第214話 さびしんぼうのお兄様達

ウルラートゥスの小屋から食堂に向けて歩きながら、マリアローゼは傍らを歩くルーナを見た。


「今日はオリーヴェには会えるのかしら?」


「いいえ、グランスでしたらお会いになる事は出来ますが、オリーヴェはまだ教育中ですし、

先に領地へ向かうので時間は取れないかと存じます。皆、お嬢様と共に領地へ参りたいのです」


事前に調べたのだろう、マリアローゼの希望を汲んだ質問の答えを、ルーナはすらすらと答えた。

じっと見ていると、ルーナは控えめにはにかんだ。


優秀なのに、可愛いですわ!


「分かりました。お勉強の邪魔をする訳にはいきませんものね。朝食の後にグランスを部屋に呼んでもらえる?

アニスさんの事、お伝えせねばなりませんわ」


「かしこまりました。その様にお手配いたします」


色々やる事が多くて、会いたい人も多くて、マリアローゼは頭がこんがらがりそうだった。


まずは大事な事から順番に片付けていかなくては。


食堂での久しぶりの家族団らんの食事を終えて、食後のお茶を飲んでいると、ジェラルドがしみじみと言った。


「ここで、愛する妻や娘と共に食べる食事は美味しいものだな」

「誠にその通りです、兄上」


うんうんと頷くジェレイドに、ミルリーリウムがくすくすと笑う。


「今日は午後から王城で陛下への拝謁の後、ローゼとシルヴァインは私の執務室に寄るように。

君達の商会の事で、会頭を務めるマローヴァが面会を求めている」


マリアローゼは不思議そうにこてん、と首を傾げた。


「何故、我が家ではなく王城ですの?」

「一刻も早く私と君達まとめて一緒に目通りしたいのと、王城で片付ける用事があるらしい」

「そういう事でしたら異存はございませんわ」


こくん、とマリアローゼが頷く傍ら、ジェレイドが「相変わらずだな」と呟いてから、ジェラルドに問いかけた。


「兄上、僕も同席しても宜しいですか?」

「ああ、マローヴァはお前も来るだろうと言っていたぞ。さて、私は先に登城する。また後でな」


ジェラルドは席を立つと、颯爽と食堂から出て行き、侍従のランバートもそれに付き従った。

母のミルリーリウムも滞っていた社交の為に、出かけなければと早々に席を立ち、後には子供達が残された。


というか、両側から双子に抱きしめられている。


「あの……お兄様達?何をなさっておいでなの?」


ミカエルが頭にすりすりと頬を擦り付けながら答える。


「ずっと離れていたから寂しかったんだよ、ローゼ」

「ローゼ成分を補給してるんだよ、ローゼ」


反対側からはジブリールが答える。


わたくし成分とは一体、何なのだろうか。

でも、可愛い。

これではまるで、弟のよう。


とマリアローゼはくすくす笑った。


「さびしんぼうさんなのですね、お兄様達」


「「そうだよ」」


と息ぴったりに両側から言われて、マリアローゼはまたくすくすと笑う。

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