 もう、なんで好きなのかだとか、どこが好きなのかとか、言おうと思って考えていたこと、頭ん中から全部吹っ飛んじゃった。

 でも、いいじゃん、中身は260歳でも可愛いし、好きなんだから。



 瑠奈、ため息を吐きかけて、それを飲み込むようにして言う。

「ヨシフミ。

 付き合ってもいい。

 3つ、条件を飲んでくれたら……」

「なんでしょうか?」

「私が、別れたいと言ったときは、理由を聞かないこと。

 次が、私のあとを追いかけてこないこと。

 最後に、その際には、私とつきあっていたときのことは忘れること。

 それを約束してくれるのであれば」


 うーん、1年後から始まって、10年後、100年後とか、果ては1000年後とかを含んだ条件なんだろうね。

 でもさ、コレ、納得できる?

 僕は納得できない。


 こんな名言がある。

「戦いの場に出る前に、負ける事考えるバカいるかよ!!」

 って。

 うん、おんなじだよ。

 最初に別れるときのことを考えて、それから付き合うバカがいるかよっ!?


「やだ。

 瑠奈さん、別れるって言われたら、当然だけど後を追うよ。絶対忘れないっ!

 いろんな事情はわかるけど、でも、今の僕は……」

「じゃ、ヨシフミ、この話、なしということで」

 なんだ、その平坦でさらっとした言い方はっ!?


「そんなの嫌だっ!」

「ヨシフミ、アンタね、無理を言うんじゃ……」

「嫌だっ!!」

「ヨシフミ!

 アンタ、いいかげんにしなさいよっ!!」

 魔獣が吠えた。


 でも、負けるもんか。僕だって、真祖のヴァンパイアだぞっ。

「嫌だっ!

 瑠奈さんの条件を守ったら、別れる前にそれ止めようっていう努力すらできないじゃないかっ!

 そんな、そんな、冷静な感じにカッコつけなくたっていいじゃんっ。

 大切にするから、付き合ってよっ!」

 なんか、僕、相当強い口調になっていた。


 ……寿命の長い僕たちですら、永遠という言葉は当てはまらない。

 いつかは別れの時が来る。

 そんなの、わかってる。

 それでもさ。告白したそのときに、「将来、別れるときはきれいに別れましょうね」って言われて、「はい」なんて言えるかよ。

 絶対、おかしいよっ。


 瑠奈、ふぅぅぅって、それはそれは大きなため息を吐いた。

 そして……。

「どうしようか?」

 って、言ったんだ。




 瑠奈るいなの「どうしようか?」って言葉、僕を通りすぎて行く。

 そのワケは、すぐにわかった。


 お菓子会ってば、もう終わりになったんかよ?

 ぱちぱちって拍手をしながら、笙香しょうかが現れた。

「ヨシフミ、よく言った。

 公園の外まで聞こえてたぞ。

 よかったなぁ、瑠奈。

 偉いぞぅ、ヨシフミ」

 くっ、全部聞かれちゃったのか?


 ひどいな。

 ひどすぎるな。

 でもって、なんでこっちもそんなに偉そうなんだよっ?

 アンタ、瑠奈の保護者かっ?



 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 


笙香が現れたっ。


新作の挿し絵は、花月夜れん@(旧・久水蓮花)@kumizurenka22 様から。

感謝っ!!


https://twitter.com/RINKAISITATAR/status/1393328835744002052

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