第26話 現状、退去
全員を縛り上げて、制圧完了。
一つの部屋に、死屍累々って感じで転がっている。
縛られていないのは2人だけ。
僕の赤い目で洗脳完了済みの、殺し屋の男と漬物石に転職して3人の男を逃さないように抑えつけていてくれた男。殺し屋の男は残念ながら、他の連中の服を奪って着ている。ぱんつ一丁の方が面白かったのに。
で、お姉様と瑠奈、人間の姿に戻らずにいる。
でもって、お姉様と瑠奈、表向き転職男の飼い犬みたいな演技しているから、いっそうこの男が用意周到に前々から裏切ってきたように見えてる。
ちょっと可哀想なのは、この人、全員から無茶苦茶に睨まれている。
でも、僕の洗脳下だから、そんなに心は傷ついていないよね。……いないといいなあ。ごめんね。
でも、ま、こちらが見張りの気を抜くと殺されちゃいそうだから、それだけは気をつけてあげないと。
で、お姉様と瑠奈が人間の姿に戻らないのは、ここで多数の人間に顔を晒したくないから。どーせなら、ジェヴォーダンの獣の姿の方がマシだってさ。
で、僕も霧から実体化してない。
理由はおんなじ。
僕だって、これから先も平和に暮らしたいからね。
ま、正直言って、身元調査はされているんだと思うよ。
だとしても、確証を与える必要はないもんね。
で、今考えなきゃいけないのは、こいつら、どうするよって話。
それから、武器庫の大量の銃火器と、(おそらくは)麻薬の山。少なくとも、ハシーシュは本物だろうしねぇ。どれもキロ単位であるぞ、これ。
でもって、警察に届けるにしたって、信用できる筋じゃなきゃ、僕たちの方が濡れ衣を着せられちゃうかも。そもそも敵方の方が食い込んでいるし。
それに、僕たち人間じゃない。
だから、正体を明かしたくないっていう弱みがある。そこを突かれたら、あれよあれよという間に指名手配されていたりしたらそれはショックだ。
あとは、縛り上げてある人員もろとも、敵組織との取引に使えるとは思うけど……。
麻薬って、結局は誰かの身体の中に入るんだよね。
それに目をつぶって、悪いことに使うのがわかっている相手に返したくはないよ。
闇市場に流れなくても、ここで大量の暗殺者を作るための薬として使われて、何年か暗殺の仕事をしたら殺される側に回るって、それは絶対にオカシイ。
断言できるよ、僕。それはオカシイって。
だから、家ごと燃やさなくても、庭に出して燃やせばいいって意見を出してみた。
そしたら、お姉さまに、即却下を食らったよ。
「まぁ、見てなさい」って、そう言われてもお姉さまがなにを考えているかわからないから、なにも言いようがない。
でも、お姉さま、どこかに電話していた。
そして、夜の暗さがうっすらと消えかかってきたときに、2tトラックがやってきた。
運転しているのは、昨夜廃病院で別れた人。
早速再会とは、この人も地味にご活躍だなぁ。
で、お姉さまの指示で、殺し屋の男に敵全員、全銃火器と麻薬、コンピュータまでの一切合財を積み込んだ。
そして、お姉さまが置き手紙をひとつ。
なにを考えているんだろうねぇ。
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