第276話 ご褒美のキス
「考えて差し上げると申しました!していいなんて一言も…」
だが、約束を破ってしまったら効力がなくなってしまうのは、確実だ。
昔コンビニで立ち読みした本に書いてあった、子育ての本に書いてあったのだ。
「子供との約束は、きちんと守る事」
泣いて困らせる子供に「次来た時買ってあげるから」と約束したのなら、きちんと次に行った時に買ってあげなくてはいけない。
そうしないと、子供は約束が守られないものだと、段々言う事を聞かなくなってしまうのだ。
「……はい。約束ですものね。受けてたちますわ!!!」
マリアローゼは、果し合いをするのかと言わんばかりの勢いで言うと、そっと目を閉じた。
勢いで言ったものの、自分がするのは良くても、されるのは恥ずかしいのである。
ふふっと両側で笑う吐息が聞こえて、次の瞬間頬に唇が寄せられる。
「「ちゅっ」」
わざとらしいリップ音を立てて、双子は頬にキスを落とすと、更にマリアローゼを抱きしめて、頭に頬ずりをしてくる。
「ローゼ可愛い」
「可愛い、可愛い、ローゼ」
「も、もう、いい加減になさってくださいまし!髪の毛が乱れてしまいますわ」
真っ赤になりながら抗議するも、全然効力はない。
「いいなぁ。俺もしたい」
不穏な声が聞こえてきた。
シルヴァインが正面で頬杖をしながら、色気たっぷりの目でこちらを見ている。
「今日、マリアローゼを庇ってあげたよね?」
ええ、そうでしたわね。
マリアローゼは言い返せないまま、ジト目で見ている。
と、斜向かいにいるキースも、咳払いをして付け足してきた。
「僕も、一緒に庇いましたよね」
確かに、シルヴァインの魔法で全部液体も器も防がれたが、同時にキースも防御魔法を展開していたのだ。
マリアローゼはしっかりと、認識していた。
「エ、エスコートを頑張った……」
今度は隣にいるノアークまで言い出してしまった。
「もう…もう分かりましたから!頑張っておられましたわ、お兄様達は!」
ほっぺをぷくっと膨らませると、マリアローゼは認める。
楽しそうに双子が笑って、マリアローゼを解放すると、まずノアークの方へマリアローゼは身体を向けた。
それだけでノアークは頬を朱に染めて、萎縮してしまう。
「どうぞ、お兄様」
どうしてもノアークには冷たくなれないマリアローゼが、少しだけ微笑むと、ノアークは意を決したように
目をぎゅっと瞑って鼻先にちょん、とキスを落とした。
「ふふっ、くすぐったいですわ」
「………うぅ」
さっきので勇気を使い果たしたのか、ノアークは目も合わせられず、手で顔を覆って俯いてしまう。
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