第288話 増えた従魔
非常にめんどくさいことになってしまった。
マリアローゼはこてん、とノアークの胸に頭を預けて、先程の出来事を考察する。
うっかりと、動物相手だと思い込んで、テイムしてみようと試したのだが、本当に動物だったのかは分からない。
少なくとも、変化はしてしまったのだし、従魔師か鑑定士が雛を見れば、確実な事は分かるだろう。
動物を変化させてしまったのなら、かなり大変な出来事だが、従魔、乃至従魔の血を引く無害な生物の変化であれば今まで通りと大差はない。
大差はない、と思いたい。
でもこの事はウルラートゥスと、父のジェラルドしか知らない事なのだ。
もしかしたら、母のミルリーリウムと叔父のジェレイドも事情は知っているかもしれないが、
マリアローゼにはまだ分からない。
不安そうな顔をしていたのか、抱きしめる腕に僅かに力がこもる。
「………大丈夫だ、俺が付いている」
何の問題かとか、どういう事かとか、事情を聞かなくても力づけてくれるノアークに、マリアローゼは微笑んだ。
「有難う存じます。ノアークお兄様の言葉だけで、とても勇気が湧きますわ」
嬉しさに、マリアローゼは改めてノアークの胸に顔を寄せて、すりすりと頬ずりをして甘えると、
途端にノアークの動きがぎくしゃくと固まった。
見上げると、顔が赤い。
「………う、いや、何でも、ない」
くすぐったかったのかしら?
とマリアローゼは首をこてん、と傾げてから、大人しく腕の中に収まった。
思考すら逃避していたマリアローゼは、大人しくしたまま考え始めた。
先程助けた、家畜の鶏と思い込んでいた生き物は、変化した姿を見ればコカトリスという魔獣だ。
だが、犬と戦って瀕死になる類の魔獣では決してない。
以前捕獲され研究されていたが、魔素の減少で無害化して動物に近くなった、魔獣の子孫である可能性が高い。
もしそうなら、今も能力の多くは使えないかもしれないのでその方がいいのだが、
成長と共に変化する可能性もある。
コカトリスならば、特定の草を食べて生きるはずなのだが、今まで生き長らえてきた上に毒などのスキルを使えないのならば、雑食性になったのかもしれない。
どちらにしても、今夜は家族会議だ…
ノアークに抱っこをされて、枝に髪を取られてヨレヨレになって帽子をしていないマリアローゼを見て、ミルリーリウムがまず声をあげた。
「まあ、ローゼ、どうしました?」
「ノアーク、説明しろ」
慌てて駆け寄ってきた、厳しい顔のシルヴァインが命じる。
詰め寄る二人を前に、ノアークは、至極簡潔に答えた。
「……ロサが増えた」
とても誤解を与える文脈なのだが、ミルリーリウムはマリアローゼのしゅん、とした顔を見て頷いた。
「怪我はないのですね?」
「はい、お母様。頂いたナイフが役に立ちました。でもロサが戦ってくれたのでわたくしは無傷です」
「ロサに感謝しなくてはね」
優しく語り掛けつつ、大人しくしているマリアローゼの額に、ミルリーリウムが優しく口付けた。
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